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シチ

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鷹雄から話を聞き終えた孫の真幸と、息子の真春は、半ば呆れたように特別室を出た。特別室の前室には、鷹雄の数人のボディガードと真幸の運転手兼ボディガード、真春のボディガード兼恋人の恵比寿工がソファに座って待っていた。
真幸達が出てくると、工は病室の扉を開けてふたりの前を歩く。

「じーさん、いよいよボケたか?」

真幸が言うと真春は笑う。

「だね。話、美化しすぎでしょ。五島さんに聞けば、後半の真相は分かるかもよ?」

楽しそうに真春が言うと、真幸はフッと笑う。

「て、言うか、人間ドックの度に、俺呼び出されてる気がする」

前回は一芝居打たれ騙された。今回はなぜか過去の話を聞かされた。

「父さん病院嫌いだから、寂しいんだよ、きっと」

クスクス笑いながら真春は言う。
エレベーターホールでエレベーターを待っていると、チンと言う音と共にエレベーターの扉が開いた。
その時ふたりの前に、シルバーグレーの艶のある綺麗な髪に、ハーフだと分かる美しい婦人が花束を抱えて現れた。
とても若く見えるが、もう70は過ぎていると真幸と真春は思ったが、そう思っても、とても魅力的な婦人だった。
婦人はすれ違い様、真幸と真春を見て少し驚く。

「…………しんちゃん」

その言葉を聞いて真幸と真春は驚くが、婦人はフッと微笑むと会釈をして、飯塚の隣の特別室に入って行った。

「今、しんちゃんって言わなかった?もしかしてッ!」

驚いた顔のまま真春は言う。

「………………きっと空耳だろ」

真幸が呟くと、真春は婦人が入って行った特別室を目で追った。
特別室には患者のプレートがないので、入院患者を知る事はもちろんできない。
だがふたりは、目の前に現れた婦人がきっと摂子だと思った。
鷹雄の話を聞いた後だったので、そう思いたかった。


鷹雄は病室の大きな窓から外を眺める。
青空の中に幼い頃の摂子の顔が浮かび、それを眺めながら嬉しそうに微笑んだ。
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