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真春は工から受け取ったリストを自分の部屋でじっくりと見た。
1人ずつ目で追っていき、知ってるような似たような名前が出てくると、直ぐに住所と年齢を確認する。
だが、なかなか自分の知り合いに当たることはなく、知り合いがドラッグに手を出してないとホッとする一方で、工の力になれないジレンマがあった。
それでも真春は毎日時間ができると、自分のスマホのアドレスと照らし合わせながらリストをチェクしていく。
気になる相手にLINEをしてもなかなか該当しなかったが、3分の2が終わった頃、相川史彦という名の1人の名前がヒットした。
大学で知り合い、違う学部だが面識があってLINEの交換をしていた。
あまり頻繁に連絡を取り合う相手ではないが、真春はドキドキとしながらその相手にLINEをしてみた。

【ども。春休みどう?俺、バイト始めた】

何気ない会話で真春はLINEをすると、夜も遅く平日だったためか直ぐに既読がついた。

【ばんわ。俺は前からバイトしてる。どこでバイトしてんの?】

史彦は暇だったようで返事が早かった。
しばらく普通の会話を続けていたが、真春は核心をぶつけることにした。

【バイト始めたせいか、最近疲れが半端なくてさ。年かな】

おちゃらけた感じで真春は送る。

【薬学部のヤツから、なんかくすねよーかな】

真春はそう送信して、どう返事が来るかしばらく待つ。

【あいつらが、そんなのくれるわけねーだろ。って、ドラッグに興味あんの?ヤバくね?(笑)】

史彦の返事に、史彦も無理かと真春は諦める。

【だよね。でもちょっと興味あってさ。バレると怖いから買いに行くとか無理だし】

これでダメなら話をやめようと思った。
史彦がやっていてもやっていなくても、深入りしないと工と約束したからだった。

【どういうのやってみたいの?】

史彦の返事に真春は、ん?と思った。

【どういうのって言ってもよく分かんないけど、あまり危なくなさそうなヤツ?】

もしかしてと真春は返事をした後、期待をして持った。

【危なくないかまだ分からないけど、使い方間違えなければ安全なの知ってるけど?】

安全なドラッグなんてあるわけねーだろと真春は思いながらも、史彦が自分に教えたくてウズウズしてるのではと想像した。

【マジ?知りたい!知りたい!】

真春は返事をしてドキドキとする。
六本木の鴉という名前が出てくるかと気持ちが昂る。

【最近、高校生とか大学生に出回ってる軽目のがあるんだよ。六本木の鴉って言ってさ。使ってみる?】

キター!と、真春は思ってガッツポーズをした。

【使いたい!どうすればいい?分けてくれるの?】

真春が返事を返すと、しばらく返事がなかった。
ヤバいと思い直して既読スルーするのかと、真春は興奮してドキンドキンと心臓がうるさい。
ジリジリしながら待つと、長文のLINEが送られてきた。
サイトのURLが送られてきていて、そこから入った後、SMSにサイトの認証が来たら、史彦が登録しているニックネームを入力する様に送られてきた。

【真春の登録する用のニックネーム考えて教えて。本当に俺が紹介した奴か、俺の方にも確認メールが来るんだ】

真春は考えた。
SNSで使ってるハンドルネームは使いたくなかった。

【タカオにするよ】

父である、飯塚組長の名前を拝借した。
もしトラブルが起きても、飯塚組長ならなんとかすると思ったからだ。

【タカオね。了解。もちろんこの事、誰にも言うなよ】

史彦が慎重になるのもわかる。
ただ冷静に考えると、思ったより簡単に教えてくれて真春は正直びっくりした。

【言わないよ。でも、俺を信用してくれて嬉しい】

真春が送信すると史彦からまた長めの返事が来た。

【どうせ俺、もうやめるんだ。今年は就活の準備もしなくちゃいけないし、いつまでもドラッグに頼るのもね。まぁ、お前が今週中に登録するなら良いけど、早くしないと俺、退会するから。そろそろ寝るわ。おやすみ】

史彦のLINEを読んで、本当に史彦が辞めるのかは分からなかったが、とりあえず登録はこれでできると思うと、工に早く知らせたくて工に電話をかける。
工は直ぐに電話に出た。

「もしもし!あのね、今ね!」

弾む声で真春は工に報告する。
紹介者のニックネームをメモに書きながら工は真春の話を聞く。

「今週中に登録しないと、そいつ退会しちゃうんだ。だから早目に登録するように言っておいて」

真春に言われるまでもなく、この電話を切ったら直ぐに真幸に報告するつもりだった。

『分かりました。ありがとうございました。おやすみな』

「待ってよ!俺の話を最後まで聞いてよ!約束!ちゃんと約束守ってよ!デートの約束!」

慌てて真春が言うと工は一瞬絶句する。

『…………デートって。1日お付き合いするとは言いましたが、デートではありませんよ』

ピシャッと訂正されて真春はムッとする。

「いいの!デートなの!俺はそのつもりで会うからね!行きたいところ連れて行ってもらうからね!」

工は面倒になって反論する気にもならなかった。
それよりも早くこの事を真幸に伝えたかった。

『分かりました。デートですね。ちゃんと行きたいところ考えておいてください。では、報告がありますから。おやすみなさい』

工は一気に捲し立てると、一方的に電話を切った。
真春は一方的に切られたスマホを見ながらチッと舌打ちをするが、それでも工とデートできると思えば今はそれで満足だった。
真幸のマンションの部屋の廊下で電話をしていた工は、リビングに戻ると真幸に報告をした。

「へー。意外と使えたな、あのガキ。思ったより仕事早かったな。鼻先の人参は相当旨そうに見えたんだな」

真幸が揶揄うように言うと工は黙ってしまった。

「まぁ良いや。んじゃ、伊織に言っておくわ。その前に、俺にもサービスしろよ、色男」

真幸は立ち上がり自分の部屋に向かう。
工は黙ったまま真幸について行った。
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