僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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授業参観に誘ってもらいました。

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和室で明星がランドセルから連絡帳を出して、リビングのソファに座っている優星に渡した。

「授業参観とPTA総会のお知らせか」

優星は日時をチェックして、カレンダーに書き込む。

「この日はお弁当なんだね。家族と一緒に食べるのか。よし、金曜日におばあちゃんに多目に唐揚げ作ってもらうように頼まないとな」

優星は色々確認して準備を考える。
明星はモジモジして優星を見る。

「どうした?オシッコしたいなら早くトイレ行ってきな」

不思議そうな顔で優星が言うと明星は顔をブンブンと振る。

「オシッコじゃない!……………授業参観、美峰君、来てくれない?」

明星の言葉に優星はピタッと動きが止まった。

「柊木さん?えーと、それは無理なんじゃない?土曜日だし」

授業参観はゴールデンウィークが終わってすぐの土曜日だった。

「……………そっかぁ。美峰君にも見てもらいたかったな」

残念そうに寂しそうに明星は言う。

「授業参観は、おじいちゃんとおばあちゃんも来てくれるし、柊木さんまで来たらすごい人数になっちゃうよ」

優星は明星が寂しくないように言うが、明星にとっては人数の問題ではなく、美峰に来てもらうのが重要だった。

「……………早く水曜日にならないかな」

明星はそう言うと隣の和室に入って行った。
明星の後ろ姿を見て優星はため息をついた。

「明星、にーちゃんがダメ元で柊木さんに聞いてみるから、明星からおねだりはダメだよ。柊木さんを困らせないであげて」

明星は優星を見つめた。

「分かってる。美峰君を困らせない。僕、美峰君が大好きだから、美峰君を困らせないもん!」

優星は明星の言葉にズキッとした。


 大好きだから困らせない。


その言葉に、優星は落ち込む。
最近の優星の悩みはそれに尽きるのだった。
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