54 / 127
久利・約束
3
しおりを挟む
気がつくと茉莉花と会ってから、一度も二人とも食事を取っていなかった。
どんだけ自分は貪欲なのかと恥ずかしくなり、冷蔵庫を開けたが何も食料になるものは無かった。
外に出るのも億劫だったので、洗面所から茉莉花に声をかけ、ピザを取ることを告げた。
ネット注文をしようとスマホを見ると、今日の予定が表示され、俺はヤベッと画面を見つめた。
すっかり忘れていたが、今夜しほなの相談に乗ると約束していたんだった。
しほなとの約束を破る訳にもいかず、俺はシャワーを浴びて出てきた茉莉花に正直に話すことにした。
「茉莉花、前に話した事がある、しほなって俺の高校からの同級生を覚えてる?」
俺の問いにソファに並んで横に座っている茉莉花は、うん、と頷いた。
「茉莉花と付き合ってからは、たまたまだろうけどあいつから相談したいって連絡もなかったから、しほなと二人きりで会ってなかったのは信じて欲しい」
「相談したいって連絡があったの?」
茉莉花に聞かれて、俺は無言で頷いた。
「昨日の朝、連絡があってね。相当悩んでいる感じだったから、今夜話を聞いてあげる約束をしてしまった」
バツが悪そうに俺が言うと、茉莉花は俺の手を握った。
「あたし、しほなさんならいいよ。あたしと知り合う前からの大事な“友達”でしょ。正直二人の関係に嫉妬はしてるよ。あたしの知らない久利のこといっぱい知ってるし。でも、もう信じるって決めたから。だから会って話聞いてあげて」
俺は、キュッと茉莉花の手を握り返した。
「ありがとう」
俺が言うと茉莉花はにこやかに笑った。
どんだけ自分は貪欲なのかと恥ずかしくなり、冷蔵庫を開けたが何も食料になるものは無かった。
外に出るのも億劫だったので、洗面所から茉莉花に声をかけ、ピザを取ることを告げた。
ネット注文をしようとスマホを見ると、今日の予定が表示され、俺はヤベッと画面を見つめた。
すっかり忘れていたが、今夜しほなの相談に乗ると約束していたんだった。
しほなとの約束を破る訳にもいかず、俺はシャワーを浴びて出てきた茉莉花に正直に話すことにした。
「茉莉花、前に話した事がある、しほなって俺の高校からの同級生を覚えてる?」
俺の問いにソファに並んで横に座っている茉莉花は、うん、と頷いた。
「茉莉花と付き合ってからは、たまたまだろうけどあいつから相談したいって連絡もなかったから、しほなと二人きりで会ってなかったのは信じて欲しい」
「相談したいって連絡があったの?」
茉莉花に聞かれて、俺は無言で頷いた。
「昨日の朝、連絡があってね。相当悩んでいる感じだったから、今夜話を聞いてあげる約束をしてしまった」
バツが悪そうに俺が言うと、茉莉花は俺の手を握った。
「あたし、しほなさんならいいよ。あたしと知り合う前からの大事な“友達”でしょ。正直二人の関係に嫉妬はしてるよ。あたしの知らない久利のこといっぱい知ってるし。でも、もう信じるって決めたから。だから会って話聞いてあげて」
俺は、キュッと茉莉花の手を握り返した。
「ありがとう」
俺が言うと茉莉花はにこやかに笑った。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説


お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

さあ 離婚しましょう、はじめましょう
美希みなみ
恋愛
約束の日、私は大好きな人と離婚した。
そして始まった新しい関係。
離婚……しましたよね?
なのに、どうしてそんなに私を気にかけてくれるの?
会社の同僚四人の恋物語です。

誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる