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Act.2《これが、初恋なんだね。》

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実子は早朝の保育園の門の前で掃き掃除をしていた。
早い子は、7時過ぎにはもう保育園にやってくる。
朝一番で美奈子が登園してきた。
昨夜美奈子が、ホームシックになって泣いた話を秀治は実子に話した。

「不安定になってると思いますけど、何かあれば直ぐ俺に連絡してください」

秀治が言うと実子は笑顔で応える。

「はい!了解です。今は慣れない環境なので、園でも無理はさせないので安心してください」

実子の言葉が秀治には心強かった。
美奈子との生活は、妹の面倒を見ていると言うより、まるで子育てをしている気分だった。

「でも秀治さん、凄いです。しっかりしてるし、美奈子ちゃんのこともちゃんと見て大事にしていて」

実子が真っ赤になって秀治を褒める。
秀治はその顔を見てフッと笑った。

「何でそんなに真っ赤になってんの?」

秀治の言葉に実子はドキリとする。

「ま、真っ赤ですか?」

焦って実子は頬に手を当てる。確かに頬が火照っている。

「そんな態度されると、男はあんたが自分に気があるんじゃないかって勘違いするよ」

楽しそうに揶揄いながら秀治は言う。
実子は余計に真っ赤になって恥ずかしくて仕方ない。

「か、揶揄わないでください!」

実子の反応が新鮮で、秀治はなぜか実子が可愛く見えてきた。
自分より年上なのは分かっているが、なんとなく可愛いと感じてしまった。
自分の周りには今までいなかったタイプ。

「はいはい。じゃあ、美奈子をよろしくです」

年上の女を揶揄うのは初めてなことではないが、実子の反応は初々しすぎて何故か秀治はホッとした。
美奈子のことも安心して預けられると思った。
こんな風に思うのは初めてだと思いながらも、その感じがとても心地よかった。

「もー、実子先生!朝から美奈子ちゃんのお兄ちゃんにデレデレなんだから」

先輩保育士が実子を弄る。

「デレデレなんてなってませんから!美奈子ちゃんのことで報告を受けていただけです!」

ムキになって実子が言うと先輩保育士はぷぷぷと笑う。

「はいはい。分かってるわよ。さてと、朝の準備しなくちゃ」

先輩保育士がそう言って中に入っていくと、実子は顔を冷やしたくて仕方なかった。
秀治に対してときめいてしまって、その胸の鼓動がなかなか鎮まらなかった。
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