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「助かったよ。あいつら鬱陶しかったから」
ジュリが言うと、真春は笑う。
「あの男子、ジュリが好きなんじゃね?ずっと帰り際も見つめてた」
真春に言われなくても、ジュリもそれぐらい気がついていた。
「なあ、ちょうど良いや。家に寄ってかない?田嶋伊織が来る」
田嶋伊織と聞いて、工は返事をしない。
真幸と伊織の関係を快く思っていなかったからだ。
組の内紛騒動の時、伊織が真幸におそらく未遂だろうが、何か性的関係を匂わせる事を仕掛けたと思っている。
「誰だよ。田嶋伊織って」
何も知らない真春は尋ねる。
「頭の知人です」
工はそれだけ言うと、ルームミラーで後部座席のジュリを見る。
「なぜ会長宅に田嶋さんが?」
「パパの仕事のアドバイザーみたいよ。あの2人が手を組むってことは、ロクでもないことだと思うけど」
楽しそうにジュリは笑う。
「仮想通貨あたりか」
工が言うと、ジュリも頷く。
「俺、ジュリの家行きたい」
真春が興味本位で言う。
「ダメですよ。飯塚組長が心配されます」
工の返事に真春はムッとする。
「早くあの人のところに戻りたいだけでしょ」
嫉妬して真春が言うとジュリは笑う。
「なんだよ。お前、工が好きなわけ?全く、真幸さんといい、こいつといい、モテモテだな、工」
面白がってジュリは言う。工は無視をする。
真幸がムキになって真春に賭けを挑んだのが、ジュリにしてみたら真幸が工を取り戻したがっている様に見えたのだった。
「とにかく、ジュリを降ろしたら帰ります」
伊丹の家に着くと、ジュリが遠隔キーで門を開けてくれたので車を中に停めた。まだ伊丹は戻っていないようだった。
直後に国産の高級車のライトが見えて、伊織の車だと工は気がついた。
運転手がインターホンを鳴らしたので、ジュリが内側から門を開けると伊織の車が入ってきた。
「真幸の用心棒まで居たのかよ」
車から降りた伊織が、運転席に座る工を見つめた。工は車の中から軽く会釈だけする。
「早かったね。パパはまだだよ」
そう言っていると伊丹も帰ってきた。
「おいおい、なんだか集まってるなぁ。その車、恵比寿か?」
飯塚組長の所有の1台だと気付き、工と真春が来ていると分かった。
「ばったり会って、送ってもらった」
ジュリがそう言うと、工は車から降りて伊丹に頭を下げた。
「ああ、そうか。真春も良かったら寄って一緒に食事でもするか?」
伊丹の誘いに真春は1つ返事で受ける。
「恵比寿も来い」
車に残る工にも伊丹は声をかけた。
「いえ、俺はここで。真春さんをお願いします」
頑なに断るので、伊丹は肩をすくめ真春を連れ家に入った。
真春は工を見つめていたが諦める。
工は1人になれてホッとした。
本当は真春を送り届けて、真幸の元に早く帰りたかった。
懐く真春が、正直苦手でならない。どんなに冷たくしても、懲りずに近付いてくる。
工に好意を寄せているのは分かっているが、こんなに跳ねつける自分に何を求めているのか分からないので、どう接していいのかも考えたくなかった。
真春が俺をどう思おうが、俺には関係ない。
俺が忠誠心を誓えるのは頭だけ。
いくら頭の血縁だとしても、俺を従えられるのは頭だけだ。
初めて会った時から、真幸の存在感に工は目が離せなかった。
強く激しい気性の裏で、繊細で脆く儚い。
愛する者のために、自分を切り捨てる。
自分の心を殺そうと必死になっている姿が痛々しい。
月に何度か工に甘える姿が、愛おしくて仕方なかった。
俺が愛しているのは乙也だけだ。
そんな俺が頭を幸せには出来ない。
頭を幸せにできるのは、あの男しかいない。
写真で見た疾風の顔を思い浮かべて、工は真幸への忠誠心に切なくて胸が締め付けられた。
ジュリが言うと、真春は笑う。
「あの男子、ジュリが好きなんじゃね?ずっと帰り際も見つめてた」
真春に言われなくても、ジュリもそれぐらい気がついていた。
「なあ、ちょうど良いや。家に寄ってかない?田嶋伊織が来る」
田嶋伊織と聞いて、工は返事をしない。
真幸と伊織の関係を快く思っていなかったからだ。
組の内紛騒動の時、伊織が真幸におそらく未遂だろうが、何か性的関係を匂わせる事を仕掛けたと思っている。
「誰だよ。田嶋伊織って」
何も知らない真春は尋ねる。
「頭の知人です」
工はそれだけ言うと、ルームミラーで後部座席のジュリを見る。
「なぜ会長宅に田嶋さんが?」
「パパの仕事のアドバイザーみたいよ。あの2人が手を組むってことは、ロクでもないことだと思うけど」
楽しそうにジュリは笑う。
「仮想通貨あたりか」
工が言うと、ジュリも頷く。
「俺、ジュリの家行きたい」
真春が興味本位で言う。
「ダメですよ。飯塚組長が心配されます」
工の返事に真春はムッとする。
「早くあの人のところに戻りたいだけでしょ」
嫉妬して真春が言うとジュリは笑う。
「なんだよ。お前、工が好きなわけ?全く、真幸さんといい、こいつといい、モテモテだな、工」
面白がってジュリは言う。工は無視をする。
真幸がムキになって真春に賭けを挑んだのが、ジュリにしてみたら真幸が工を取り戻したがっている様に見えたのだった。
「とにかく、ジュリを降ろしたら帰ります」
伊丹の家に着くと、ジュリが遠隔キーで門を開けてくれたので車を中に停めた。まだ伊丹は戻っていないようだった。
直後に国産の高級車のライトが見えて、伊織の車だと工は気がついた。
運転手がインターホンを鳴らしたので、ジュリが内側から門を開けると伊織の車が入ってきた。
「真幸の用心棒まで居たのかよ」
車から降りた伊織が、運転席に座る工を見つめた。工は車の中から軽く会釈だけする。
「早かったね。パパはまだだよ」
そう言っていると伊丹も帰ってきた。
「おいおい、なんだか集まってるなぁ。その車、恵比寿か?」
飯塚組長の所有の1台だと気付き、工と真春が来ていると分かった。
「ばったり会って、送ってもらった」
ジュリがそう言うと、工は車から降りて伊丹に頭を下げた。
「ああ、そうか。真春も良かったら寄って一緒に食事でもするか?」
伊丹の誘いに真春は1つ返事で受ける。
「恵比寿も来い」
車に残る工にも伊丹は声をかけた。
「いえ、俺はここで。真春さんをお願いします」
頑なに断るので、伊丹は肩をすくめ真春を連れ家に入った。
真春は工を見つめていたが諦める。
工は1人になれてホッとした。
本当は真春を送り届けて、真幸の元に早く帰りたかった。
懐く真春が、正直苦手でならない。どんなに冷たくしても、懲りずに近付いてくる。
工に好意を寄せているのは分かっているが、こんなに跳ねつける自分に何を求めているのか分からないので、どう接していいのかも考えたくなかった。
真春が俺をどう思おうが、俺には関係ない。
俺が忠誠心を誓えるのは頭だけ。
いくら頭の血縁だとしても、俺を従えられるのは頭だけだ。
初めて会った時から、真幸の存在感に工は目が離せなかった。
強く激しい気性の裏で、繊細で脆く儚い。
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自分の心を殺そうと必死になっている姿が痛々しい。
月に何度か工に甘える姿が、愛おしくて仕方なかった。
俺が愛しているのは乙也だけだ。
そんな俺が頭を幸せには出来ない。
頭を幸せにできるのは、あの男しかいない。
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