12 / 35
弐
5
しおりを挟む
「あー、評価証明で思い出したー。先週相続に必要だからって、一式取りに来たお客さんがいたのね。そのお客さん、智大の事務所に行った?」
沙耶香が突然言い始める。智大はえ?って顔で沙耶香を見る。
「相続って言ってたから、智大のとこ行ったかなーと」
まさかと思って沙耶香に智大は聞いた。
「その人大川って人の戸籍集めていたか?」
沙耶香はやっぱりと言う顔で頷いた。沙耶香も相続関係の書類を出す時は、お客の名前を覚えるようにしていた。それが智大の仕事に繋がれば良いなと思ったからだ。
何人も区役所には職員がいるのに、まさか沙耶香が担当したと分かると、しほなも流石に怖くなったらしい。
大川親子に関わった人間がまさか一同に集まるとは。智大はマスターの顔を見た。
「まさか、マスターまで知ってると言わないよね」
マスターはミステリアスな笑顔。
「大川様なら、生前よくいらっしゃっていましたよ」
マスターがそう言うと、智大としほなは悲鳴をあげそうになった。
「なんて、冗談ですよ」
まさかのマスターの冗談に、智大もしほなも笑えなかった。
事情を知らない沙耶香だけがキョトンとしていた。
ちなみに評価証明とは、評価証明書と言って、土地や建物のその年度の評価額が載っているものである。
司法書士はそれを基に法務局に申請する書類に貼る、登録免許税を算出するのである。
とにかくこの奇妙な夜に智大の心はざわつき、おそらくその相続登記は何かしらの導きによって完結するのではと智大は確信した。
しかし、こうも偶然ってありえるか?
涼しい顔のマスターを横目で見て、智大は心の中で呟いた。
沙耶香が突然言い始める。智大はえ?って顔で沙耶香を見る。
「相続って言ってたから、智大のとこ行ったかなーと」
まさかと思って沙耶香に智大は聞いた。
「その人大川って人の戸籍集めていたか?」
沙耶香はやっぱりと言う顔で頷いた。沙耶香も相続関係の書類を出す時は、お客の名前を覚えるようにしていた。それが智大の仕事に繋がれば良いなと思ったからだ。
何人も区役所には職員がいるのに、まさか沙耶香が担当したと分かると、しほなも流石に怖くなったらしい。
大川親子に関わった人間がまさか一同に集まるとは。智大はマスターの顔を見た。
「まさか、マスターまで知ってると言わないよね」
マスターはミステリアスな笑顔。
「大川様なら、生前よくいらっしゃっていましたよ」
マスターがそう言うと、智大としほなは悲鳴をあげそうになった。
「なんて、冗談ですよ」
まさかのマスターの冗談に、智大もしほなも笑えなかった。
事情を知らない沙耶香だけがキョトンとしていた。
ちなみに評価証明とは、評価証明書と言って、土地や建物のその年度の評価額が載っているものである。
司法書士はそれを基に法務局に申請する書類に貼る、登録免許税を算出するのである。
とにかくこの奇妙な夜に智大の心はざわつき、おそらくその相続登記は何かしらの導きによって完結するのではと智大は確信した。
しかし、こうも偶然ってありえるか?
涼しい顔のマスターを横目で見て、智大は心の中で呟いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
座敷童子が見える十四歳のわたしと二十七歳のナオカちゃん
なかじまあゆこ
キャラ文芸
座敷童子が見える十四歳の鞠(まり)と二十七歳のナオカちゃん。大人も子供も夢を持ち続けたい。
わたし座敷童子が見えるんだよ。それは嘘じゃない。本当に見えるのだ。
おばあちゃんの家に『開かずの間』と呼んでいる部屋がある
その部屋『開かずの間』の掃除をおばあちゃんに頼まれたあの日わたしは座敷童子と出会った。
座敷童子が見える十四歳の鞠(まり)と二十七歳のナオカちゃん二人の大人でも子供でも夢を持ち続けたい。
下宿屋 東風荘 2
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。
下宿屋は一体どうなるのか!
そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___
※※※※※
下宿屋東風荘 第二弾。
八百万の学校 其の参
浅井 ことは
キャラ文芸
書籍化作品✨神様の学校 八百万ご指南いたします✨の旧題、八百万(かみさま)の学校。参となります。
十七代当主となった翔平と勝手に双子設定された火之迦具土神と祖父母と一緒に暮らしながら、やっと大学生になったのにも関わらず、大国主命や八意永琳の連れてくる癖のある神様たちに四苦八苦。
生徒として現代のことを教える
果たして今度は如何に──
ドタバタほのぼのコメディとなります。
神様達の転職事情~八百万ハローワーク
鏡野ゆう
キャラ文芸
とある町にある公共職業安定所、通称ハローワーク。その建物の横に隣接している古い町家。実はここもハローワークの建物でした。ただし、そこにやってくるのは「人」ではなく「神様」達なのです。
※カクヨムでも公開中※
※第4回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※
花舞う庭の恋語り
響 蒼華
キャラ文芸
名門の相神家の長男・周は嫡男であるにも関わらずに裏庭の離れにて隠棲させられていた。
けれども彼は我が身を憐れむ事はなかった。
忘れられた裏庭に咲く枝垂桜の化身・花霞と二人で過ごせる事を喜んですらいた。
花霞はそんな周を救う力を持たない我が身を口惜しく思っていた。
二人は、お互いの存在がよすがだった。
しかし、時の流れは何時しかそんな二人の手を離そうとして……。
イラスト:Suico 様
神様の喫茶店 ~こだわりの珈琲とともに~
早見崎 瑠樹
キャラ文芸
妖怪の類いを見ることができる。青年にとってそれは、普通のことだった。
ある日、青年はとある町の古い喫茶店に入った。そこで働いていたのは神様だった。
妖怪と人と神とそれぞれ違った価値観を持っている。青年にとってそれは新鮮なことで悩まされることになるのだが……
少しの恋と謎、それらが織り成すのは神と人の物語
ハードボイルドJK
月暈シボ
キャラ文芸
近未来を舞台にした学園で、ハードボイルドなヒロインと謎を追う日常風学園ミステリーです。
転入してまだ間もない主人公の高遠ユウジは特別校舎での授業を終えて本校舎に戻る途中、下駄箱前で立ち尽くすクラスメイトの麻峰レイに遭遇する。
レイは同じクラスでありながらも、その完璧に近い美貌と近寄りがたいクールな雰囲気によってユウジは自分とは縁がないと思っていた人物だった。
靴が紛失し立ち往生していたレイを助けたユウジは翌日、彼女から昨日の礼と靴の盗難事件が多発していることを聞かされる。
レイは既に盗難事件について独自の調査を開始しており、自分を含めた被害者の生徒はいずれも同じ寮の女子生徒であることを突きとめていた。
そしてユウジは、レイからこの事件を一緒に解決しようと誘われる。好奇心からと、レイのような美少女と仲良くなるチャンスを拒む理由はないユウジはその申し出を受ける。
このようにしてユウジとレイはバディを組むと、事件と学園の謎に迫るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる