72 / 81
シチ
7
しおりを挟む
しかしそれからひと月後、突然摂子が鷹雄の前から姿を消した。
何があったのか鷹雄は全くわからず行方を探すも、不思議なほど何も手がかりはなく、しかも、摂子が事件に巻き込まれる可能性は全く見当がつかない。
もし鷹雄を貶める手段で摂子に何かあったのなら、直ぐにそれなりのアクションがあっても不思議がない。
それすらも何もなく、ただ忽然と摂子は鷹雄の前から消えたのだった。
真一も摂子を心配して、独自で行方を探してはみるも限界があり、仕方なくいつもはあまり足を踏み入れない母家の鷹雄の元にやって来た。
「父さん!一体摂子さんに何したんだよ!」
真一が怒りに任せて鷹雄の胸ぐらを掴んで問い詰める。
「俺が知るかッ!」
鷹雄は真一を自分から引き離した。
「知らないわけないだろッ!どうせ美都子さんが裏で何かしたんじゃないのか?なんであんたは女にだらしないんだよ!」
真一の言葉に鷹雄はカッとして真一の頬を打った。
「何すんだよ!」
「やかましいわッ!お前こそ、摂子の部屋に入り浸っていたくせに、摂子の事何も見えてなかったじゃねーか!偉そうな口叩くんじゃねぇ!」
確かに、摂子の異変を真一も何も感じていなかった。
部屋へ行けばいつも通り接してくれて、普段通りおかしな事は何も無かった。
「……それでも、父さんまで摂子さんの異変に気づかないなんておかしいだろ!結局父さんの摂子さんへの愛情なんてそんなもんかよッ!」
これ以上鷹雄に聞いても無駄だと分かり、真一はカッカしながら離れへ帰って行く。
「まーったく、いい歳して騒々しい子ね」
隣の部屋で聞いていた美都子が鷹雄の元にやって来た。
「摂子摂子って、親子で本当に馬鹿みたいに」
クスクスと馬鹿にするように美都子は笑う。
「なかなか私とあなたが離婚しないもんだから、痺れを切らしてまたあなたの前から消えるなんて、摂子もとんだ構ってチャンねぇ」
「何が言いたい?」
「昔、家を飛び出した時だって、本当は死ぬ気なんて無かったわけでしょ?鷹雄に引き留めてもらいたくて、わざと家を飛び出して、それに鷹雄はまんまと引っかかったじゃない」
摂子が橋の欄干から飛び降りて死のうとした事も、その場を見てもいなかったのに、鷹雄の気を引く行為だったと美都子は言う。
「本当にお前は何もしてないんだな?」
摂子がいなくなった時に、1番に美都子の事を疑ったが、再び鷹雄は尋ねる。
「前にも言ったけど、私は本当に何もしていないわよ。こっちだって変に疑われて迷惑だわ」
摂子がいなくなった事で散々責められたが、それでも美都子は鷹雄を嫌いにはなれない。
それよりも、このままずっと摂子が見つからない事を心の中で願った。
何があったのか鷹雄は全くわからず行方を探すも、不思議なほど何も手がかりはなく、しかも、摂子が事件に巻き込まれる可能性は全く見当がつかない。
もし鷹雄を貶める手段で摂子に何かあったのなら、直ぐにそれなりのアクションがあっても不思議がない。
それすらも何もなく、ただ忽然と摂子は鷹雄の前から消えたのだった。
真一も摂子を心配して、独自で行方を探してはみるも限界があり、仕方なくいつもはあまり足を踏み入れない母家の鷹雄の元にやって来た。
「父さん!一体摂子さんに何したんだよ!」
真一が怒りに任せて鷹雄の胸ぐらを掴んで問い詰める。
「俺が知るかッ!」
鷹雄は真一を自分から引き離した。
「知らないわけないだろッ!どうせ美都子さんが裏で何かしたんじゃないのか?なんであんたは女にだらしないんだよ!」
真一の言葉に鷹雄はカッとして真一の頬を打った。
「何すんだよ!」
「やかましいわッ!お前こそ、摂子の部屋に入り浸っていたくせに、摂子の事何も見えてなかったじゃねーか!偉そうな口叩くんじゃねぇ!」
確かに、摂子の異変を真一も何も感じていなかった。
部屋へ行けばいつも通り接してくれて、普段通りおかしな事は何も無かった。
「……それでも、父さんまで摂子さんの異変に気づかないなんておかしいだろ!結局父さんの摂子さんへの愛情なんてそんなもんかよッ!」
これ以上鷹雄に聞いても無駄だと分かり、真一はカッカしながら離れへ帰って行く。
「まーったく、いい歳して騒々しい子ね」
隣の部屋で聞いていた美都子が鷹雄の元にやって来た。
「摂子摂子って、親子で本当に馬鹿みたいに」
クスクスと馬鹿にするように美都子は笑う。
「なかなか私とあなたが離婚しないもんだから、痺れを切らしてまたあなたの前から消えるなんて、摂子もとんだ構ってチャンねぇ」
「何が言いたい?」
「昔、家を飛び出した時だって、本当は死ぬ気なんて無かったわけでしょ?鷹雄に引き留めてもらいたくて、わざと家を飛び出して、それに鷹雄はまんまと引っかかったじゃない」
摂子が橋の欄干から飛び降りて死のうとした事も、その場を見てもいなかったのに、鷹雄の気を引く行為だったと美都子は言う。
「本当にお前は何もしてないんだな?」
摂子がいなくなった時に、1番に美都子の事を疑ったが、再び鷹雄は尋ねる。
「前にも言ったけど、私は本当に何もしていないわよ。こっちだって変に疑われて迷惑だわ」
摂子がいなくなった事で散々責められたが、それでも美都子は鷹雄を嫌いにはなれない。
それよりも、このままずっと摂子が見つからない事を心の中で願った。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
傘がない(鳴かない杜鵑 spin off1)
五嶋樒榴
恋愛
※こちらは全てフィクションです。実際の事件、人物や団体等を特定してはおりません。犯罪を助長するものでもありません。事実に反する記述もありますが、創作上の演出とご理解ください。
性的表現は思わせぶりには伏せていますが、かなり過激に書いています。暴力的な場面も多々あるので、そう言ったものが苦手な方は読まないでください。
3人の男達のオムニバスストーリー
雨の日にナンパした女は、夏前の雨の香りだった。
一晩だけのアバンチュール。
この雨が降っていなければ……………。
伊丹悠介が出会った女は、ひとときだけの泡沫の夢。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
雨の日に言葉を交わした少年は、とても美しかった。
真っ直ぐに信じてくれる瞳には孤独な影が見えた。
この雨が降っていなければ……………。
恵比寿工が出会った少年は、純真無垢なガラス細工。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
雨の日に大切な仲間が死んで、大切な存在が腕の中にやって来た。
この世界、いつ死んだっておかしくない。そう覚悟はしていたはずだ。
この雨が降っていなければ………………。
五島甫が愛した女は、未来へ続く幸せな希望。
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる