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otto

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梶田は高飛びの準備が整い乃木に連絡するも繋がらず、時間が経っても乃木からも連絡がなく、梶田は何があったのか分からずイライラする。


まさか、失敗か?
そうだとしたら、さっさと逃げるしかないか。
くそッ!
ガキの屍を見ずに終わるとは。


梶田はそう思いながら、もう飛行機の時間も迫っているので、結果はどうであれ空港に向かうことにした。
どうせ事務所にはもう金目の物はなく、当座の金を持ち運ぶだけだった。
外の様子を窺うように窓の外に目を向ける。
人通りの少ないビルの入り口付近に複数の人影があり、梶田は警察かとギクリとする。
よくよく見ると、その人影が男で、見覚えのある顔もあり梶田は青ざめた。


あれは、真幸の舎弟じゃねーか?
どうしてここに?
なんでバレたんだ?
愚嵐怒の仕業に仕向けたはずだ!
なんでここにいる?


失敗したことを知った梶田は狼狽する。そして逃げられない恐怖に怯えた。
真幸は車から降りると、ゆっくりとした足取りで梶田の事務所に向かって階段を上る。

「頭。ここですね」

先に行っていた舎弟が、事務所のドアの前で立っていた。

「中はどんな感じだ?」

「誰も出入りが無いです。恐らく梶田だけだと」

真幸はそれを聞くと、事務所のドアを叩いた。

「おーい、梶田さんよー。中にいるんだろー?出てこいよー」

わざと大声で真幸は叫ぶ。
ドアを叩く音も激しくなる。
梶田は息を顰め、どうすればいいか考えたが、追い詰められている限り打開策などない。
裏口からもどうせ逃げられないのは分かっている。

「鍵、壊せ。バール持って来てんだろう」

真幸が指示を出すと、別の舎弟がバールを持って上がって来た。
梶田は事務所の中に籠城しながら、ドアがぶち開けられる恐怖に怯える。
ガンガンと音が響き、ドアが開く音が響いて来た。

「手こずらせんじゃねーよ、おっさん」

真幸が梶田の前に現れた。
もちろん真幸の周りには数人の舎弟が群がっているので、梶田が真幸に手出しができないのは一目瞭然だった。

「俺の叔父サンに何してくれちゃってんのよ。ん?」

真幸は梶田のデスクに腰を掛けて梶田を睨む。

「なんの事だ。突然やってきて、寝言抜かしてんじゃねーよ!」

梶田が言い返すと舎弟達が睨む。

「寝言、ねぇ。乃木ってあんたの舎弟がひとりで好き勝手やってるって事?」

全てバレていて、梶田はもう言葉が出ない。

「あー、そう言う無駄な会話どうでも良いんだった。どうせ真春はうちの頼もしい用心棒に救出されてるだろうしね。あとは、あんたにどう落とし前つけてもらうかだね」

真幸のスマホが鳴って真幸はスマホを手に取る。
相手は伊織だった。

『とりあえず真春は助けた。工は重傷を負ったもんで今頃どこかの病院に運ばれてるだろう。真春を拉致った奴らは乃木と共に始末しておいた』

「へぇ。工が重傷ね。んじゃ、その分もきっちりお礼しないとなぁ、おっさん!」

伊織の電話を聞きながら真幸は梶田を睨む。

『梶田のところか?』

「ああ。逃げる前に押さえられたわ。こっちの仕事が終わったらまた連絡する」

真幸は通話を切って梶田を見る。

「あんたの目論見は失敗したようだよ。変に欲かかないで、高飛びするんだったらさっさと飛んじゃえば良かったのにねー」

真幸は煙草を吸い始めた。

「…………うるせんだよ、ガキが。テメェのジジィに煮湯飲ませられたまま逃げてたまるか」

悔しそうに梶田は言う。

「散々美味しい思いしておきながら、いざとなれば切り捨てやがって!何が任侠だ!」

梶田の言葉に真幸は笑う。

「そう言う男だろ?飯塚鷹雄は。甘いんだよ。そんなんで白竜の組の代紋背負ってたんか?ばっかじゃねーの!みんなヤバい仕事してシノギ稼いでんだよ。ココが有るか無いかの差だ」

真幸は顳顬に人差し指をトントンと当てて言う。

「あんたは失敗したんだよ。あん時もな。どうあれ裏切られるなんざ、一番おかしちゃならねぇ失敗なんだよ!」

真幸の言葉に梶田は何も言い返せない。
欺き欺かれ、そんな世界だと知っていながら、自分は人を見極める力がなかった。

「五島や伊丹はなんで可愛がられるんだ!あいつらだって、ただの飯塚のコマじゃねーか!」

梶田が吠えると真幸は笑う。

「あの人らは、飯塚鷹雄を絶対裏切らねーんだわ。あんた、本当は田嶋や木島が久米と繋がってたの知ってたんだろ?直接手を下さなくても、五島のオジキ弾こうとしてたのもそれがあったからだろ?」

真幸の言葉に梶田は何も言い返せなかった。
真幸は舎弟からバールを受け取ると、それで梶田を打ちのめした。
梶田は無抵抗で真幸を見る目は哀れだった。

「テメェに可愛がられたうちのモンのお礼だ」

最後の一撃で、グッタリする梶田を見つめながらバールを床に捨てた。

「後始末は任せた」

真幸が命じると、舎弟達は梶田の両腕を掴んで事務所から引き摺り出す。
その梶田を車に押し込むところを見ている男がいた。
男はその光景を見て、走り去る車を見送っていたが、まだ一台ベンツが停まっているのでそのナンバーを見つめ続けていた。
しばらくすると、ボディガード兼運転手と共に真幸が出てきた。
真幸はその視線に気がつかず車に乗り込もうとした時だった。ジャリッと言う音に、真幸は目をそっちに向けた。
真幸の目の前に現れた男に真幸は目を見開く。
目の前に立つ男は、数ヶ月ぶりに見る疾風だった。
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