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好きって言うのが難しいんです。
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優星が美峰の髪に触れながら顔を近づけて、美峰は優星の目に釘付けになる。
「柊木さん、綺麗です。目も、唇も。全てが綺麗です」
優星の吐息が美峰にかかる。
少しビールの香りと、ミントのような爽やかな香り。
美峰は優星から目を離せない。
優星は静かに目を閉じて、美峰の唇に唇を重ねた。
美峰も静かに目を閉じた。
柔らかな感触をお互いに感じて、軽い口づけは終わった。
「……………葉山君」
恥ずかしくて、先に声を掛けたのは美峰だった。
「柊木さんに拒絶されなくて良かった」
ホッとしながら優星は笑う。
「俺、謝りません。柊木さんとキスした事、謝りたくない」
真剣な目で優星は言う。
謝ったら、自分のしたことを否定するようで嫌だった。
「ずっとあなたに憧れてた。ずっとあなたと親しくなりたいって思ってた。男だって分かってて、それだけでキスした俺はずるいですか?」
美峰はなんて答えて良いか分からない。
キスをした理由がなんなのか怖くて聞けない。
甘えたかったから。
憧れてたから。
親しくなりたかったから。
そのどの言葉にも、好きだからは含まれてない。
ただ人肌が恋しくて、キスがしたくなっただけかも知れない。
でもそれだけでキスをしてきたのなら、美峰の気持ちを知らないとは言え優星はずるいと思った。
「……………ずるいよ。僕の気持ちは、どうすれば良いの?」
優星は恥ずかしそうに笑って美峰をそっと抱きしめた。
「柊木さんの気持ち聞きたいです。キスして不快にさせたなら謝るけど」
また、ずるいと美峰は思った。美峰の気持ちを知らないくせに、スッと懐に入ってきて素直に甘えてくる。
キスも不快だなんて思っていない。嬉しいくらいだ。
でも怖くて言えない。
ずっと好きだったなんて言えない。
言って優星が離れていくのが怖い。
優星が望む、美峰の気持ちはどれが正解か分からない。
「不快じゃない。でも言いたくない。葉山君に嫌われたくない」
美峰が言うと、さらに優星はギュッと美峰を抱きしめる。
「言ってください。嫌じゃなかったなら。それに俺は柊木さんを嫌うことなんてないです。俺や明星に優しくしてくれた柊木さんを嫌うわけがない」
美峰はもどかしかった。
そこまで言ってくれるのに、美峰が欲しい言葉を優星は言ってくれない。
好きだと、言って欲しいのに。
「僕は、葉山君も明星君も大好きだよ。でも、キスされて、どうすれば良いの?」
それが精一杯だった。
本当は好きで好きで仕方ないのに。
自分がゲイで、ずっと優星を好きだったなんて言えない。
「……………明星と同じレベルで良いです。柊木さんが俺を少しでも好きでいてくれるなら、それで十分です。俺は正直、柊木さんに対してどうして良いか分からなくて。柊木さんに嫌われてないならそれで良いです」
優星の言葉をどう理解すれば良いのか分からない。優星も混乱しているのが分かっているから。
分かっているから、優星が自分をどう思っているのか、知りたいのに聞けない。
「……………明星君とは少し違う。キスされて嬉しいぐらい葉山君が好き」
もう、美峰は素直になった。
これ以上、優星との関係を拗らせたくない。
もし気持ち悪いと思われても、曖昧でも自分の気持ちを言葉にしたいと思った。
「その分だけ、明星君より大好き」
美峰の言葉に、優星はまた力を入れて美峰を抱きしめる。
「……………嬉しいです。俺、柊木さんが好きです」
美峰を抱き締めながら言う優星。やっと聞けた好きの言葉。
その好きが、どう言う好きかは美峰はもう聞けなかったが、お互いを抱き締め合い、身も心もほっこりと癒されていた。
「柊木さん、綺麗です。目も、唇も。全てが綺麗です」
優星の吐息が美峰にかかる。
少しビールの香りと、ミントのような爽やかな香り。
美峰は優星から目を離せない。
優星は静かに目を閉じて、美峰の唇に唇を重ねた。
美峰も静かに目を閉じた。
柔らかな感触をお互いに感じて、軽い口づけは終わった。
「……………葉山君」
恥ずかしくて、先に声を掛けたのは美峰だった。
「柊木さんに拒絶されなくて良かった」
ホッとしながら優星は笑う。
「俺、謝りません。柊木さんとキスした事、謝りたくない」
真剣な目で優星は言う。
謝ったら、自分のしたことを否定するようで嫌だった。
「ずっとあなたに憧れてた。ずっとあなたと親しくなりたいって思ってた。男だって分かってて、それだけでキスした俺はずるいですか?」
美峰はなんて答えて良いか分からない。
キスをした理由がなんなのか怖くて聞けない。
甘えたかったから。
憧れてたから。
親しくなりたかったから。
そのどの言葉にも、好きだからは含まれてない。
ただ人肌が恋しくて、キスがしたくなっただけかも知れない。
でもそれだけでキスをしてきたのなら、美峰の気持ちを知らないとは言え優星はずるいと思った。
「……………ずるいよ。僕の気持ちは、どうすれば良いの?」
優星は恥ずかしそうに笑って美峰をそっと抱きしめた。
「柊木さんの気持ち聞きたいです。キスして不快にさせたなら謝るけど」
また、ずるいと美峰は思った。美峰の気持ちを知らないくせに、スッと懐に入ってきて素直に甘えてくる。
キスも不快だなんて思っていない。嬉しいくらいだ。
でも怖くて言えない。
ずっと好きだったなんて言えない。
言って優星が離れていくのが怖い。
優星が望む、美峰の気持ちはどれが正解か分からない。
「不快じゃない。でも言いたくない。葉山君に嫌われたくない」
美峰が言うと、さらに優星はギュッと美峰を抱きしめる。
「言ってください。嫌じゃなかったなら。それに俺は柊木さんを嫌うことなんてないです。俺や明星に優しくしてくれた柊木さんを嫌うわけがない」
美峰はもどかしかった。
そこまで言ってくれるのに、美峰が欲しい言葉を優星は言ってくれない。
好きだと、言って欲しいのに。
「僕は、葉山君も明星君も大好きだよ。でも、キスされて、どうすれば良いの?」
それが精一杯だった。
本当は好きで好きで仕方ないのに。
自分がゲイで、ずっと優星を好きだったなんて言えない。
「……………明星と同じレベルで良いです。柊木さんが俺を少しでも好きでいてくれるなら、それで十分です。俺は正直、柊木さんに対してどうして良いか分からなくて。柊木さんに嫌われてないならそれで良いです」
優星の言葉をどう理解すれば良いのか分からない。優星も混乱しているのが分かっているから。
分かっているから、優星が自分をどう思っているのか、知りたいのに聞けない。
「……………明星君とは少し違う。キスされて嬉しいぐらい葉山君が好き」
もう、美峰は素直になった。
これ以上、優星との関係を拗らせたくない。
もし気持ち悪いと思われても、曖昧でも自分の気持ちを言葉にしたいと思った。
「その分だけ、明星君より大好き」
美峰の言葉に、優星はまた力を入れて美峰を抱きしめる。
「……………嬉しいです。俺、柊木さんが好きです」
美峰を抱き締めながら言う優星。やっと聞けた好きの言葉。
その好きが、どう言う好きかは美峰はもう聞けなかったが、お互いを抱き締め合い、身も心もほっこりと癒されていた。
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