僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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動物園で手を繋ぎました。

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園内の途中で軽食にと、フランクフルトを優星は買った。
フランクフルトを頬張りながら、ほっぺにケチャップをつける明星の頬を、優星はウエットティッシュで優しく拭き取った。
その姿に準備万端だなと美峰は感心する。
家族連れが多いのは覚悟の上だったが、象の時の様に、明星が他の家族の姿に過敏になってしまうのが、美峰はどうしても明星が可哀想に思えてしまう。
まだ両親に甘えたい年頃なのにと思うと、親代わりになって歳の離れた弟の面倒を見る優星がとても素敵に見えた。

「今日ね、美峰君が来てくれて本当に嬉しかったよ。にーちゃんと動物園来るのももちろん嬉しいんだけど、美峰君がいると、家族がいっぱいになったみたい」

満面の笑みで明星が言うと、美峰は胸がキュンとなった。

「明星君、ありがとう。明星君が大好きだよ」

美峰の温かい言葉に、明星は真っ赤になって照れる。

「僕も美峰君大好き!美峰君、少しだけママに似てるの!」

明星の言葉に美峰は目が点になった。

「あ、顔は全然似てないですよ!こら、明星、変なこと言わない!」

優星が注意をすると明星はシュンとなる。

「だって、ママと似てるもん。優しくて、笑った顔が可愛いところとか、良い匂いとか」

明星はそう言いながら、目に涙を溜め始めた。優星はギョッとして明星の頭を撫でる。
明星は3歳で母を亡くしているので、本当は母の記憶はほとんどない。写真でしか見たことがない。
それでも美峰に母性を感じて、理想の母を見ていたのだった。

「こ、こらッ!泣かないの!男の子だろ!」

焦りながら優星が明星をあやす。美峰はフッと笑って明星を優しく抱きしめた。

「泣かないで。大丈夫だよ」

美峰に優しく包まれて、明星が抱きついて静かに泣く。
優星はため息をつきながらその姿を見つめた。
しばらくして明星が落ち着いたのか美峰から顔を離した。

「早くライオン見たい」

明星の言葉に美峰も優星も笑った。
美峰はまた明星と手を繋ぎ、ライオンを見に向かう。
優星は笑いながらもふたりの後をついて歩いた。
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