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白飯とごま塩
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その後、俺は検察官から取り調べを受ける事になった。
眼鏡を掛けた中年の検察官は、警察での取り調べとほぼ同じ事を俺に尋ねた。
ただ、違うことも尋ねてきた。
「あなたを犯人だと供述した同僚の方をその時見ましたか?」
俺が紙袋を持って社長室を出た時、同僚に見られたようだ。
しかし、俺はその姿を見ていない。
「あ、いえ。見ていないです」
「では、質問を変えます。社長室にあなたが入った時、誰かいましたか?」
「いいえ」
誰かいたら、俺が金を盗んでいないことは一目瞭然だ。
「誰かがいた気配はありましたか?」
「え?」
誰かがいた?
いや、誰もいなかった。
検察官にカマをかけられている?
それとも、気配があったと答えるのが正解なのか?
「……ありませんでした」
嘘はつけない。
「分かりました。では、あなたは、席に戻るまで誰とも会っていなかったんですね?」
俺は頷いた。
「どうして同僚の方は、あなたが社長室から紙袋を持って出てきたと言ったんでしょうね?何処であなたを見ていたんでしょうね」
検察官の言葉に、俺の頭の中はグルグルした。
そうだ。
あいつは何処で俺を見たんだろう。
俺の席がある部屋から社長室は廊下一本だ。
あの時廊下には誰もいなかった。
誰ともすれ違う事もなかった。
眼鏡を掛けた中年の検察官は、警察での取り調べとほぼ同じ事を俺に尋ねた。
ただ、違うことも尋ねてきた。
「あなたを犯人だと供述した同僚の方をその時見ましたか?」
俺が紙袋を持って社長室を出た時、同僚に見られたようだ。
しかし、俺はその姿を見ていない。
「あ、いえ。見ていないです」
「では、質問を変えます。社長室にあなたが入った時、誰かいましたか?」
「いいえ」
誰かいたら、俺が金を盗んでいないことは一目瞭然だ。
「誰かがいた気配はありましたか?」
「え?」
誰かがいた?
いや、誰もいなかった。
検察官にカマをかけられている?
それとも、気配があったと答えるのが正解なのか?
「……ありませんでした」
嘘はつけない。
「分かりました。では、あなたは、席に戻るまで誰とも会っていなかったんですね?」
俺は頷いた。
「どうして同僚の方は、あなたが社長室から紙袋を持って出てきたと言ったんでしょうね?何処であなたを見ていたんでしょうね」
検察官の言葉に、俺の頭の中はグルグルした。
そうだ。
あいつは何処で俺を見たんだろう。
俺の席がある部屋から社長室は廊下一本だ。
あの時廊下には誰もいなかった。
誰ともすれ違う事もなかった。
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