優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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その罪を許せるか許せないか

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GWも終盤になり、今年はどこにも出かけなかったなと、美紅はカレンダーを見ていた。

「あ、そっか……」

いつの間にか千秋との結婚記念日が過ぎていたことに気がつき、結婚記念日を忘れられていたことに美紅はホッとした。

「なーにカレンダーと睨めっこか?」

背後から龍彦に声をかけられて美紅は振り返る。

「あ、うん。今年は何もなくGW過ぎたなって思って」

「確かに俺も特に何もねーGWだったな。接待でゴルフ行っただけだし」

龍彦は冷蔵庫を開けると、炭酸飲料をグラスに注いだ。

「原田も飲む?」

「うん」

龍彦はグラスを2つダイニングテーブルに運ぶ。
美紅もダイニングテーブルにやって来た。

「ありがとう」

「どーいたしまして」

コクコクと二人は炭酸飲料を飲み始めた。 

「崇人さんは実家帰って、また見合いの話でも押し付けられてっかな」

ニヤニヤしながら龍彦が言うと、美紅はキョトンとして龍彦を見る。

「崇人さんて、彼女いないの?すっごくモテそうなのに」

「モテ過ぎて理想が高いんじゃね?バンカーで高身長のイケメン。モテないはずがないのにお一人様。結構裏では遊び人だったり」

ケラケラ笑う龍彦に美紅は呆れ顔になる。

「崇人さんに限って遊び人て事ないよ。休みの日だって余計な外出しないし、優しいし、私ともすっごくおしゃべりしてくれるし。今は仕事が大変なんじゃないかな」

崇人のことを褒めるので、龍彦はちょっとムッとする。

「へぇ。随分崇人さんと仲いーね。そりゃ崇人さんは大人だし、包容力もあるし、真面目だし……って言ってて悔しくなって来た」

まるで自分がガキだなと龍彦は自覚してしまった。

「もし私にお兄ちゃんがいたら、崇人さんにお兄ちゃんになって欲しいぐらい。理想的なお兄ちゃん」

美紅が嬉しそうに語るので、龍彦はホッとした。

「なんか分かる気がする。こうやって毎日生活してると疑似家族になるよな。俺も崇人さんは兄さんみたいな感覚。隆和は弟」

「分かる分かる。私も隆和君は弟みたいに可愛い」

何気ない会話が美紅は楽しくなってくる。
本当に家族になったようで心が暖かくなる。

「じゃあ、りほさんと沙優さんはお姉ちゃんだね!」

楽しそうに美紅が言うと龍彦はゲッと言う顔をする。

「うーん、りほは姉ちゃんでも良いけど、沙優は、姉ちゃんにしたくないので遠慮したい」

「えー、なんで?なんで?私、りほさんも沙優さんもお姉ちゃんみたいで大好きだよ!すっごく優しいし仲良くしてくれるし」

「そりゃ、原田は良いかもしれねーけど、俺は」

龍彦が言いかけた時、カタンとドアが閉まる音がした。

「ただいまー。って、もしかしてお邪魔だった?」

ニヤニヤしてりほが入ってきて、美紅はその言葉に真っ赤になる。

「別にお邪魔じゃないよー。もう、りほさんてばー」

揶揄われて美紅は恥ずかしくなる。龍彦も、照れ隠しのように髪を掻く。

「それより温泉どうでした?」

りほは会社の仲間と温泉に行っていた。

「人が多かったよー。でも楽しかった。あ、温泉まんじゅうお土産。いっぱい買ってきたから先に食べよっか」

りほが美紅に手渡す。

「ありがとう!お茶淹れるね」

美紅がキッチンに行くと、龍彦はりほを見る。りほもその視線に気がつくとニヤリと笑う。

「私帰ってきたの、絶妙なタイミングだった?」

龍彦は真っ赤になる。

「すっげー、タイミング良かったよッ!」

不貞腐れる龍彦にりほはニヤニヤ笑い、美紅は何も気が付かずにお茶を淹れていた。
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