トライアングル

五嶋樒榴

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久利・バーでの夜

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行きつけのバーに入ると、俺はカウンターに近づいた。

「いらっしゃい、久利君」

ミステリアスな笑顔でマスターは言った。
なかなかのイケメンなのだが年齢不詳のマスター。
マスターは俺の前にコースターを置いた。

「今夜は何を?」

「今夜は大事な話があるので、とりあえずビールを」

またミステリアスな笑顔でマスターは冷蔵庫から瓶ビールを出して、一緒に出されたグラスに注いだ。

「大事な話というと、今夜はお一人じゃないんですね。女性かな?」

見透かされていて俺は笑った。

「いらっしいませ」

マスターの声で俺は入り口を見た。しほながやってきた。

「随分ステキなお店に呼んでくれたじゃない。いつもと違って急に不気味だわ」

笑いながらしほなは言う。

「お前が深刻そうだったからさ。飲まなきゃ話せないなんて台詞初めて聞いた」

俺が言うとびっくりしてしほなは俺を見る。

「意外だわ。そんな事言ってくれるなんて」

「何に致しますか?」

マスターがしほなの前にコースターを置いた。

「同じもので」

マスターは微笑んで頷いた。しほなは俺に「店もステキだけどマスターはもっとステキね」と耳打ちした。
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