上 下
7 / 38
Act.1《危険な香りの男性が、初めての男-ヒト-でした。》

しおりを挟む
次の日の昼過ぎ、女から電話が入った。

「ああ、俺だ。いくらだ?」

女から買い物にかかった金額を聞く。
女が成城のマンションに到着すると、ゆあは成城のスウェットを着ていた。大きすぎてブカブカだった。

「とりあえずファストファッションのショップで下着3組とスウェットを2着買って来たから。ブラのカップ数わかんなかったからMサイズの買ったけど」

女がゆあに買って来たものを差し出すとゆあは頭を下げた。

「喋れないの?この子」

「一過性だろ。気にするな」

成城は女に2万渡した。

「高校生でしょ?学校は?」

「行かせられねぇよ。家にはサツも張ってるだろうし、ここでしばらく熱り冷めるまで大人しくしてもらわねぇと」

うんざりと言う顔で成城は言う。

「仕方ないから、私が毎日通ってあげようか?」

女が成城に抱きつく。

「用があれば連絡する」

成城は冷たく言うと女を離れさせた。

「もうッ!どうせ他の女も呼んでるんでしょ!」

図星だったので成城は答えない。
女はプンプンしながらも、仕事に行く準備もあるので帰って行った。
ゆあは成城をジッと見つめる。

「………………モテるんですね」

突然喋って成城はゆあを見つめる。

「不自由ない程度にはな」

無表情で成城は答える。

「………………私も男に生まれたかった。そうすれば、おじいちゃんもおばあちゃんもママも助けてあげられたかもしれない」

ゆあの言葉に成城は何も言わない。

「私が何もできないから。みんな、いなくなっちゃう」

ゆあが泣きはじめた。
成城はうんざりした顔でゆあをただ見る。

「私、どうすればいいの!」

成城は大きくため息をつく。

「大人しくジッとしてここにいれば良いんだ」

それしか成城も言えない。全ては雅楽の指示に従うまで。

「ママ、どうしてるのかな。ママが心配」

ゆあが泣きじゃくる。たった1人の肉親の安否が気になって仕方ない。
警察に保護され、まだ入院しているとは連絡が来ているが、怪我の状況までは分からない。
体の傷よりもレイプされた精神的苦痛の方がどうなんだろうと成城は思った。

「お前の母親のことは全て任せろ。悪いようにはしない」

成城はなだめるようにそう言うとゆあの髪をグシャッとかき乱した。そしてそのまま優しく撫でた。
ゆあはドキンとして成城を見つめる。

「私、まだあなたの、名前…………聞いてなかった」

ゆあが涙を拭いながら成城に言う。

「成城だ」

「成城、さん」

さん付けで呼ばれて、成城は調子が狂う。

「呼び捨てでいい」

成城がそう言うとゆあは首を振る。

「年上の人に呼び捨てできません!でも、なんて呼べば良いかな」

ゆあが突然呼び方で悩みはじめた。成城はこの状況で何を呑気になってるんだとゆあを見る。 

「お、お兄、ちゃん…………て、呼びます」

ゆあの言葉に成城は固まる。

「はあ?なんだそれ。やめろ。気色悪い。呼び捨てでいいし。だいたい、いちいち俺を呼ぶこともないだろ」

成城は頭痛がして来た。
ゆあがあまりにも危機感がなくてバカらしくなる。
さっきまで母親のことで泣いていた少女とは別人かと思うほどだった。

「呼ぶ時があったら、そう、呼びます」

ゆあは言い切ると黙った。
成城ももう相手をする気にもなれず黙った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...