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サン

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鷹雄は部屋に戻ると、美都子が部屋にいて真一と積木をしていて驚く。
摂子が学校に行っている間は、真一はいつも舎弟達が世話をしていたからだった。
戸灘と話をしている間に舎弟に真一を任せていたが、その舎弟の姿はなぜかなかった。

「美都子さん?」

今まで一度も、美都子が真一の世話など焼いたことがなかったので鷹雄は戸惑う。

「お父さんとお話は終わったのね」

ニコニコと美都子は機嫌がいい。

「あ、ああ。なぜ美都子さんが真一の事を見ていたんだ?」

鷹雄はどかりと腰を下ろした。聞いてはみたが、理由はなんとなく察しはついていた。

「だって、私たち結婚するのでしょう?私が真一の母親になるのよ。今から慣れた方がいいと思って」

やはりそう言うことかと鷹雄も理解した。
美都子が摂子から真一を、唯一の楽しみを取り上げるつもりだと。

「…………そうだったんですか。確かに俺と美都子さんが結婚すれば、表向き、真一は美都子さんの子にもなる」

鷹雄が言うと美都子は笑顔で頷く。

「オヤジから、美都子さんとの結婚の話を聞いて、俺は承諾してきました」

「本当に?嬉しい!」

美都子が大喜びで積み木を手から離すと、積み上げていた積み木がガラガラと崩れた。

「あー!積み木、積み木!」

真一が騒ぐと、美都子は嫌な顔をして真一を見た。真一はその顔を見て、怯えたように困った顔をして鷹雄を見る。鷹雄はその光景にため息をついた。

「真一、隣の部屋に行っとけ。おーい、ヤス、真一を見ててくれんか?」

鷹雄が隣の部屋に向かって大声を上げると、ヤスと呼ばれた舎弟が鷹雄の部屋へやって来た。

「真一、こっちおいで」

真一はシュンとなって、積み木を抱えてヤスと隣の部屋に行った。
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