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恋人未満

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あのキスから、気がつけば一週間近く経って、真冬がバイトの休みの土曜日になっていた。
蓮見は診察があるので変わらず病院に行っているが、真冬は普段できない掃除を徹底的にしていた。
「明日は休みだし、先生、お酒いっぱい飲むかな」
最近はちゃんとほぼ一日置きになっていた。蓮見は真冬と約束したので、お酒を飲む日は、日、火、木、土と決めていた。
真冬はビールを冷やして今夜の献立を考える。
スマホのメールが来て誰かと真冬は見る。
蓮見だった。
【今、星川から連絡があって、今夜来るって言うんだけど大丈夫?無理なら外で飲んで来るけど】
蓮見からのメールに、真冬のこめかみは引きつった。
【大丈夫!外飲みは許しません!僕の目の届かないところで、星川さんと会うの禁止!】
真冬からのメールに蓮見は爆笑しそうになった。

これってやっぱ嫉妬だよね。
独占欲つえー。

メールを読んで満足した蓮見は返信する。
【真冬に手間が掛かると悪いから、外で会おうと思ったけど、真冬がそう言うなら家に来てもらうね】
イニシアチブは自分が取れたと蓮見は満足だった。
真冬の蓮見への返信は、あっかんべーの顔文字だった。
それを見て蓮見はプッと吹き出した。
夜7時過ぎに、星川が蓮見の元に訪れた。
先日の胃を切除する患者の話になった。
蓮見も星川も真剣な顔で話をしているので、真冬も気を遣ってなるべく離れて2人を見ていた。
「胃がんの浸潤が予想され、正直、開いてみないと細かいリンパの転移が分からないんです」
星川は悩んでいる。
「転移がありそうか?」
「五分五分です」
確かに、それを考えての開腹だろうと蓮見も思った。
「開いたは良いが、胃を切除しても癌組織が残るなら、他の化学療法も視野に入れなければなりません。今までそういったケースがなかったわけではありませんが、年齢を考えると」
「78か。確かに、微妙だな」
難しい話の連続で、真冬はもう風呂に入って部屋に戻ろうと思った。
「先生。お風呂入って僕寝ます。明日、片付けするね」
「おやすみ」
蓮見があまりにも素っ気ない返事をしたので、真冬は正直寂しかった。
「ごめんね、真冬君。おやすみ」
逆に星川の優しさに真冬は諦めもついた。
お風呂から上がっても、蓮見と星川はまだ話が終わらない。
仕方なくリビングには入らず真冬は自分の部屋に戻った。
蓮見に寸止めをしているのは自分だと分かっていても、星川と仲が良さそうだとそれはそれで納得がいかない。

何で僕はこんなにずるいんだろう
先生の気持ちに応えないくせに嫉妬だけして。
そのうち先生に嫌われちゃう!

後悔しながら真冬はベッドの中で丸くなる。
どうしようもない気持ちにバランスが取れない。
蓮見を自分だけの蓮見にしたいと思う自分勝手な自分と、それはわがままだと冷静に判断できる自分。
両方とも自分の本当の気持ちだった。
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