優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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真実の扉が開き始めた

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美紅は深呼吸すると千秋のLINの画面を見つめる。
なぜやり取りを消しておかなかったんだと千秋は後悔した。

「美奈子さんといつから付き合いが始まったの?」

「……岡崎の結婚式で、再会して」

やっぱりかと美紅は思った。
それぐらいしか、幼馴染と接点が出来るわけがないと思っていた。
美紅は無言で、下から上にと遡っていく。
千秋と美奈子は、1日に多い時は結構な数のやり取りをしていた。
時間は朝の出勤時間、昼休み、営業の移動中と思われる時間。
そして空白の1時間の謎も解け、美奈子も既婚者だと分かった。

「帰りはどこでLINのやり取りしてたの?亘理君が言ってた。20時には会社を出ていたって」

龍彦にそんな事を聞いていたんだと、千秋はいつから美紅が自分を疑っていたのかと思った。

「……駅のカフェで」

美奈子とのやり取りを見て美紅は泣く。
まだ2人で会ったと思われる形跡はない。殆どが日常会話と昔話だった。
どんどん戻ると、あるやり取りに目が止まった。
2人で会ったと思われる内容。
美紅の胸は張り裂けそうなほど、ドクンドクンと心臓が激しく脈打ち隆起している。
そして10月まで戻った。

【◯◯◯ホテルの1205だから。早く会いたい】

千秋が送った、2人が会ったと思われる日。
そのやり取りの日付を見て美紅は凍りつく。
千秋がプロポーズをしてくれた記念日の日付だった。

「この日って、千秋さんが私にプロポーズしてくれた記念日に、私がロールキャベツ作った日だよね?」

美紅の声が震えている。
千秋は何も言い訳が考えられなかった。

「……すまない」

かろうじてその言葉だけが口をつく。

「仕事は?」

確か取引先から直帰して来たはずだったと美紅は思い返す。

「有給取った」

千秋の返答に美紅は吐き気に襲われる。
嘘をついて美奈子と会っていた現実を受け入れられない。
言い逃れができない、決定的な証拠。
プロポーズをされた記念日に、目の前の夫は違う女とホテルで過ごした。
何もしてないと言われても、信じることなどできない。
その後も2人は平気な顔でやり取りを続けていたと思うと、吐き気は一向におさまらない。

「ひどい。仕事、行ったんじゃ、なくて、有給使って、この人と、ホテルで、会って、たんだ」

あまりにも吐き気がひどくて声がうまく出ない。
涙も頬を伝いポタポタと落ちて行く。
美紅はソファに崩れ落ちる様に座ると千秋のスマホを横に置いた。

「本当にすまない!」

千秋はガクッと体を落とすと膝をついた。
美紅の顔が見れなかった。
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