優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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前に進む勇気

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美紅はその夜龍彦に、千秋から連絡があり、龍彦を恋人だと言ったと言う話をした。

「ごめんね。隠しておくの嫌だったから」

美奈子と再会した日に、なぜ突然そんな電話を千秋がしてきたのか、龍彦は腹が立って顔が険しくなる。
やっぱり千秋が美奈子と不倫をして、美紅を苦しめたのかと余計に勘ぐってしまった。
そしてもし本当に美奈子が美紅を傷つけたのなら、絶対に許さないと思った。

「たっ君、怒ってる?千秋さんの電話に出たこと。でも隠していたくなかったから」

不安そうに美紅は怯えた目で龍彦を見る。
龍彦はハッとして、美紅の頬に手を当てた。

「美紅に怒ってるわけじゃない。言ってくれて良かった。ずっと西川さんが気にしてたんだよ。俺と美紅が付き合うこと」

龍彦は親指で、美紅の頬を撫でた。
美紅は擽ったくて、その手を自分の手で包む。

「もしかしたら、たっ君がもう話してるのかなって少しだけ思ってた」

「わざと話さなかった。西川さんにわざわざ報告する義理もないしね。聞かれたら話すつもりだった」

やっぱりそうだったんだと、美紅は自分の考えと同じだったことでホッとした。

「油断してたよ。もう二度と美紅に関わってくることないと思ってたから。出来れば西川さんを一切拒否してくれる?」

龍彦の千秋に対しての怒りは収まらなかった。
美紅に連絡して来るのが本当に無理だった。

「え?あ、良いよ。私から千秋、西川さんに連絡することもないし」

美紅が西川さんと言い直したことに龍彦はフッと笑った。
千秋さん呼ばわりをされるのも、本当はずっとムカついていたが、流石にそこまで嫉妬を表すのは大人気ないと我慢していた。
美紅は何も気にせず、スマホの中の千秋の連絡先を一切消した。

「ごめん。嫉妬だって分かってるけど、美紅にはもう西川さんは必要ないでしょ?」

龍彦の独占欲が美紅には嬉しい。

「うん。たっ君がいれば良い。私だけを見てくれるから」

美紅の笑顔に龍彦は顔が緩んでしまう。

「当たり前でしょ。俺が美紅以外によそ見する事なんてないよ。やっと捕まえたんだから」

龍彦はギュッと美紅を抱きしめる。

「俺は美紅以外いらない。絶対だからね」

「私も。たっ君だけだよ」

腕の中の美紅が愛おしくて、誰にも邪魔されたくないと龍彦は腕の力が強くなる。

「たっ君。ぎゅーが強いよぉ」

「じゃあ、ちゅーなら良い?」

龍彦の腕が緩むと、美紅は真っ赤な顔で龍彦にキスする。
龍彦は美紅との甘いキスを繰り返しながら、千秋に自分と美紅の関係をハッキリ告白しようと決めた。
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