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天使の悩み

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月に一度の教授の呼び出しが終わり、蓮見は大学病院の廊下を歩いていた。
「蓮見じゃねーか」
スクラブの上に白衣を羽織った男が蓮見を呼び止めた。
振り返ると、ボサボサの頭に無精髭を生やしながら、何処と無く男性フェロモンを撒き散らす雰囲気のある、蓮見の大学時代からの友人で脳神経外科医の橋元だった。
「おう、橋元。久しぶり。相変わらずだな」
橋元の見かけに蓮見は笑う。
ちゃんとそれなりに手入れすれば男前のくせに、相変わらず無頓着である。
学生時代から女の噂もなく、変わり者だと陰口を叩かれても、脳外科の世界では、橋元の腕に敵うものは誰1人としていない。
「また教授に呼ばれたか?早く大学病院《こっち》に戻れってか?」
「そこまで露骨じゃないが、病院を誰かに任せられないのか?とは言われてはいる」
「十分露骨じゃねーか」
あははと橋元は笑う。蓮見も笑う。
「たまには飲みに行こうぜ」
珍しく橋元が誘ってきた。
「どうせお前は烏龍茶だろ」
笑いながら蓮見は言う。
いつ何時呼ばれても良いように、橋元は絶対にアルコールを口に入れない。
「最近はそうでもないぜ。後輩のために、余程のことがなければ俺は呼ばれても行かない。もう育てる側の医者になって来たってこったな」
つまらなそうに橋元は言う。
「そうか。あ、今夜は?俺の病院、星川に俺の代理で来てもらってんだよ。一緒に飲まねぇか?」
ダメ元で蓮見は誘ってみた。橋元は髪を掻きながら少し悩む。
「んー。ツレがいいって言ったらな」
意外な言葉に蓮見は驚く。
「なんだよ、いつの間に彼女出来たんだよ。お前に彼女って想像つかねぇ」
笑いながら蓮見は言う。
「そうか?学生の時もいたぜ。誰にも言わなかったけど」
飄々として橋元は言う。
こう言う奴だと蓮見は苦笑した。
「じゃあ、彼女がOKしたら来いよ。うちの場所知ってるだろ?」
「うん」
「あ、星川の他に、同居人の男の子、大学生の子も居るんだけどいいか?」
大学生の同居人と聞いて、橋元は少し、ん?と言う顔をした。
「なんで同居人?下宿屋もしてるのか?」
笑いながら橋元は言う。
「詳しいことは、家に来たら話すよ。じゃあ、来れるようなら連絡よろしくな」
蓮見は手を振って大学病院を後にした。
橋元は中庭に出るとスマホの電源を入れ電話をかける。
「あー、俺。同期の男に誘われたんだけど、今夜行っても良いか?」
『えー。誰と?』
橋元の恋人は不満げに尋ねる。
「蓮見って奴」
『あー、天才だって話していたお医者さん?その人だったら良いよ。絶対、取られる心配ないから』
恋人の言葉に橋元は笑う。
「バーカ。お前以外、眼中ねぇし」
橋元がそう言うと、恋人はご機嫌な声になった。
電話を切ると、橋元は蓮見に行くとメールをした。
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