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シチ

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しかしそれからひと月後、突然摂子が鷹雄の前から姿を消した。
何があったのか鷹雄は全くわからず行方を探すも、不思議なほど何も手がかりはなく、しかも、摂子が事件に巻き込まれる可能性は全く見当がつかない。
もし鷹雄を貶める手段で摂子に何かあったのなら、直ぐにそれなりのアクションがあっても不思議がない。
それすらも何もなく、ただ忽然と摂子は鷹雄の前から消えたのだった。
真一も摂子を心配して、独自で行方を探してはみるも限界があり、仕方なくいつもはあまり足を踏み入れない母家の鷹雄の元にやって来た。

「父さん!一体摂子さんに何したんだよ!」

真一が怒りに任せて鷹雄の胸ぐらを掴んで問い詰める。

「俺が知るかッ!」
  
鷹雄は真一を自分から引き離した。

「知らないわけないだろッ!どうせ美都子さんが裏で何かしたんじゃないのか?なんであんたは女にだらしないんだよ!」

真一の言葉に鷹雄はカッとして真一の頬を打った。

「何すんだよ!」

「やかましいわッ!お前こそ、摂子の部屋に入り浸っていたくせに、摂子の事何も見えてなかったじゃねーか!偉そうな口叩くんじゃねぇ!」

確かに、摂子の異変を真一も何も感じていなかった。
部屋へ行けばいつも通り接してくれて、普段通りおかしな事は何も無かった。

「……それでも、父さんまで摂子さんの異変に気づかないなんておかしいだろ!結局父さんの摂子さんへの愛情なんてそんなもんかよッ!」

これ以上鷹雄に聞いても無駄だと分かり、真一はカッカしながら離れへ帰って行く。

「まーったく、いい歳して騒々しい子ね」

隣の部屋で聞いていた美都子が鷹雄の元にやって来た。

「摂子摂子って、親子で本当に馬鹿みたいに」

クスクスと馬鹿にするように美都子は笑う。

「なかなか私とあなたが離婚しないもんだから、痺れを切らしてまたあなたの前から消えるなんて、摂子もとんだ構ってチャンねぇ」

「何が言いたい?」

「昔、家を飛び出した時だって、本当は死ぬ気なんて無かったわけでしょ?鷹雄に引き留めてもらいたくて、わざと家を飛び出して、それに鷹雄はまんまと引っかかったじゃない」

摂子が橋の欄干から飛び降りて死のうとした事も、その場を見てもいなかったのに、鷹雄の気を引く行為だったと美都子は言う。

「本当にお前は何もしてないんだな?」

摂子がいなくなった時に、1番に美都子の事を疑ったが、再び鷹雄は尋ねる。

「前にも言ったけど、私は本当に何もしていないわよ。こっちだって変に疑われて迷惑だわ」

摂子がいなくなった事で散々責められたが、それでも美都子は鷹雄を嫌いにはなれない。
それよりも、このままずっと摂子が見つからない事を心の中で願った。
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