孤高の姫～逆転後宮～

初恋3

　身なりをすっかり整えた風雅が紗々羅の居室に現れた。
「陛下の朝餐を賜り光栄でございます。」
　風雅は、深くあたまこうべを垂れる。
　夜の親密さが全くなく、紗々羅は少し寂しい気持ちになった。
　それを隠すように、風雅をテラスに連れていく。
　テラスは、色とりどりの花が咲いてる庭を見れる位置にあり、今日は天気が良いのか鮮やかであった。
　二人の朝餐の席は真向かいに座る形ではなく、少しお互いが近い距離に座れるようになっていた。
　先に、紗々羅が座ると風雅も倣って座る。するとハルカとスイがそれぞれの主人の給仕をしようと近くに立った。
「先ほどは、紹介しなかったが、こちらがもう一人の侍女ハルカだ。」
　風雅はハルカの顔を見ると、顔半分の赤い痣にほんの少し目を大きくしたが、すぐに何でもない顔をして、『よろしくお願いします、侍女殿。』と挨拶した。
「よろしくお願いします、風雅様。」
　ハルカは深々と頭を下げる。
「そなたの侍従は一人か？」
「はい、スイと言います。後宮にはさまざまな役目を担う方がいらっしゃると聞いていましたので、一人にしました。」
　実際スイの仕事は、安曇家にいた時より少なくなっていた。
　一通りの挨拶が終わったと感じ、ハルカは朝餐の給仕を始めようとした。すると紗々羅は、「あとは、いい。皆下がれ。」
　と指示を出す。
　風雅との食事に侍女たちが居るのが、何だか嫌だったのだ。
「しかし、陛下…。」
　こんなことは初めてでハルカも戸惑う。
「侍女殿大丈夫です。私が給仕いたしましょう。」
　風雅に言われて、二人は下がっていった。