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二人は駅の近くのホテルのバーへと入ると、ソファ席に案内してもらった。
「俺があいつと知り合ったのは、あいつがうちの営業担当だったからなんです」
妙子が聞いたわけではないが遼一は語り始めた。
同性愛者だとカミングアウトしたことで、妙子にならなんでも話せると遼一は思った。
ただもう別れたとはいえ、元ライバルの話を聞くのは、正直妙子はモヤモヤした。
「気が合って飲みに行くうちに、俺が先に気持ちを打ち明けました。別に恋人になれなくても良かったんです。気持ちだけでも知って欲しかった」
遼一の言葉に妙子はズキッとする。妙子にはそんな勇気はない。
遼一を好きだと思っても、言葉に出して告白しようなんて思っていなかった。
ただ遠くからだけでも眺めていられれば、仕事で接点があるだけで幸せだし頑張れた。
「凄いです。その勇気、とても私には真似できない」
「いえ、辛かったんです。振り向いてもらえない相手を好きでいることが。気持ち悪いとバッサリふって欲しかった気持ちもあるんです。俺はずるいんです。なのに、あいつは俺を受け入れてくれた。信じられなかったけど恋人になれた」
嬉しそうに幸せそうに語る遼一に、妙子はずっと胸がズキズキする。
確かにフラれるのは怖い。しかも自分なんかが振り向いてもらえないのも分かっていた。
だから妙子は遼一に好きだと告白ができなかった。
「分かっていたんです。いつまでも関係を続けられないことぐらい。今までもそうでした。長くて2年。あいつとは1年半でした。あいつにとって俺はなんだったのか。愛情だったのか、好奇心だったのか。結局俺はいつも女性には勝てない」
本当に遼一の心は壊れているんだと妙子は思った。
すごく繊細で、とても弱くて脆い。
そんなに大好きで大切な愛する人が、自分の会社の人と結婚すると聞けば、誰かに慰めを求めてもおかしくないと思った。
「俺があいつと知り合ったのは、あいつがうちの営業担当だったからなんです」
妙子が聞いたわけではないが遼一は語り始めた。
同性愛者だとカミングアウトしたことで、妙子にならなんでも話せると遼一は思った。
ただもう別れたとはいえ、元ライバルの話を聞くのは、正直妙子はモヤモヤした。
「気が合って飲みに行くうちに、俺が先に気持ちを打ち明けました。別に恋人になれなくても良かったんです。気持ちだけでも知って欲しかった」
遼一の言葉に妙子はズキッとする。妙子にはそんな勇気はない。
遼一を好きだと思っても、言葉に出して告白しようなんて思っていなかった。
ただ遠くからだけでも眺めていられれば、仕事で接点があるだけで幸せだし頑張れた。
「凄いです。その勇気、とても私には真似できない」
「いえ、辛かったんです。振り向いてもらえない相手を好きでいることが。気持ち悪いとバッサリふって欲しかった気持ちもあるんです。俺はずるいんです。なのに、あいつは俺を受け入れてくれた。信じられなかったけど恋人になれた」
嬉しそうに幸せそうに語る遼一に、妙子はずっと胸がズキズキする。
確かにフラれるのは怖い。しかも自分なんかが振り向いてもらえないのも分かっていた。
だから妙子は遼一に好きだと告白ができなかった。
「分かっていたんです。いつまでも関係を続けられないことぐらい。今までもそうでした。長くて2年。あいつとは1年半でした。あいつにとって俺はなんだったのか。愛情だったのか、好奇心だったのか。結局俺はいつも女性には勝てない」
本当に遼一の心は壊れているんだと妙子は思った。
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そんなに大好きで大切な愛する人が、自分の会社の人と結婚すると聞けば、誰かに慰めを求めてもおかしくないと思った。
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