僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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動物園で手を繋ぎました。

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美峰は今日のことが頭でいっぱいで、土曜日の仕事は正直少し上の空だった。


 何を着て行けば良いのかな。
 えーと、これが良いかな。


優星とふたりきりのデートのわけでもないのに、美峰は浮かれていて、着ていく洋服に悩んでいた。

 明星君も居るんだから、普通にしないと。
 今日の主役は明星君なんだから!

そう思いながらも、プライベートで優星と過ごせることが美峰は嬉しくてたまらない。
長袖Tシャツにジーパン、デニムジャケットを羽織って、美峰は待ち合わせ場所の上野の駅へと向かった。
駅の改札にもう優星と明星は待っていて、美峰はその姿に慌てた。

「ごめんね!待ったかい?」

美峰が恐縮していると、明星が美峰の手をキュッと握った。

「美峰君おそーい。来ないかと思ったよー」

明星に美峰君と呼ばれ、美峰はドキンとした。

「こら!柊木さんて言いなさい」

ちょっとムキになって優星は嗜める。

「だって、ひいらぎさんって言いにくいもん!美峰君で良いでしょ?」

真丸な可愛い目でじっと見ながら明星は美峰に言う。
自分が可愛いことを、ちゃんと分かっていてズルいなと美峰は微笑んだ。
こんなに可愛い顔で言われたらダメとも言えず、逆に明星に美峰君と呼ばれたかった。

「良いよ。明星君だけ特別ね」

美峰がそう言って明星に微笑むと、明星は大喜びになって優星は少しだけムッとした顔つきになった。

「なんだかなぁ。せっかく柊木さん誘ったのにいちゃんなのに、明星の態度が腹立つなぁ」

そう言いながらも優しい顔で優星も明星の手を握る。

「はしゃいで迷子になるなよ」

明星を真ん中に、3人は手を繋いで動物園の中に入った。
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