80 / 81
シチ
15
しおりを挟む
鷹雄から話を聞き終えた孫の真幸と、息子の真春は、半ば呆れたように特別室を出た。特別室の前室には、鷹雄の数人のボディガードと真幸の運転手兼ボディガード、真春のボディガード兼恋人の恵比寿工がソファに座って待っていた。
真幸達が出てくると、工は病室の扉を開けてふたりの前を歩く。
「じーさん、いよいよボケたか?」
真幸が言うと真春は笑う。
「だね。話、美化しすぎでしょ。五島さんに聞けば、後半の真相は分かるかもよ?」
楽しそうに真春が言うと、真幸はフッと笑う。
「て、言うか、人間ドックの度に、俺呼び出されてる気がする」
前回は一芝居打たれ騙された。今回はなぜか過去の話を聞かされた。
「父さん病院嫌いだから、寂しいんだよ、きっと」
クスクス笑いながら真春は言う。
エレベーターホールでエレベーターを待っていると、チンと言う音と共にエレベーターの扉が開いた。
その時ふたりの前に、シルバーグレーの艶のある綺麗な髪に、ハーフだと分かる美しい婦人が花束を抱えて現れた。
とても若く見えるが、もう70は過ぎていると真幸と真春は思ったが、そう思っても、とても魅力的な婦人だった。
婦人はすれ違い様、真幸と真春を見て少し驚く。
「…………しんちゃん」
その言葉を聞いて真幸と真春は驚くが、婦人はフッと微笑むと会釈をして、飯塚の隣の特別室に入って行った。
「今、しんちゃんって言わなかった?もしかしてッ!」
驚いた顔のまま真春は言う。
「………………きっと空耳だろ」
真幸が呟くと、真春は婦人が入って行った特別室を目で追った。
特別室には患者のプレートがないので、入院患者を知る事はもちろんできない。
だがふたりは、目の前に現れた婦人がきっと摂子だと思った。
鷹雄の話を聞いた後だったので、そう思いたかった。
鷹雄は病室の大きな窓から外を眺める。
青空の中に幼い頃の摂子の顔が浮かび、それを眺めながら嬉しそうに微笑んだ。
真幸達が出てくると、工は病室の扉を開けてふたりの前を歩く。
「じーさん、いよいよボケたか?」
真幸が言うと真春は笑う。
「だね。話、美化しすぎでしょ。五島さんに聞けば、後半の真相は分かるかもよ?」
楽しそうに真春が言うと、真幸はフッと笑う。
「て、言うか、人間ドックの度に、俺呼び出されてる気がする」
前回は一芝居打たれ騙された。今回はなぜか過去の話を聞かされた。
「父さん病院嫌いだから、寂しいんだよ、きっと」
クスクス笑いながら真春は言う。
エレベーターホールでエレベーターを待っていると、チンと言う音と共にエレベーターの扉が開いた。
その時ふたりの前に、シルバーグレーの艶のある綺麗な髪に、ハーフだと分かる美しい婦人が花束を抱えて現れた。
とても若く見えるが、もう70は過ぎていると真幸と真春は思ったが、そう思っても、とても魅力的な婦人だった。
婦人はすれ違い様、真幸と真春を見て少し驚く。
「…………しんちゃん」
その言葉を聞いて真幸と真春は驚くが、婦人はフッと微笑むと会釈をして、飯塚の隣の特別室に入って行った。
「今、しんちゃんって言わなかった?もしかしてッ!」
驚いた顔のまま真春は言う。
「………………きっと空耳だろ」
真幸が呟くと、真春は婦人が入って行った特別室を目で追った。
特別室には患者のプレートがないので、入院患者を知る事はもちろんできない。
だがふたりは、目の前に現れた婦人がきっと摂子だと思った。
鷹雄の話を聞いた後だったので、そう思いたかった。
鷹雄は病室の大きな窓から外を眺める。
青空の中に幼い頃の摂子の顔が浮かび、それを眺めながら嬉しそうに微笑んだ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
傘がない(鳴かない杜鵑 spin off1)
五嶋樒榴
恋愛
※こちらは全てフィクションです。実際の事件、人物や団体等を特定してはおりません。犯罪を助長するものでもありません。事実に反する記述もありますが、創作上の演出とご理解ください。
性的表現は思わせぶりには伏せていますが、かなり過激に書いています。暴力的な場面も多々あるので、そう言ったものが苦手な方は読まないでください。
3人の男達のオムニバスストーリー
雨の日にナンパした女は、夏前の雨の香りだった。
一晩だけのアバンチュール。
この雨が降っていなければ……………。
伊丹悠介が出会った女は、ひとときだけの泡沫の夢。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
雨の日に言葉を交わした少年は、とても美しかった。
真っ直ぐに信じてくれる瞳には孤独な影が見えた。
この雨が降っていなければ……………。
恵比寿工が出会った少年は、純真無垢なガラス細工。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
雨の日に大切な仲間が死んで、大切な存在が腕の中にやって来た。
この世界、いつ死んだっておかしくない。そう覚悟はしていたはずだ。
この雨が降っていなければ………………。
五島甫が愛した女は、未来へ続く幸せな希望。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる