トライアングル

五嶋樒榴

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久利・約束

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気がつくと茉莉花と会ってから、一度も二人とも食事を取っていなかった。
どんだけ自分は貪欲なのかと恥ずかしくなり、冷蔵庫を開けたが何も食料になるものは無かった。
外に出るのも億劫だったので、洗面所から茉莉花に声をかけ、ピザを取ることを告げた。

ネット注文をしようとスマホを見ると、今日の予定が表示され、俺はヤベッと画面を見つめた。
すっかり忘れていたが、今夜しほなの相談に乗ると約束していたんだった。
しほなとの約束を破る訳にもいかず、俺はシャワーを浴びて出てきた茉莉花に正直に話すことにした。

「茉莉花、前に話した事がある、しほなって俺の高校からの同級生を覚えてる?」

俺の問いにソファに並んで横に座っている茉莉花は、うん、と頷いた。

「茉莉花と付き合ってからは、たまたまだろうけどあいつから相談したいって連絡もなかったから、しほなと二人きりで会ってなかったのは信じて欲しい」

「相談したいって連絡があったの?」

茉莉花に聞かれて、俺は無言で頷いた。

「昨日の朝、連絡があってね。相当悩んでいる感じだったから、今夜話を聞いてあげる約束をしてしまった」

バツが悪そうに俺が言うと、茉莉花は俺の手を握った。

「あたし、しほなさんならいいよ。あたしと知り合う前からの大事な“友達”でしょ。正直二人の関係に嫉妬はしてるよ。あたしの知らない久利のこといっぱい知ってるし。でも、もう信じるって決めたから。だから会って話聞いてあげて」

俺は、キュッと茉莉花の手を握り返した。

「ありがとう」

俺が言うと茉莉花はにこやかに笑った。
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