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サン

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部屋にふたりになると鷹雄は美都子を見る。

「俺は美都子さんと結婚すると決めた。だが、美都子さんが真一の世話をする事はないです」

美都子は黙って鷹雄を見る。

「真一の世話は今まで通り、舎弟達と摂子に頼みますんで」

鷹雄の言葉に美都子は真っ赤になる。

「なんでせっちゃん?せっちゃんは関係ないじゃない!私が鷹雄の事も真一の世話もできるわ!」

美都子がムキになっていると鷹雄には分かっている。
摂子から全てを取り上げたいのだと。

「なら、結婚はなしにしましょう。美都子さんが真一の世話を焼いたら、いずれ真一が辛くなる」

「どう言うこと!せっちゃんと離すと真一が可哀想ってこと?」

美都子はまだ摂子に拘る。鷹雄は首を振る。

「いずれ俺たちの間に子供ができれば、美都子さんは真一が可愛くなくなる」

鷹雄との子供と聞いて美都子は頬を染める。

「俺と美都子さんの子は、将来政龍組を継ぐ子だ。血の繋がりのない真一まで美都子さんが見ることはないです」

美都子はもう鷹雄との子供で頭がいっぱいになった。
元々真一の事も、鷹雄を繋ぎ止めるために面倒を見るつもりだった。

「俺は美都子さんの夫になる。だから、真一は今まで通りじゃいけませんかね」

こうまで言われて断る理由は美都子にはなかった。
真一を摂子に取られても、鷹雄の愛情は自分だけのものになると思えば、素直に鷹雄の言う事も聞けた。

「分かったわ。あー!早く鷹雄のお嫁さんになりたい!」

美都子が鷹雄に抱きつく。鷹雄も美都子を抱きしめる。

「オヤジが俺に組を持たせてくれることになりました。そっちが落ち着けば祝言の準備も出来ましょう」

抱きしめ返されて、美都子はドキドキしながらも幸せで堪らない。やっと鷹雄を手に入れることができたと安心した。

「分かったわ。私それまでちゃんと花嫁修行するわ。鷹雄にいっぱい愛されたい」

美都子は鷹雄の胸に顔を寄せて甘える。
鷹雄は美都子を落ち着かせることができて、これで摂子を守ることができると思った。
摂子の居場所だけは無くしたくない。
それは、鷹雄が摂子を手放せなかったからだった。
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