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cinque

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ジュリは家に帰ると、合成麻薬について調べる。
何かヒットするものがないかと見るが、流石にそう易々と裏サイトに出てくるような物は当然ながらリターゲティング広告にもヒットしない。


何か、検索ワードがあるはずなんだけど。
何もヒントがないのに、家庭用のパソコンじゃそれに辿り着くには無理か。
おそらく表向き普通のサイトなんだろうな。
SNS系だろうけど。
くそッ!
もっと簡単に見つけられるってタカを括ってた。


ジュリはそれでも、高校生が興味を持つサイトをしらみつぶしに検索していく。


仕方ない。
明日、女友達《あの子》にもう一度話を聞くか。
何かネットで夢中になっていたものがあったかもしれないし。


ジュリはそう思うとフッと息を吐いてベッドに倒れ込んだ。
あのクリスマスから、伊織とは数回会った。
もちろん、伊丹もいるので別にゆっくり話をした訳でもない。
会うたびに言うことは、受験がんばれ。だけ。
別に物足りないわけではないが、何故か逆に気になってしまう。
そしてそう思う自分も腹が立ってしまう。
スマホに着信があってジュリは飛び起きてスマホを取る。
真春の名前を見てガッカリして、そしてガッカリした自分を笑う。

「もしもし」

『大丈夫?めげてる?』

健志の事をメールしたので、真春が心配して電話をかけてきてくれた。

「めげてるって言うか、ちょっとね」

ジュリはそう言ってベッドに寝っ転がって前髪を掻き上げる。

『亡くなったのは残念だけど、ジュリは元気出してね。試験前に大丈夫?』

「うん。それより、正月以来だね。あの時もあまり話せなかったけど工とは相変わらず?」

話題を変えたくてジュリは真春の近況を聞く。

『相変わらずだね。大学が始まったから、とりあえず送迎はしてくれてるけど。結局、クリスマスも年末年始も工とはふたりきりで過ごせなかった』

寂しそうな真春の声にジュリはため息をつく。

「諦めてフツーの恋愛したら?大学に好みの男でも見つけてさ」

ジュリが言うと真春は笑う。

『男を見つける自体、フツーの恋愛じゃない気がする』

真春の言葉にジュリも笑う。

『別に男が好きなわけじゃないよ。工だから好きなだけ。だから、工以外は目に入らない』

「んー。分かるけどさ。でも諦めも肝心じゃない?あいつはマジ難しいよ」

ジュリの素っ気ない言い方に真春は笑う。

『もう!そうやってズケズケと言うよね。分かってるよ難しいのも。でもまだ諦めません。工が他に好きな人見つけたら諦める。って諦められるか自信ないけど』

そう言って真春はため息をつく。

「…………どうした?」

『ん。真幸さんとの事がどうしても気になる。工はあの人が好きなんだと思う。だけど我慢してるんだと思う。好きになっても真幸さんに応えてもらえないって思ってるんじゃないかなって。もし真幸さんが工に応えたらって』

真春の言葉にジュリは笑う。

「考えすぎだって。真幸さんが男とエッチとかしそうにないじゃん」

『でも工の所有者は自分だって言ったよ!俺に対しても敵対心丸出しな気がするし』

寂しそうに真春は言う。
ジュリは前に、工が真幸にフェラをした話を聞いたことを思い出した。
どう言う経緯でそうなったのか分からないが、確かに工は真幸に対して特別な感情があるのはジュリも感じていた。
忠誠心だと工は言い続けているが、本心はジュリも分からない。

「真幸さんと工は、多分この先も恋人同士にはならないと思うよ。別に真春に肩を持って言ってるわけじゃなくてね。あのふたりは、違う繋がりだと思う」

ジュリは言っていて、それはなぜか確信できた。

『…………焦ってるんだ。工と会える時間も少ないし。工は振り向いてくれそうにないし。ジュリの話聞こうと思ったのに、自分の話ばかりでごめんね』

真春が恐縮するのでジュリは笑った。

「良いよ、別に。僕達友達だろ?」

ジュリの意外な言葉に真春は驚く。

『友達って思ってくれるの?』

真春が言うと、ジュリは急に恥ずかしくなる。

「お、思ってるよ!悪い?」

焦って言うジュリが可愛いと真春は思った。

『悪くない。めっちゃ嬉しい。ありがとう』

素直すぎる真春がジュリには羨ましい。

「ど、どういたしまして」

調子が狂うとジュリは思いながら赤面する。
そう思いながらも、真春の存在は、確実にジュリにとってかけがえの無い物になっていた。
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