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その罪を許せるか許せないか
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裕介も実家の両親に、美奈子と離婚する事を報告した。
もちろん突然の事に裕介の両親は、何があったんだと裕介を問いただすが、裕介は美奈子の不貞を告白することはどうしても出来なかった。
同じく東京に住む兄にも連絡を入れた。
「悪いんだけど、兄さんとお姉さんに証人を頼んで良いかな。流石に友人には頼めなくて」
『何があったんだよ。父さんたちには言わないから、本当のこと教えてくれよ』
流石に兄の公介にまで、黙ったままでは無理かと裕介は口を開いた。
「僕が不甲斐なかっただけだよ。仕事のことだけじゃないけど、夫婦生活がうまく行ってなかった」
『それにしたって、不倫するのは違うだろ?美奈子ちゃん、清楚な感じだったのになんかがっかりだよ』
見た目と性欲は違うんだと裕介は言いそうになった。
そして原因の一つにもなった、寂しい思いをさせたのも本当だ。
「美奈子だけを責めないでね。僕だって分かってあげられてなかったんだから」
『ああ、すまない。つい、腹が立って。でもお前は大丈夫なのか?こんなに簡単に離婚して良いのか?美奈子ちゃんに対しても、相手の男にも慰謝料を請求しないつもりなのか?』
慰謝料を尋ねられても、裕介はもうそんな事より、美奈子も離婚に合意してくれている以上早く別れたかった。
千秋に対して慰謝料請求しないのも、妻を奪われたとして、男のプライドをもう傷つけられたくないのが理由だった。
「もう関わりたくないんだ。離婚出来るならそれで良い。今度の週末に美奈子を実家に送る事になってるんだけど、その後寄っても良いかな?そうすれば離婚届すぐに出せるし」
本当に本気なんだと公介も覚悟した。
『分かったよ。辛いだろうけど、話ならいつでも聞くからな』
「ああ。ありがとう」
近くに公介がいてくれて良かったと裕介は本心で思った。
愛していた美奈子に裏切られ、この先どうすれば良いのか本当は分からなかった。
それでも時は過ぎていき、美奈子を実家に戻すと裕介は離婚届を提出した。本当に紙切れ一枚で終わってしまうんだと実感した。
美奈子を送り届けた翌日には、一人で裕介の元へやって来た美奈子の父から謝罪され、本当に美奈子とは縁が切れたんだと自覚した。
それからの美奈子のいない生活は、寂しさと虚しさに苛まされたが、ただ仕事で子供達の顔を見ていると、自分はひとりじゃないんだと思うと、それだけが救いにはなった。
「志田先生!今夜飲みに行きませんか?」
「え?」
綾奈に声をかけられて裕介はびっくりする。
裕介が離婚したことは直接伝えた訳ではないが、教師の間では暗黙の了解になっていた。
「あ、いえ、でも」
独身に戻ったとは言え、若い女性教師と二人で飲みにいくのは気が引けた。
「吉村先生も一緒ですから!ねッ!」
同僚の女性教師の吉村も一緒と知り、裕介もそれならばと飲みにいく事にした。
正直ひとりで食事をするのは寂しかった。
綾奈も吉村も、裕介のプライベートの事には一切触れてこなかったが、きっと気を遣ってくれたんだと思うと、その気持ちだけでも慰めになった。
いつかきっと。
美奈子を忘れる時がくれば良いと思った。
もちろん突然の事に裕介の両親は、何があったんだと裕介を問いただすが、裕介は美奈子の不貞を告白することはどうしても出来なかった。
同じく東京に住む兄にも連絡を入れた。
「悪いんだけど、兄さんとお姉さんに証人を頼んで良いかな。流石に友人には頼めなくて」
『何があったんだよ。父さんたちには言わないから、本当のこと教えてくれよ』
流石に兄の公介にまで、黙ったままでは無理かと裕介は口を開いた。
「僕が不甲斐なかっただけだよ。仕事のことだけじゃないけど、夫婦生活がうまく行ってなかった」
『それにしたって、不倫するのは違うだろ?美奈子ちゃん、清楚な感じだったのになんかがっかりだよ』
見た目と性欲は違うんだと裕介は言いそうになった。
そして原因の一つにもなった、寂しい思いをさせたのも本当だ。
「美奈子だけを責めないでね。僕だって分かってあげられてなかったんだから」
『ああ、すまない。つい、腹が立って。でもお前は大丈夫なのか?こんなに簡単に離婚して良いのか?美奈子ちゃんに対しても、相手の男にも慰謝料を請求しないつもりなのか?』
慰謝料を尋ねられても、裕介はもうそんな事より、美奈子も離婚に合意してくれている以上早く別れたかった。
千秋に対して慰謝料請求しないのも、妻を奪われたとして、男のプライドをもう傷つけられたくないのが理由だった。
「もう関わりたくないんだ。離婚出来るならそれで良い。今度の週末に美奈子を実家に送る事になってるんだけど、その後寄っても良いかな?そうすれば離婚届すぐに出せるし」
本当に本気なんだと公介も覚悟した。
『分かったよ。辛いだろうけど、話ならいつでも聞くからな』
「ああ。ありがとう」
近くに公介がいてくれて良かったと裕介は本心で思った。
愛していた美奈子に裏切られ、この先どうすれば良いのか本当は分からなかった。
それでも時は過ぎていき、美奈子を実家に戻すと裕介は離婚届を提出した。本当に紙切れ一枚で終わってしまうんだと実感した。
美奈子を送り届けた翌日には、一人で裕介の元へやって来た美奈子の父から謝罪され、本当に美奈子とは縁が切れたんだと自覚した。
それからの美奈子のいない生活は、寂しさと虚しさに苛まされたが、ただ仕事で子供達の顔を見ていると、自分はひとりじゃないんだと思うと、それだけが救いにはなった。
「志田先生!今夜飲みに行きませんか?」
「え?」
綾奈に声をかけられて裕介はびっくりする。
裕介が離婚したことは直接伝えた訳ではないが、教師の間では暗黙の了解になっていた。
「あ、いえ、でも」
独身に戻ったとは言え、若い女性教師と二人で飲みにいくのは気が引けた。
「吉村先生も一緒ですから!ねッ!」
同僚の女性教師の吉村も一緒と知り、裕介もそれならばと飲みにいく事にした。
正直ひとりで食事をするのは寂しかった。
綾奈も吉村も、裕介のプライベートの事には一切触れてこなかったが、きっと気を遣ってくれたんだと思うと、その気持ちだけでも慰めになった。
いつかきっと。
美奈子を忘れる時がくれば良いと思った。
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