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第一章
第1話 嫌な奴
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無名の言葉にその場に居た全員が絶句した。
これから共に頑張っていこうと言う場面のはずだが、無名には協力的な態度が一切見られなかった。
黒峰が声を掛けたのだが、無名の返事に真っ先に反応したのは茜だった。
「ちょっと何よその態度。せめてもう少し協力的な姿勢を見せたらどうなの?」
「何故ですか?僕はこれでもそれなりに何でも器用にこなせます。だから仲間だとか薄っぺらい友情みたいなものは必要ないと思ったのですが」
「……アンタ友達少なそうね。」
茜は無名の態度に嫌そうな表情を見せる。
突っぱねた言い方もそうだが、何よりもここにいる全員より自分は上手くやれるとそう言っているような気がしたからだ。
「協調性の無さを今どうこう言うつもりはないけど、俺達は一心同体じゃないか。だから多少は協力して貰えないか?確かに能力だけで言えば君の方が優れているかもしれないが、一人より五人で事に当たった方が安全だ。大体俺達はその魔国?とやらと戦う事になるんだから、未知のものには全員で当たった方がいい」
黒峰の言葉に茜は強く頷いた。
高校生の二人は大人の会話に混ざるべきか悩んでいるらしく、未だにだんまりを決め込んでいた。
「お待たせしました――あら?どうかされましたか?」
何とも言えない空気が漂っていた所に王女が顔を出した。
タイミングの悪い事この上ない。
とりあえず何もないと黒峰が伝えると、王女による詳細な話が始まった。
ここアルトバイゼン王国はあまり大きな国ではなく、過去にも何度か他国からの侵略行為はあったそうだ。
しかしその度に別世界から勇者を召喚し、何とか生き永らえてきた国である。
勇者を召喚できる魔法は誰でも使える訳ではなく、王家の血筋で尚且つ才能に恵まれなければ使えないらしい。
もちろん他国の高貴な血筋の者ならば勇者召喚を行えるそうだが、ラクティス王女のように5人も召喚する事は出来ない。
「私は特に召喚魔法に優れておりますので皆様を召喚出来たのです。他国の勇者はほぼ1人。多くても2人が限界です」
ラクティス王女が複数人の勇者を召喚出来るから大国から侵略を受けずに済んでいるとの事だった。
「そして皆様に倒して頂きたいのは魔国、世界の敵です」
魔国は魔族が集まって出来た国だそうで国を治める魔王を筆頭に様々な魔族がいる。
ただし魔王がトップではなく、あくまで魔神崇拝者の集まりであり、本当の頂点は魔神だそうだ。
「魔神……か。いよいよゲームの世界だな」
黒峰がボソッと呟くが、それは大いに同意できた。
魔神や魔族などという単語はゲームの中でしか聞く事のないものだ。
それらが実際に存在するとなれば多少ワクワクする気持ちも理解できた。
「協力するのはいいが俺達は戦う事なんてしなくてもいい世界で生きてきたんだ。だから戦い方とか分からないよ」
「皆様には指導者をお付けします。魔法の先生と近接戦闘の教師です」
ラクティス曰く、王国でも有数の魔法使いと騎士団長が僕らの教育を受け持ってくれるようだ。
あまり厳しくなければいいななどと呟く斎藤だったが、命のやり取りをするのだから厳しい方がこちらとしては有り難い。
緩く教育されてもいざとなれば後悔するのが目に見えている。
「それと皆様の能力を知る必要がありますので、こちらの水晶に手を置いて頂けませんか?」
ラクティスは侍従を呼ぶと拳大の水晶玉を持ってこさせた。
触れると能力が分かる仕様になっているそうで、まずは黒峰が触れた。
触れた瞬間水晶は白い光を放ち辺りを眩く照らした。
「黒峰拓斗さんは剣帝の勇者です。剣技に優れ近接戦闘で貴方の右に出る者は居ないでしょう」
「剣か。生憎剣道とかそういった類いの武道は経験がないんだけどな」
与えられる能力は必ずしもその人が得意とするものとは限らないようだ。
「次アタシ!あ!青っぽい光じゃん!」
「三嶋茜さんは空の勇者ですね。空を飛び回ったり物を浮かせたりととても有用な能力です」
「へー!空飛べるんだ!面白そー!」
アホっぽい喋り方かと思えば発言自体もバカ丸出しだった。
空を飛べた所で戦闘に役が立つとは思えない。
つまり、外れだ。
「斎藤大輝さんは爆炎の勇者です。火を操る事に長け、形あるものは全て灰に変えてしまう程の火力を出す事が出来る魔法寄りの能力です」
「よっしゃー!!火を操るとかめちゃくちゃカッコいいじゃん!」
斎藤は火属性の適正があると分かり飛び跳ねて喜んでいた。
恐らく魔国へと攻める際に一番役立つ能力だろう。
僕もせめてその程度の能力は欲しい所だ。
「朝日莉奈さんは最優の勇者です。癒す事に特化しており四肢欠損すらも治してしまえる能力ですね」
「私らしい……といえば私らしいのかな?」
癒す事に特化している能力持ちがいたのは運が良かったのだろう。
戦闘に不慣れな彼らが傷つけばすぐさま出番がやってくる。
朝日は一番大変な役割かもしれないな。
「では最後に神無月さん。こちらに手を当てて下さい」
最後だからか全員の視線が集まる。
見られすぎるのもいい気はしないなと目を逸らすとソッと水晶に手を翳した。
「これは……!」
無名の時だけ真っ黒の光が水晶を染めていく。
黒だから闇属性とかそっち方面だろう。
「神無月無名さんは万能の勇者です。数百年に一度しか現れない希少な能力だと聞いています」
「その能力は何なんですか?」
「言葉通り万能な力を持っています。剣を持てば剣帝並みに動き、魔法を使えば賢者級の活躍を見せるでしょう。もちろん四肢欠損すら癒してしまう治癒魔法も扱えると、記録には残されています」
要はなんでも出来る1人勇者パーティーみたいなものである。
丁度いい、さっさと魔国とやらを倒し元の世界に帰るとしようと無名は心に決めた。
「そうですか。ありがとうございます」
侍従の持っていた冊子を見ながら説明してくれたラクティスに頭を下げお礼をする。
無名の畏まった姿に4人の勇者は目を見開いていた。
「何よ、アンタも礼くらい言えるのね」
「貴方とは違います」
「は?」
いちいち突っかかってくるのも煩わしいと無名が適当に返すと三嶋は青筋を立ててこちらを睨んできた。
「と、とにかく皆様素晴らしい能力をお持ちです!これならば魔国を相手に戦えるかと!」
「戦うのはいいけど俺達は人も殺した事がない善良な一般市民なんだ。本当に役に立つかは分からないよ」
「存じ上げております。貴方がたの世界では魔法という概念もなければ戦もあまりないと記録に残されておりますので」
「なに?じゃあ過去に召喚した勇者も俺達と同じ世界からやってきたのか?」
「はい、前回の召喚では確か日本という国から来たと」
これには5人共が驚いた。
過去の勇者も日本人だったようだ。
その勇者は元の世界に帰れたのだろうか。
「前の勇者はどうなったんだ?」
「……大変申し上げにくいのですが、戦死したと記録に残されております」
戦死か。
ここは死がすぐ隣にある世界だ。
おおよそ自分は死なないなどと高を括っていたのだろうと黒峰は自分を無理やり納得させた。
「戦死って……それっていつの話なんですか?」
朝日が不安そうな顔で尋ねると、ラクティスは冊子をペラペラとめくり始めた。
「えっと……ああ、ありました。120年前ですね。その頃は魔国ではなく他国の侵攻から国を守る為戦ったと書いてありますね」
魔国が出来たのは少なくとも100年以内という事。
魔国という目に見える脅威が現れたせいで今回120年ぶりに召喚したって所だろう。
しかし戦死という言葉に無名は嫌な想像が脳裏をよぎった。
元の世界に帰れたのかが知りたかったが、これでは本当に帰れるのか疑心暗鬼になる。
戦死というのも言葉を選んだだけで、実際は後ろから仲間に、なんて事もあり得るのではなかろうか。
説明が終わると各々個室を与えられ、明日に備える事となった。
無名は王城を見て回りたい気持ちもあったが勝手な真似をして目を付けられては面倒だと仕方なくベッドに横になる。
明日から本格的に訓練が始まるそうだし、魔法というものがどんなものなのか楽しみだなとほんの少しだけ無名の表情は明るくなっていた。
これから共に頑張っていこうと言う場面のはずだが、無名には協力的な態度が一切見られなかった。
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「何故ですか?僕はこれでもそれなりに何でも器用にこなせます。だから仲間だとか薄っぺらい友情みたいなものは必要ないと思ったのですが」
「……アンタ友達少なそうね。」
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何とも言えない空気が漂っていた所に王女が顔を出した。
タイミングの悪い事この上ない。
とりあえず何もないと黒峰が伝えると、王女による詳細な話が始まった。
ここアルトバイゼン王国はあまり大きな国ではなく、過去にも何度か他国からの侵略行為はあったそうだ。
しかしその度に別世界から勇者を召喚し、何とか生き永らえてきた国である。
勇者を召喚できる魔法は誰でも使える訳ではなく、王家の血筋で尚且つ才能に恵まれなければ使えないらしい。
もちろん他国の高貴な血筋の者ならば勇者召喚を行えるそうだが、ラクティス王女のように5人も召喚する事は出来ない。
「私は特に召喚魔法に優れておりますので皆様を召喚出来たのです。他国の勇者はほぼ1人。多くても2人が限界です」
ラクティス王女が複数人の勇者を召喚出来るから大国から侵略を受けずに済んでいるとの事だった。
「そして皆様に倒して頂きたいのは魔国、世界の敵です」
魔国は魔族が集まって出来た国だそうで国を治める魔王を筆頭に様々な魔族がいる。
ただし魔王がトップではなく、あくまで魔神崇拝者の集まりであり、本当の頂点は魔神だそうだ。
「魔神……か。いよいよゲームの世界だな」
黒峰がボソッと呟くが、それは大いに同意できた。
魔神や魔族などという単語はゲームの中でしか聞く事のないものだ。
それらが実際に存在するとなれば多少ワクワクする気持ちも理解できた。
「協力するのはいいが俺達は戦う事なんてしなくてもいい世界で生きてきたんだ。だから戦い方とか分からないよ」
「皆様には指導者をお付けします。魔法の先生と近接戦闘の教師です」
ラクティス曰く、王国でも有数の魔法使いと騎士団長が僕らの教育を受け持ってくれるようだ。
あまり厳しくなければいいななどと呟く斎藤だったが、命のやり取りをするのだから厳しい方がこちらとしては有り難い。
緩く教育されてもいざとなれば後悔するのが目に見えている。
「それと皆様の能力を知る必要がありますので、こちらの水晶に手を置いて頂けませんか?」
ラクティスは侍従を呼ぶと拳大の水晶玉を持ってこさせた。
触れると能力が分かる仕様になっているそうで、まずは黒峰が触れた。
触れた瞬間水晶は白い光を放ち辺りを眩く照らした。
「黒峰拓斗さんは剣帝の勇者です。剣技に優れ近接戦闘で貴方の右に出る者は居ないでしょう」
「剣か。生憎剣道とかそういった類いの武道は経験がないんだけどな」
与えられる能力は必ずしもその人が得意とするものとは限らないようだ。
「次アタシ!あ!青っぽい光じゃん!」
「三嶋茜さんは空の勇者ですね。空を飛び回ったり物を浮かせたりととても有用な能力です」
「へー!空飛べるんだ!面白そー!」
アホっぽい喋り方かと思えば発言自体もバカ丸出しだった。
空を飛べた所で戦闘に役が立つとは思えない。
つまり、外れだ。
「斎藤大輝さんは爆炎の勇者です。火を操る事に長け、形あるものは全て灰に変えてしまう程の火力を出す事が出来る魔法寄りの能力です」
「よっしゃー!!火を操るとかめちゃくちゃカッコいいじゃん!」
斎藤は火属性の適正があると分かり飛び跳ねて喜んでいた。
恐らく魔国へと攻める際に一番役立つ能力だろう。
僕もせめてその程度の能力は欲しい所だ。
「朝日莉奈さんは最優の勇者です。癒す事に特化しており四肢欠損すらも治してしまえる能力ですね」
「私らしい……といえば私らしいのかな?」
癒す事に特化している能力持ちがいたのは運が良かったのだろう。
戦闘に不慣れな彼らが傷つけばすぐさま出番がやってくる。
朝日は一番大変な役割かもしれないな。
「では最後に神無月さん。こちらに手を当てて下さい」
最後だからか全員の視線が集まる。
見られすぎるのもいい気はしないなと目を逸らすとソッと水晶に手を翳した。
「これは……!」
無名の時だけ真っ黒の光が水晶を染めていく。
黒だから闇属性とかそっち方面だろう。
「神無月無名さんは万能の勇者です。数百年に一度しか現れない希少な能力だと聞いています」
「その能力は何なんですか?」
「言葉通り万能な力を持っています。剣を持てば剣帝並みに動き、魔法を使えば賢者級の活躍を見せるでしょう。もちろん四肢欠損すら癒してしまう治癒魔法も扱えると、記録には残されています」
要はなんでも出来る1人勇者パーティーみたいなものである。
丁度いい、さっさと魔国とやらを倒し元の世界に帰るとしようと無名は心に決めた。
「そうですか。ありがとうございます」
侍従の持っていた冊子を見ながら説明してくれたラクティスに頭を下げお礼をする。
無名の畏まった姿に4人の勇者は目を見開いていた。
「何よ、アンタも礼くらい言えるのね」
「貴方とは違います」
「は?」
いちいち突っかかってくるのも煩わしいと無名が適当に返すと三嶋は青筋を立ててこちらを睨んできた。
「と、とにかく皆様素晴らしい能力をお持ちです!これならば魔国を相手に戦えるかと!」
「戦うのはいいけど俺達は人も殺した事がない善良な一般市民なんだ。本当に役に立つかは分からないよ」
「存じ上げております。貴方がたの世界では魔法という概念もなければ戦もあまりないと記録に残されておりますので」
「なに?じゃあ過去に召喚した勇者も俺達と同じ世界からやってきたのか?」
「はい、前回の召喚では確か日本という国から来たと」
これには5人共が驚いた。
過去の勇者も日本人だったようだ。
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