僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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ふたりきりのデートは緊張なんです。

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優星は次の水曜日までが長くて仕方ない。
1分が過ぎるのまで長く感じる。
美峰の仕事で優星の支店を使う案件もしばらくなく、優星のマンションでしか会う機会も無くなっていた。

「葉山、来週の御笠」

御笠と聞いて優星は反応する。

「はい!御笠不動産販売の融資があるんですか?」

嬉しそうに優星が言うと、支店長はジッと優星を見る。

「あ、そっちの御笠じゃなくて、御笠地所レジデンスの方ね。マンションの契約がどんどん決まってるようで、お前もそっちの融資を手伝ってくれよ」

美峰が勤める御笠不動産販売と同じ系列の御笠地所レジデンスと聞いてガッカリしてしまった。

「……はぁい」

ついテンションの下がる返事をして、支店長に睨まれてしまう。
美峰も次の水曜日が楽しみなようで不安なようで、複雑な心境だった。 

「おーい、柊木。ちょっと」

久世に呼ばれて、美峰は久世のデスクに近寄る。

「何ですか?」

美峰が久世の前に立つと、久世は見合い写真と思しきものを差し出した。

「見て」

美峰は言われて開いてみる。
中身はやはり見合い写真。
振袖を着た、少しふっくらとした可愛らしい女性が写っている。

「これは?」

「俺の見合い写真。今度の土曜日休み取ってるじゃん。実はそれなのよ」

少しため息まじりに久世は言う。

「はぁ。なるほど。所長も38ですもんね」

さらりと美峰が言うと久世はフンと言う顔をする。

「どーやって断るか考えてるんだよ。それ持って来てんの俺の叔母さんなんだけどさ」

困り顔で久世は言う。

「この女性が好みじゃ無いなら、正直に断るしか無いですよね?」

美峰はそうとしか言えない。

「…………結婚する気がないんだよね、俺」

そう言って久世は美峰を見つめる。

「それなら見合い写真もらう前にちゃんと言わないと」

苦笑いをして美峰は言う。

「言ったさ!そしたら強硬手段にでやがった。お袋が無理矢理見合させるように仕向けたんだわ」

久世はヤレヤレとため息をつく。

「所長の見合い写真見たいー」

他の事務員達も面白がって群がる。久世は困った顔で写真をみんなに見せている。

「どうして所長は結婚する気がないんですか?」

美峰が尋ねると、久世は真っ赤になる。

「それはッ!…………色々あんだよ!」

好きな人がいるのかな?と美峰は思うと、大柄の熊みたいな久世が可愛く見えた。
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