僕は超絶可愛いオメガだから

ぴの

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1年 秋〜冬

僕は悩みます

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 新学期になり、この学園では異例の転校生がクラスにやってきた。
「城之内 すばるです。事情があって、二学期から登校することになりました。仲良くしてくれたら、嬉しいです。」
 彼はオメガらしい美しい顔立ちをしているのに背は170センチのリョウくんと同じぐらいありそうだった。
 その背の高さが彼の美しさを際立たせている。それに上流階級の住人であることが分かる気品を漂わせていた。

 ま、まさかナオくんの言ってた親戚の方!!
 ナオくんは、僕との交際が城之内家の親戚に知られてしまったため、何かしら分家も含めた親戚が動き出すだろうと言っていた。
 だから、『何か気になることがあればどんな些細なことでも連絡してくれ』と言われている。

 動き早すぎ!!もしかして、その美貌でナオくんを僕から奪う気なの!?
「って思ってるでしょ?」
と、放課後、昴くんに一人でいる所を狙われて話しかけられ、色々探られた挙句、そう言われてしまう。
「う、うん…。」
「大丈夫だよ。だってあのオメガ嫌いの直哉様が認めたオメガだよ。僕が勝てる訳ないよ。」
「じゃあ、何のためにこの学園に来たの?」
「うーん、せめて愛人か妾にしてもらえないかなあって思って。」
「はあ??何言ってるの?そんなものナオくんが作るわけないでしょ!」
 僕はあまりにも突拍子もないことを聞いて、大きな声を出してしまう。
「そうかなぁ?天下の城之内家本家の跡取りだよ。愛人やら妾やらたくさん作ってもみーんな養えちゃうし、そもそも上級アルファの底なしの性欲を一人で受け止めるなんてできないと思うけど…。」
「なんか、話通じなさそう…。ナオくんのこと好きじゃないなら、そっとしておいてよ。」
「えーそんな訳いかないよー。高いお金払ってここにねじ込んでもらったんだから、直哉様の愛人は無理なら、せめて性欲処理相手ぐらいにならなきゃ。」
「な、なななな何言ってんの!?」
「それぐらいしか、オメガの僕なんて家に貢献できないし。」
「あのねー昴くん!!もう少し自分を大切にしなよ。どんなオメガも、相手がどんなにすごいアルファだろうが、性欲処理の道具になんかなる必要ないし、なっちゃダメなんだよ。」
もう!昴くんのおうちは、オメガに対してどんな扱いしてるんだよー。

「えーならオメガは何するのさー。君は可愛いけど、アルファに媚びる以外なにかできるの?」
うっ…それ言われると、今の僕には何もない。けど、
「何かできることがないか、ここでそれを一生懸命探すんだよ。僕は探している最中だけど、もう目標を見つけているオメガの友達もいるから参考にするといいよ。」
「うーん。」
 昴くんは、宇宙語を聞いたような顔になる。全く何も通じてないよね。
「なんか僕、昴くんが心配になるよ。ここは優秀で真面目なアルファが多いけど、あわよくばオメガを抱きたいって思っている奴の餌食になりそうだよ。」
「それは別にいいけど。発情期以外なら妊娠しないし、強力なネックガードもしてるから強制番契約もないし。」
「もう!なんでそーなの!?もっと昴くんだけを大事にしてくれる優しい人に出会うべきだよ。そのためには、そんな風に自分を粗末に扱っちゃダメ!」
「僕のことなのに、何で君がキーキー怒ってるのさー。だいたい、直哉様の話をしてたのに何で僕の貞操観念の話になるの?」
「まあ、そうなんだけど…。なんかえっと、ほんと心配で…。ここはさ、オメガが集まってるし、色んなオメガの友達作れば、少し考え変わるかもしれないよ。まずは愛人とか性欲処理とかは置いておいて、友達作って、オメガに対する皆んなの考えとか聞いた方がいいんじゃないかな?」
 とにかく僕から見たらかなーり偏っている価値観を少しは何とかしてあげたくなる。

「え?じゃあ、君が友達になってよ。僕かっこいい人より可愛い人が本当は好みなんだよねー。君みたいなすっごい可愛いオメガなら抱いてみてもいいなあ。」
「も、もう何言ってるの!?友達になりたいなら、そういう発言なしね!」
「仕方ないなあ。君とは友達になってみたいし、そのうち友達以上も希望だから、しばらくは大人しくする。」
 なんか変な風に着地してしまった気がする。
 僕は、混乱してリョウくんの部屋に駆け込むことにした。


「そいつすごいなあ。間近にそんな考えの奴がいるとは…。」
 昴くんとの会話をリョウくんに説明した。
「でしょ、もうびっくりだよ。」
「で、何でハルが狙われるようなそんな複雑なことになってるんだよ。」
「僕もわからない…。はじめはナオくん奪いに来た刺客だって思ってたのに、なんで…。」
「まあ、ハル可愛いからなあ。そんなハルに本気で心配されたら、なびくよな。」
「そんな簡単にはいかないでしょ。わざわざ転校してまで来てるんだから、その発言もカモフラージュかもしれない。とにかく僕は昴くんとは友達関係を築きつつ、ナオくんが奪われないようにしなきゃ。」
「大丈夫なんじゃね?ただ単に直哉のライバルが増えた気がするんだけど。」
「リョウくん、甘いよ。昴くん見たでしょ?どう思った?」
「んまあ、綺麗な奴って思ったよ。」
「でしょ、でしょ!その上、スタイル良いし、もしかするかもしれないじゃん!」
「けどさー、直哉って外見だけじゃ落とせないだろ。聞いてる限り、そいつってすごい愚かな感じするし、やっぱり大丈夫な気がする。」
「愚かって…。」
「そんなに気になるなら、直哉に電話すれば?」
「えっ、でも何て言えば、いいんだろう…。」
「普通に、『ナオくんを狙ってる綺麗な子がいるんだけど、ナオくんは僕だけのものだよね?』とか『僕のこと世界一好きだよね?』って聞けばいいんじゃね?」
 ってリョウくんは言いながら、にやにやしてる。
「もう!なにそれ!笑いながら言ってるとか完全に僕で遊んでるっ!ほんとに不安に思ってるのにぃ!部屋に帰る!」
「ぷはっ、はははっ!ごめん、ごめん。全く不安に思う所ないのに、悩ましい顔するからさー。」
 この真剣な思いは今のリョウくんには通じないらしい…。
「もう、今日のリョウくんだけには、付き合えない。おやすみなさい。」
「はいよ、おやすみ。ハルちゃーん、明日の朝には機嫌直してねー。」
 リョウくんは、ヒラヒラ手を振って怒り気味の僕を見送った。
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