優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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繋がる体と募る不安

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何も予定のない日曜日。
美奈子と裕介は昼食を食べ終え、リビングでそれぞれ寛いでいた。
しばらくすると、裕介は家にいるのも飽きてきて、美奈子を外に連れ出そうと考えた。

「買い物でも行く?」

裕介に声をかけられて、美奈子はピクッと反応する。

「あ、そうだね。夕飯、何食べたい?」

「んー。何にしようかぁ。たまにはお刺身も良いかな」

裕介が夕飯の献立を考える。
美奈子はエプロンのポケットに入っているスマホが気になり、その事に頭がいっぱいになる。
美奈子はすっと立ち上がると、リビングを出て行った。
トイレに入ると直ぐにLINを開き、千秋からのLINに目を通す。
夜なら裕介が一人で部屋で仕事をしているので、リビングで美奈子は気兼ねなく千秋とLINのやり取りをしているが、流石に裕介の目の前で頻繁にスマホは触れなかった。

【それでさ、岡崎の奴、真知子と喧嘩してるんだってさ。全くあいつらは飽きずによく喧嘩してるよ】

こんなやり取りを、今日は朝から繰り返していた。
それと言うのも、美紅が今日は朝から夕方まで留守にしていて、千秋が自由だったのもあった。
美奈子は、千秋とのやりとりが楽しくて、裕介がいるにもかかわらずトイレに入っては返信をしていた。
そして自分も今日は一人だったら良かったのにと思ってしまい、流石にそれは自己嫌悪になる。

「美奈子。大丈夫?」

美奈子がリビングに戻ると、裕介は心配そうな顔で美奈子に尋ねる。

「え?」

「今朝から、トイレの回数多くない?」

一応気にして1時間ぐらいは間を置いていたつもりだったが、裕介に指摘されて美奈子はまずいと思った。

「うん、大丈夫だよ。ちょっとお腹の調子が悪いだけだから」

そう言って誤魔化すしか無かった。

「それじゃ今夜は生物は良くないね。温かいものにしよう」

裕介に余計な気を遣わせて、美奈子は返す言葉がない。
裕介との時間よりも、千秋との時間を優先させてしまっていた。

「何が良いかなぁ。そろそろ鍋でも食べるか」

美奈子の体調を考えて、あっさりとした鍋にでもしようかと裕介は思った。

「大丈夫だよッ!裕介お刺身食べたいでしょ?」

「別にそれは来週でも良いよ。それより薬飲まなくて大丈夫?」

あくまでも優しい裕介。
美奈子はコクンと頷く。

「もう本当に大丈夫だよ。買い物も行けるから」

「うん。〆は雑炊とうどんどっちが良いかなぁ」

裕介はそう言いながら出かける支度を進める。
美奈子はエプロンのポケットからスマホを出すと、エプロンを外してスマホを握りしめた。
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