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Act.2《これが、初恋なんだね。》

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尾上組に顔を出した後、秀治は、誠竜会会長伊丹の武闘派組織がある埠頭の倉庫に着いた。
ここは武器庫にもなっていて、射撃から格闘技までの鍛練場にもなっていた。
維持にかかる莫大な資金の出所は謎だが、組の中で御法度と言われている“薬局”をしなくとも、誠竜会は政龍組の中では、五島組の次に上納金を納めている。

「どうだ?少しはまともにリボルバー扱えるようになったか?」

射撃の師匠である年齢不詳の謎の老人、宮田が秀治に尋ねる。

「はい。まともに当たるようになってきました」

秀治はイヤーマフを外して首にかけると宮田を見た。

「まあまあだな。まぁ、用心棒程度なら、リボルバーから自動拳銃オートマチックまで扱えるようになりゃ良い方だろ。別にヒットマンになるわけじゃねぇ」

秀治が当てた的を見ながら宮田は言う。
この武器庫には、ナイフや日本刀はもちろん、拳銃だけでなく、ライフルからマシンガン、ショットガンと銃器はかなりの数を揃えている。
伊丹はプロの殺し屋も抱えていると聞いた。その活動も資金源になっているのではと秀治は思った。

「お前は身体能力も高い。鍛えていけば成城レベルにまでなるのは可能だろうな」

楽しそうに宮田は言う。

「早く独り立ちしたいです」

秀治はリボルバーを見つめながら言う。

「お前は筋が良い。そのうちどんな武器も右手にしっくりくる時がくるさ」

いつかこれを実戦で撃つ日が来るのかと思うと、正直身震いするほど秀治はワクワクした。
その顔を宮田は見逃さなかった。

「人を殺してみりゃわかるさ。本当の痛みと、その目的がな」

宮田の言葉に秀治はドキッとして宮田を見つめる。

「どう言う意味ですか?」

秀治の顔を見てニヤリと宮田は笑う。

「まんまの意味さ。俺はお前を殺人鬼に育ててぇ訳じゃねぇ。お前は尾上を守る力が欲しいんだろ?無用なことは己の首を絞める。それだけは忘れるな。お前の目は時として血に飢えた目をしてる。昔どんな生活をしていたかよく分かるぜ」

宮田はそう言うと、くたびれたクシャクシャの煙草の袋から煙草を1本出した。

「俺の弟子の“ある娘”は実の父親を殺して、その痛みと引き換えに自分を取り戻した。間違えるな。お前が得る力は、ヘタすりゃお前を殺すことと隣り合わせだってことをよ」

秀治は宮田の忠告を聞いて身を引き締めた。
正直、リボルバーを撃つ自分に酔っていた。
まるで自分が強くなったと楽しかった。

「勘違いしそうになりました。ありがとうございます」

秀治はそう言って頭を下げた。

「バカは嫌いじゃねぇ。ただ賢くなけりゃ俺は認めねぇ。お前が賢い奴で良かったぜ」

煙草をふかしながら宮田は言う。

「それって、バカだって言われてる気がするんすけど」

クスリと秀治は笑う。

「だから嫌いじゃねぇって言ってんだろ」

あははと宮田は笑った。秀治も満足そうに笑った。
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