優しいあなたは罪な人

再会は嘘の始まり

18

美紅が先にベッドに横になっていた。

「美紅、寝てる？」

千秋はベッドに乗ると、美紅を自分に向けた。ウトウトしていた美紅は目を静かに開ける。

「んー。横になってたら眠くなったぁ」

美紅の甘い声に千秋は愛おしくなる。

「もう寝ちゃう？」

千秋が美紅の耳に囁き、パジャマの中に手を進める。
美紅のふっくらとした胸を揉みながら唇にキスをした。

「んッ。千秋、さん。明日も、仕事でしょ？」

「ダメ？美紅が欲しいな」

千秋にそう言われて美紅も拒否できない。美紅は千秋を笑顔で受け入れる。
千秋は美紅を裸にすると、自分もスウェットを脱ぎ捨てた。
美紅の全てを愛おしむように、千秋の濃厚な愛撫が美紅をとろけさせる。
1つ残らず全てを奪うように、美紅の柔肌に唇を当てた。

「ああん！……あんッ！」

「美紅、気持ちいい？」

「気持ちいいのッ！千秋さんッ！変になるッ！」

「変になって。もっと」

美紅が喘ぎ声を漏らさないように手で口元を押さえて震える姿に、千秋は余計に欲情する。
愛しい妻を腕の中に入れて互いに快楽を貪っているのに、なぜ美奈子と2人で会う約束をしてしまったんだと、千秋は自分の言動が自分でも信じられなかった。
愛する美紅を裏切る必要があるのかと、自分の中で自問自答する。
それでも美奈子が気になる自分の中の二面性に、千秋は自分が分からなくなる。

「ああッ！もうダメッ！千秋さん、一緒にッ！」

美紅がイくのと同時に千秋も果てた。
ずっと繋がっていたいと思いながら抱きしめる。

「愛してるよ」

抱きしめながら美紅に呟く。
美紅を愛しているのは本心。美紅を失いたくないと思っている。
しばらくすると、美紅は千秋の腕枕の中で寝息をたて始めた。
その寝顔を千秋は見つめる。


　やっぱり、美紅を裏切れない。
　俺は、何をしようとしてる？
　美奈子だって、きっと旦那を裏切れないはずだ。

　【私、誰かと浮気しちゃいそう】


それなのに美奈子のLINの文字が、呪文のように頭から離れない。
もし自分が逃げたら、美奈子は別の男と。そう思うと千秋は胸が苦しくなる。
なぜこんなにも、美奈子にこだわり囚われているのか分からないが、次の日会社に行くと、千秋は自分の仕事の予定を確認して有給申請をした。
僅かながら、美奈子から断りの連絡があれば良いのにと思いながら。