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センター試験から半月経った、ジュリの第一志望大学合格発表の日に、まるではかったように伊織が伊丹の家に訪れた。
「何しにまた来たの?暇だね」
ジュリは意識しないように伊織に言う。
「暇じゃねーよ。伊丹さんから仕事の事で話があるって言われてね。受験は全て終わったか?」
伊織がニヤニヤしていて、ジュリはムッとしながらも顔が赤くなってしまった。
「分かっててどうせ今日来たんだろ!わざとくせー!」
ジュリはリビングのソファに突っ伏す。
「なーにが?何が分かってるって?」
楽しんでいたぶるような伊織に、ジュリは自分が言ったことが恥ずかしくなって顔を上げられない。
「おいおい、会えば必ずと言っていいほど喧嘩だな。部屋の外までジュリの金切り声が聞こえてたぞ」
着替えを済ませた伊丹がリビングにやって来た。
「全く、手のかかるお嬢さんで」
クスクス笑いながら伊織が言うと伊丹はフッと笑う。
「ジュリが手がかからなくなったら逆に心配だ」
伊丹と伊織におもちゃにされてると思いジュリは不機嫌になる。
伊丹が用意した、合格祝いの為のケーキやご馳走がテーブルに並んでいて、三人はワインでまずは乾杯した。
「合格おめでとう」
伊丹から祝いの言葉にジュリは赤面する。
「ありがとう」
こんな風に祝ってもらうのが、誕生日とも違ってなんとなく恥ずかしい。
「ほらよ。入学祝い」
やっぱり知ってて今日来たんだと、ジュリは伊織を真っ赤になって睨みつける。
「今日は素直に受けとれよ」
余裕の笑顔で言われてジュリは返す言葉がない。
余計なことを言って、伊丹に伊織からクリスマスプレゼントを貰ったこともバレたくなかった。
伊織からのプレゼントは箱の大きさで、通学に使えるバッグだと思った。
オレンジ色の箱から、女子大生が使うには高級すぎるだろうと呆れながら笑う。
「ありがとう」
不本意だが、物に罪も無いので素直にジュリはお礼を言った。
伊織は満足そうにニヤニヤしている。
「なんだよ、なんだかんだ言って仲良いな」
冷やかす伊丹にジュリは真っ赤なまま無言になる。
「あまり揶揄うとご機嫌損ねるんで程々にしとくか」
伊丹はワハハと笑い、ジュリは居心地が悪くて仕方なかった。
「最近は、愚嵐怒って半グレ集団にちょっかい出されてるみたいっすね」
食事が終わり、ソファで伊丹と伊織は寛いでいると伊織が話を始めた。
「ああ、なにかと鬱陶しいんで、尾上んトコに大方任せてる。まぁ、最終的には、きっちり落とし前は付けてるけどな」
ハハハと伊丹は笑う。
尾上とは、伊丹の組の下位団体の組長だった。
「あいつら、警察にも一応目はつけられてるらしいけど、その網の目を見事にすり抜けるもんだから手に負えないらしいですね」
「それがあいつらの最大の武器だろ。まぁ、そのうちギャフンと言わせるけどね」
手中に収めるのは簡単とでも言うように伊丹は余裕だった。
さすが六代目政龍組の、武闘派で名が知れている大幹部だなと伊織は思った。
「あいつらはネット社会で暗躍してますからね。何か情報が欲しい時はいつでもどーぞ」
伊織の言葉に伊丹は笑う。
「お前に頼んだら高くつきそうだな」
伊丹はそう言って笑うが、ジュリはハッとした。
ネットの裏社会に、精通している人間が目の前にいたことに気がついた。
「なぁ、僕が頼んでも調べてくれる?」
ジュリが言うと伊織と伊丹はジュリを見る。
「交渉内容によるな」
楽しそうに伊織は笑う。
「パパの前でそう言うこと言う?」
ふふふとジュリも笑う。自分が不利にならないようにわざと伊丹の前で話をした。
「ずる賢いお嬢ちゃんだ」
伊織は笑いながら肩を竦めた。
「とりあえず僕の部屋に来て」
ジュリが誘うと伊丹は伊織を睨む。
「分かってまーす。指一本触れませんからー」
伊織は戯けて言うと、ジュリの後についてジュリの部屋に入った。
「ヤレヤレ、相変わらずの親バカで。で?何を調べて欲しいんだ?」
ジュリの部屋に入るなり伊織は尋ねる。
ジュリは伊織に健志の話を全て話した。
「……なーるほどね。ちょっとパソコン貸せ」
伊織はカタカタとパソコンの操作を始め、スマホを出すと電話を掛ける。
「あー、俺。悪いけど、今送ったアドレスに送って。…………そう、了解」
しばらくすると、メールが届いた。
「何をするの?」
ジュリは興味津々でパソコン画面を見つめる。
「企業秘密」
伊織はそう言うと、届いたメールのURLを開き、インストールした画面をクリックしていく。
「その高校生が使っていたSNSは分かるか?」
ジュリは慌てて、健志の女友達から聞いたサイトを伊織に伝える。
「僕もそれは調べたよ!でも何もなかった!」
「バーカ。そこが素人とプロの違いなんですー」
伊織は次々とサイトを開いていくと、1つのサイトに侵入した。
画面が真っ暗になって、突然次は天使の画像が出てきた。
「ヒット」
伊織がそう言ってクリックしていくと、チャットが出てきた。
「なにこれ」
「裏サイトのチャットだな」
その内容は、殆どが六本木の鴉と言う話題だった。
読んでいくうちに、健志が使っていた薬の名前が六本木の鴉だと言うことが判明した。
「これだ!絶対これだ!おい!この薬を使うなって警告出してよ!」
ジュリが伊織に叫ぶ。
「アカウントを登録しないと書き込めない。これ以上はこのサイトには入れない」
伊織の言葉にジュリは焦ったい。
「お前が手出しできる相手じゃない。この先は俺に任せろ」
伊織はジュリに危険が及ばないように、サイトの履歴をパソコンから削除した。
「何しにまた来たの?暇だね」
ジュリは意識しないように伊織に言う。
「暇じゃねーよ。伊丹さんから仕事の事で話があるって言われてね。受験は全て終わったか?」
伊織がニヤニヤしていて、ジュリはムッとしながらも顔が赤くなってしまった。
「分かっててどうせ今日来たんだろ!わざとくせー!」
ジュリはリビングのソファに突っ伏す。
「なーにが?何が分かってるって?」
楽しんでいたぶるような伊織に、ジュリは自分が言ったことが恥ずかしくなって顔を上げられない。
「おいおい、会えば必ずと言っていいほど喧嘩だな。部屋の外までジュリの金切り声が聞こえてたぞ」
着替えを済ませた伊丹がリビングにやって来た。
「全く、手のかかるお嬢さんで」
クスクス笑いながら伊織が言うと伊丹はフッと笑う。
「ジュリが手がかからなくなったら逆に心配だ」
伊丹と伊織におもちゃにされてると思いジュリは不機嫌になる。
伊丹が用意した、合格祝いの為のケーキやご馳走がテーブルに並んでいて、三人はワインでまずは乾杯した。
「合格おめでとう」
伊丹から祝いの言葉にジュリは赤面する。
「ありがとう」
こんな風に祝ってもらうのが、誕生日とも違ってなんとなく恥ずかしい。
「ほらよ。入学祝い」
やっぱり知ってて今日来たんだと、ジュリは伊織を真っ赤になって睨みつける。
「今日は素直に受けとれよ」
余裕の笑顔で言われてジュリは返す言葉がない。
余計なことを言って、伊丹に伊織からクリスマスプレゼントを貰ったこともバレたくなかった。
伊織からのプレゼントは箱の大きさで、通学に使えるバッグだと思った。
オレンジ色の箱から、女子大生が使うには高級すぎるだろうと呆れながら笑う。
「ありがとう」
不本意だが、物に罪も無いので素直にジュリはお礼を言った。
伊織は満足そうにニヤニヤしている。
「なんだよ、なんだかんだ言って仲良いな」
冷やかす伊丹にジュリは真っ赤なまま無言になる。
「あまり揶揄うとご機嫌損ねるんで程々にしとくか」
伊丹はワハハと笑い、ジュリは居心地が悪くて仕方なかった。
「最近は、愚嵐怒って半グレ集団にちょっかい出されてるみたいっすね」
食事が終わり、ソファで伊丹と伊織は寛いでいると伊織が話を始めた。
「ああ、なにかと鬱陶しいんで、尾上んトコに大方任せてる。まぁ、最終的には、きっちり落とし前は付けてるけどな」
ハハハと伊丹は笑う。
尾上とは、伊丹の組の下位団体の組長だった。
「あいつら、警察にも一応目はつけられてるらしいけど、その網の目を見事にすり抜けるもんだから手に負えないらしいですね」
「それがあいつらの最大の武器だろ。まぁ、そのうちギャフンと言わせるけどね」
手中に収めるのは簡単とでも言うように伊丹は余裕だった。
さすが六代目政龍組の、武闘派で名が知れている大幹部だなと伊織は思った。
「あいつらはネット社会で暗躍してますからね。何か情報が欲しい時はいつでもどーぞ」
伊織の言葉に伊丹は笑う。
「お前に頼んだら高くつきそうだな」
伊丹はそう言って笑うが、ジュリはハッとした。
ネットの裏社会に、精通している人間が目の前にいたことに気がついた。
「なぁ、僕が頼んでも調べてくれる?」
ジュリが言うと伊織と伊丹はジュリを見る。
「交渉内容によるな」
楽しそうに伊織は笑う。
「パパの前でそう言うこと言う?」
ふふふとジュリも笑う。自分が不利にならないようにわざと伊丹の前で話をした。
「ずる賢いお嬢ちゃんだ」
伊織は笑いながら肩を竦めた。
「とりあえず僕の部屋に来て」
ジュリが誘うと伊丹は伊織を睨む。
「分かってまーす。指一本触れませんからー」
伊織は戯けて言うと、ジュリの後についてジュリの部屋に入った。
「ヤレヤレ、相変わらずの親バカで。で?何を調べて欲しいんだ?」
ジュリの部屋に入るなり伊織は尋ねる。
ジュリは伊織に健志の話を全て話した。
「……なーるほどね。ちょっとパソコン貸せ」
伊織はカタカタとパソコンの操作を始め、スマホを出すと電話を掛ける。
「あー、俺。悪いけど、今送ったアドレスに送って。…………そう、了解」
しばらくすると、メールが届いた。
「何をするの?」
ジュリは興味津々でパソコン画面を見つめる。
「企業秘密」
伊織はそう言うと、届いたメールのURLを開き、インストールした画面をクリックしていく。
「その高校生が使っていたSNSは分かるか?」
ジュリは慌てて、健志の女友達から聞いたサイトを伊織に伝える。
「僕もそれは調べたよ!でも何もなかった!」
「バーカ。そこが素人とプロの違いなんですー」
伊織は次々とサイトを開いていくと、1つのサイトに侵入した。
画面が真っ暗になって、突然次は天使の画像が出てきた。
「ヒット」
伊織がそう言ってクリックしていくと、チャットが出てきた。
「なにこれ」
「裏サイトのチャットだな」
その内容は、殆どが六本木の鴉と言う話題だった。
読んでいくうちに、健志が使っていた薬の名前が六本木の鴉だと言うことが判明した。
「これだ!絶対これだ!おい!この薬を使うなって警告出してよ!」
ジュリが伊織に叫ぶ。
「アカウントを登録しないと書き込めない。これ以上はこのサイトには入れない」
伊織の言葉にジュリは焦ったい。
「お前が手出しできる相手じゃない。この先は俺に任せろ」
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