僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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3人でとっても幸せすぎます。

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美峰のベッドで明星は目が覚めると、いつもと景色が違って少し戸惑った。
目がはっきり覚めてくると美峰の部屋だと実感して来た。

「おはよう、明星君」

直ぐ横で美峰が微笑んでいて明星も嬉しくなって微笑んだ。

「おはよう、美峰君!あっという間に朝になっちゃった」

少し残念そうに明星は言う。
本当はもっと夜更かしをしたいと思っていた。優星のことも気になった。

「にーちゃんから何か連絡あった?」

探るように明星は尋ねる。

「昨日の夜少しだけね。ちゃんと明星君が良い子だった報告はしたよ」

明星は真っ赤になる。

「明星君がいないと寂しいから早く帰って来て欲しいって」

美峰が言うと明星はシュンとなる。

「明星君?」

「…………僕ね、にーちゃんがいなくなれば、今回のお泊まりも美峰君とふたりで楽しくて嬉しいって思ったの。でも、さっきからにーちゃんの顔ばっかり浮かぶの。美峰君がいるのに、にーちゃんがいないと寂しいの。にーちゃんが美峰君にデレデレするのがムカつくけど、3人が良いの」

明星は目に涙を浮かべ、美峰は明星をギュッと抱きしめた。
デレデレと言われた時は、ピクンと反応して笑って誤魔化してしまった。

「寂しいね。明星君が優星君を大好きだからだよ。いつもそばにいるのが普通だから、離れて初めて優星がどんなに明星君の大切な人か分かったんだね」

明星は美峰の腕の中で美峰の言葉を聞きながら何度も頷く。

「にーちゃんも美峰君も大事なんだよ。でも毎日一緒にいるにーちゃんはやっぱりちょっとだけ美峰君と違うの。でもふたりとも大好きで大事で、ずっとずっと一緒にいたいの」

明星の気持ちを優星に聞かせてあげたいと思った。
きっと優星には、面と向かっては恥ずかしがって言わないのが分かっているから。

「ねぇ朝ごはん、家に帰って食べようか!僕が家でフレンチトースト作るから」

美峰の提案に、明星は涙を拭ってとびっきりな笑顔になった。

「うん!にーちゃんも食べたがってたもんね!仕方ないから、にーちゃんにも食べさせてあげる!」

照れ隠しのように明星が言うと、美峰は急いで優星にその事を電話した。
優星は寝起きだったが、美峰からの電話で一気に目が覚めた。
美峰と明星は、明星のお泊り用のバッグとフレンチトーストの材料を持って、急いで優星が待つマンションに向かった。
インターホンを鳴らすと笑顔の優星が、玄関のドアを開けてふたりを出迎えた。

「ただいま」

明星が照れながら言う。優星は優しい瞳で明星を見つめる。

「お帰り」

優星が明星と美峰に嬉しそうに言う。

「ただいま」

美峰の笑顔に、優星は今すぐに抱きつきたかった。
大切なふたりが帰って来た事で優星もホッとした。

「フレンチトースト作るのふたりとも手伝ってよー!」

美峰が言うと、優星と明星は、えー!と言う。

「美峰がひとりで作ってよー」

「美峰君のフレンチトーストが食べたいー」

「もー!分かったよー。頑張る!」

3人の楽しそうな声が響き渡る。
これからも、幸せな時間を3人で過ごすマンションの玄関のドアは、静かにゆっくりと閉まったのだった。





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