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俺と君

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夜中に蓮見は部屋の電気を消したまま、タブレットでアダルト動画を検索した。
イヤホンを付けて音が漏れないようにする。
真冬に対する気持ちを、どうにか紛らわしたかった。
動画の中では、男女の営みが繰り広げられていたが、なぜか真冬に対して後ろめたさがあり見ていても興奮しない。
それどころか、真冬の笑顔が浮かんでしまい、蓮見はため息をついて動画を消した。

ヤバイ。
マジヤバイ。
エロ動画に興奮しないで真冬に興奮するって、マジヤバイし!

そうは言っても、真冬を想うだけで下半身が熱くて仕方がない。
目を瞑って真冬を思い浮かべ、手が自然とスウェットの中に入ってしまった。
下着の上から硬くなったモノに触れる。
そこで葛藤が始まる。
真冬を穢してしまうのが怖くて手が動かないものの、本当は真冬を思って扱いてしまいたくなる。

あー、身体に悪い。
思いっきり気持ちよくなりたい。
でもシたらきっと明日の朝、真冬の顔が見れない。

悶々としながら、蓮見は真冬に嫌われるのが嫌で、後ろめたさを感じるのが嫌で、頭までタオルケットを被り無理矢理寝ることにした。
なかなか寝付けなかったが、それでも疲れていたせいもあり、しばらくすると眠りに落ちることができた。
次の日の朝、あくびをしながら蓮見がリビングに行くと、真冬はもう朝食の支度をしていた。
干物を焼いて、納豆用のネギを切っていた。
「おはよう、先生。今朝は先生の好きな豆腐とわかめの味噌汁だよ」
にっこりと笑顔が爽やかな真冬が恨めしい。
真冬だってまだ若い、蓮見よりも11も年下だ。
性的欲求はないのか?と気になってしまう。
「おはよう」
今日は日曜日なので病院は休診日だった。
蓮見は寝ぼけ眼でダイニングテーブルに着くと味噌汁を啜った。
今日もいい味だなぁと幸せな気分になる。
「先生、僕、今日はアルバイトの面接を受けてくるね。学費稼がないと」
楽しそうに真冬は言う。
「そうか、いいアルバイト先、見つかるといいね」
蓮見も微笑んで、炊きたてご飯にネギ入りの納豆をかけた。
「じゃあ俺は1日家でゴロゴロしてるかな。何時に面接?」
「10時から。それでね、バイトが始まったら先生のお昼ご飯、またお弁当を作ることになると思うんだ。あったかいご飯作ってあげられなくてごめんね」
申し訳なさそうに真冬は言う。この家にやってきた時は、まだ夏休み前だったので、真冬は蓮見の分とふたり分のお弁当を作って大学に通っていた。今は夏休みなので、毎日昼も温かい食事を作ってもらっている。
蓮見を気にかけるその健気な姿に蓮見はジーンとなる。
「お弁当作ってくれるだけでめっちゃ満足だよ。でも大変じゃないかい?別に無理しなくていいよ」
気遣って蓮見が言うと真冬は首を振る。
「だって僕が作らなかったら、カップ麺で済ませるでしょ?そんなの嫌だ」
真冬がぷぅとホッペを膨らませる。
蓮見はその顔が可愛すぎてまともに見れない。
「はい。じゃあ、お願いします」
顔を見ないように深々と蓮見は頭を下げる。

なんでそんなに俺に気遣ってくれちゃうわけ?
あー、我慢できなくなる。
でも真冬は俺のこと、家族みたいに思ってるんだよな。
俺の気持ち知ったら、絶対引くよね。

蓮見はひたすら食欲を満たして、性欲を払ってしまいたい。
どうしてこんなに真冬が好きになってしまったのか、蓮見自身が知りたかった。
確かに真冬は中性的で可愛い顔をしている。小柄で華奢だ。
でもそれだけで惚れたわけではなかった。
味覚も合うし、優しくて思いやりもあり、素直で無邪気で、とにかく蓮見の理想そのものなのだ。
ただそれが男だっただけ。
真冬は食器を洗い、洗濯物を干し、部屋に掃除機をかけると面接に出かける。
「お昼はどこか食べに行こう。面接終わったら連絡して。バイト先の近くの目黒駅で待ち合わせしよう」
蓮見が言うと、真冬は嬉しそうに微笑んだ。
バイトは幼児教室と幼稚園児、小学生の塾の講師の仕事だった。
将来の役に立つようにと、やっと見つけたバイトだった。
お昼近くに、真冬と目黒で待ち合わせなので蓮見は山手線に乗っていた。
目黒の駅で落ち合うと2人はカフェに入った。
バイトの面接は上手くいったようで、今度の水曜日から行くことになった。
「俺、浮いてない?」
真冬のチョイスに任せたが、カフェは若い女の子やカップルばかりだった。
「大丈夫だよ。先生カッコ良いし、若く見えるし」
真冬にそう言われて、お世辞でもデレそうになる。
真冬は生ハムとフルーツトマトのカッペリーニを注文し、蓮見はバジリコスパゲティを注文した。
「美味しいね」
嬉しそうに笑顔で真冬は言いながらカッペリーニを堪能する。
「うん。でも俺は、真冬が作ってくれる食事の方が断然美味しいし好き」
蓮見には量が少なかったのか、あっという間にスパゲティを平らげて真冬をべた褒めする。
「もお。先生、褒めるの上手いなぁ。めっちゃ嬉しいじゃん」
照れる真冬が可愛い。
とにかく真冬はなんでも可愛くて、蓮見は仕方なくて困る。
「そんなに甘やかされたら、僕、ずっと先生の側から離れられなくなるな」
可愛いのは顔や仕草だけでなく、言うことまで一々可愛くて、蓮見的には身が持たなかった。

天使すぎる。
21の男子が天使に見えるとか、俺マジどうしちゃったのよ。
もう、真冬は小悪魔すぎるって。

天使なのか悪魔なのか、もうそれさえも超越するほど蓮見は真冬に惚れている。悶絶しそうになりながらも、人目がある以上グッと堪える。
穏やかな顔で真冬は食事を終えると、デザートのパフェを嬉しそうに食べる。
その姿を見つめながら、蓮見も幸せな気分になる。

そう言えば、真冬って子供みたいに甘いものとか好きだよな。
しょっちゅうアイスとかチョコとか食ってるし。
まぁ、それも似合ってるんだけどさ。

「真冬って、酒飲まないよね。もしかして苦手なの?」
蓮見が尋ねると、真冬はコクリと頷く。
「美味しいって思わないんだよね。でも甘い缶チューハイは飲めるよ」
やっぱりと思いながら蓮見は笑った。
「それにね、前、失敗してるんだ。前の大学のサークルの時、20歳以上は飲まないといけないって無茶振りがあってさ。とりあえずラムネサワー飲んだんだけど、酔って、後輩の男の子にキスしちゃってさ」
赤面しながら真冬は言う。
それを聞いて蓮見は頭に血が上った。

なんだとー!キスだと!
しかも男にだと!
めっちゃそいつが羨ましいんですけど!!

「次の日謝ったら許してくれたけど、やっぱり気持ちのいいものじゃないでしょ?男にキスされるなんてさ」
真冬の言葉に、蓮見はズキンとした。
ああ、そうか。と蓮見は自己嫌悪に陥る。
自分は真冬とキスしたいし、抱きしめたいし、それ以上のことだってしたくてたまらない邪な男なのにと泣きたくなった。
普通に考えれば、ノーマルな男にしてみたら、やはり男にキスをされるのは気持ちのいいものじゃないと理解した。
理解しなくても分かっていた。
分かっていたが切なかった。
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