トライアングル

久利・接近

1

彼女に電話をすると、怖いほど素早く彼女は出た。
まるでずっとスマホを握りしめていたのかと思う程に。

『久利？』

彼女、茉莉花まりかの声が踊っている。
俺の声を、待って、待って、焦がれていたとでも言いそうな声だった。

『ずっと連絡しても、久利スルーしてばかりなんだもん！あたし、寂しくて泣いてたんだから！』

怒ってる風の甘えた可愛い声。
声だけ聞いていれば、可愛い彼女。
ただ、彼女の口から出てくる俺を責める言葉が無ければ。

「LIN読んだよ。また勝手に俺を浮気男にして何が楽しいの？俺は、浮気なんてしてないよ。もうマジうんざりだよ」

声のトーンを落とし、平静を装う。

「茉莉花は何を根拠に俺が浮気してるって思うの？」

俺が尋ねると、茉莉花はふふふと笑った。

『だって、あたしと会わなくなった。マンションも引っ越したし』

俺は苛立つ気持ちを抑えた。

「半年前から急に俺が浮気してるって騒ぎ出したよね。会わなくなったのは、2ヶ月前からだよ。それまで俺は、茉莉花にずっと会っていただろう？こっちが分からないよ。なんで半年前から俺を疑い始めたの？俺、何をしたの？」

もう、本当に分からなかった。

『あのね、半年前から久利変わったの』

茉莉花の可愛い声が冷たく俺の耳に突き刺さった。

「だから、それは、何度か話したじゃないか！茉莉花が変わったからだよ。茉莉花が俺を」

俺が最後まで言う前に茉莉花が声を被せてきた。

『だって、変わったのよ！キスが変わった！あたしの扱いが雑になった！ほかに好きな女ができたからでしょ！』

「ちょっと待ってくれよ。意味が分からない」

本当に意味が分からない。