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uno

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ツボ振りは、何も事情を知らずに道具を持ってきた子分が引き受けることになった。
即席の賭場ができると、真幸は真春を見て笑う。

「緊張すんなや。UNOよりシンプルですぐ済むよ。丁か半か決めるだけだ。2つのサイコロの目の合計が偶数だと思うなら丁、奇数だと思うなら半だ」

真幸の説明に真春は頷く。

「はい!ツボ被ります」

ツボの中にサイコロが吸い込まれるように入っていった。

「さあ、丁か半か!」

真幸は真春に先に決めるように言う。
2人の姿を工はじっと見守る。


どっちだ?
偶数?奇数?
偶数が丁だっけ。
偶数の気がする。
でも、奇数だったら。
分かんないよ!


真春は悩んで、ちらりと工を見る。
工は真春とも真幸とも目が合わないようにツボだけを見つめている。

「おいおい、明日になっちまうぜ。いい加減決めろや」

楽しそうに、真幸がいたぶるように言う。
真春はもう何も考えられなかった。

「奇数!」

焦って奇数と叫んでしまった。
男どもが一斉に吹き出す。五島の妻は、笑った五島の腕を抓って睨んだ。五島は照れ笑いをする。

「半でよろしいですか?」

子分に確認されて真春は真っ赤になって頷く。

「じゃあ、俺は丁で」

真春はゴクリと生唾を飲んだ。

「勝負!」

ツボが上がる。
真春は身を乗り出して見つめた。

「ピンゾロの丁!」

結果に真春は目を疑った。
2分の1の確率に負けたんだと認めざるおえなかった。
真幸は当然のように工を連れて帰って行く。
工は帰り際一礼したものの、何も真春に言葉を発しなかった。
この家に来て1ヶ月近くたって、この家にいられたのは、工のおかげだったと真春は思い知った。
もう自由に会えなくなると思うと、真春は何も考えられなくなる。
一方の工は久しぶりに真幸のマンションへ戻りホッとした。
運転手兼ボディーガードから車のキーを受け取ると、真幸と工はエレベーターに乗った。

「我が家に帰る気分か」

「いえ。頭を守るだけです」

「頑固だな」

真幸の声と笑顔に工は落ち着く。
やっと元の生活に戻れると思った。
真幸の部屋が久しぶりな気がした。

「帰り際、じーさんに言われたさ。最初の勝負は真春の勝ちだって。だから、大学への送り迎えだけはしてやって欲しいって」

それを聞いて工は複雑だった。
もうほとんど会うことがないとホッとしていたからだ。

「あんなんでも、政龍組の正統な後継者だ。ま、それを守れるのはお前ぐらいだろ」

真幸の言葉に工は従うしかなかった。
それでも真幸といられるならと十分だと思った。

「どうして俺を賭けて勝負してくれたんですか?」

ずっと聞きたかったことをようやく聞いた。

「ムカついたから。お前を貸しただけのつもりだったのに、まるで自分の所有物のように勘違いしてたんで。スッキリした。お前は俺の用心棒で、所有権は俺にある」

フフフと真幸は涼しい顔で笑うと煙草を咥えた。工がライターで火をつける。
煙草を吸う、その美しい姿に工は見惚れた。
理由はなんであれ、真幸が自分を欲してくれたことが、工は嬉しかった。
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