僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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好きって言うのが難しいんです。

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明星が楽しみにしていた美峰とのお風呂タイム。
買い物もお風呂も美峰と明星がふたりで仲が良くて、優星はなぜか複雑だった。


 んー。
 なんかモヤモヤ?
 柊木さんに明星を取られた気がする?
 明星が柊木さんにベッタリなのが面白くない?
 明星が柊木さんに懐くことに嫉妬?
 ……………違うな。
 明星が柊木さんに甘えるのが羨ましいんだ。
 あはは。
 俺、何考えてんだ。


優星が悶々と考え込んでいると、明星と美峰がポカポカの顔でリビングに戻ってきた。

「先にお風呂使わせてもらってごめんね」

濡れた髪にタオルをかけて美峰が優星に言う。
同じ男だと言うのに、何となく艶があって優星はドキッとした。

「あ、いえ!それより、明星を入れてくれてありがとうございました」

「ううん。楽しかったよ」

美峰は嬉しそうに、明星の髪を拭きながらドライヤーで髪を乾かしてあげた。
明星もご機嫌で、美峰に大人しくドライヤーをかけてもらっている。

「葉山君もお風呂入って来てよ。明星君は大丈夫だから」

美峰にそう言ってもらって優星もお風呂に入ることにした。
明星の髪が乾くと、グラスに麦茶を入れて美峰とゴクゴク飲む。

「夕飯の後に食べたケーキ、最初に食べたケーキより美味しかったよ」

「プリンの乗っていたのだね。明星君はプリンが好きなんだね。動物園の帰りに食べたプリンも美味しいって嬉しそうだったし」

「うん!プリン好き!にーちゃんが作ってくれた事もあるんだよ」

お菓子まで作れると知り、ますます優星は凄いなと美峰は思った。

「美峰君、僕、眠くなって来ちゃった」

明星が眠そうな顔で言う。
時計はもう21時を過ぎていた。

「ちょっと待って、歯磨きしようね。歯ブラシを取ってこよう」

美峰と明星は洗面所に歯ブラシをとりに行った。美峰は、磨りガラスの向こうに優星がいると思うとドキドキして頬が熱くなる。
リビングに戻ると、明星が歯を磨くのを見守る。

「仕上げして」

いつも最後は優星が仕上げ磨きをしているようで、美峰も優しく丁寧に仕上げ磨きをしてあげた。明星は歯磨きが済むと口を濯ぎに行く。その後を美峰も続く。
先に明星が洗面所を出て、美峰が歯ブラシを洗おうとしたときだった。
裸の優星がバスルームから出てきて美峰は驚く。

「あ!あ!ごめん!」

美峰は慌てて優星に背を向けた。

「あ、いえ。大丈夫です。男同士だし」

美峰は震える手で歯ブラシを洗って元の場所に戻した。

「すみません、歯まで磨いてもらって」

濡れた体を拭きながら申し訳なさそうに優星は言う。

「あ、ん、うん。明星君、眠そうだったから」

美峰は声が震えてないか気になった。
この場から離れたいのに恥ずかしくて動けない。

「ん?向こうに戻りましょう」

優星は着替えが済んだようで先に洗面所を出た。
美峰は顔が熱くて仕方ない。
それを優星に見せられないので、歯を磨くフリをして洗面所で顔の火照りを冷ました。
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