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129.気づいたら朝だった

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私はモゾモゾと起き上がり、ボーッと窓際を眺めると、支度の整ったトキ殿下が、窓際の薔薇を眺めている

「おはよう。よく眠れたかい?」
私に気づいてトキ殿下が振り返る

昨日のことを思い出すと恥ずかしくて顔が見れません……
ちょっと一緒にいてくれるとかでいいんです
なんならちょっと手とか握ってくれたらそれで良いのに……あんな……沢山……

シーツを手繰り寄せて頭から被り、ベッドの中で小さく丸くなった
冷静になった今、恥ずかしすぎて穴があったら入りたい

すると、コンコンっと扉をノックする音と共にもう1人の来客が訪れた

「ん?どういう状況だ?」

カイリ殿下は私が繭のようにシーツにくるまってベッドにいる状況を見て、トキ殿下に聞いた

「ん~………二度寝?」

トキ殿下も状況を読み切れずに疑問符を掲げた

「噴水に向かうと聞いていたので迎えに来たのだが……。落ち着くまで待つか……」
「トキ。」
カイリ殿下はトキ殿下を呼ぶと、ドアの方へ歩いていく
「ラディア。頼めるかい?」
「かしこまりました」
こうして2人はラディアさんを残して部屋を出て行った

私はシーツからモソモソと顔を出した

「お目覚めですか?」
ラディアさんが手を貸してくれて、ベッドから降り、支度を整えた

「昨晩はお休みになれましたか?」

あわわわわわわ……

「あ。えっと。はい……」
よく眠れたんです
ちょっと思い起こすと恥ずかしいだけで

「私がおそばにいるだけでは苦しそうなご様子でしたので、やはり殿下をお呼びした方がよろしゅうございましたね」

いえいえ。ラディアさんでよかったです
私苦しくありません!!

なんでトキ殿下は来てくれたんだろう
ダリア様がいるんじゃ無いのか?
なんでそんなに私を気にかけてくれるんだろ……
わかんない。もう、よくわかんないよっ!!

私が悶々と考えていると、ラディアさんは心配そうにこちらを見て
「お加減がすぐれませんか?」
と聞いてくる

「いえっ!そんなんじゃないんです!!」
そんなに体調悪そうに見えるのかな
気をつけよ……
ってか、考えてること顔に出すぎなのかな?
自分じゃぜんぜんわかんない

「ご無理はなさらないでくださいね」
ラディアさんは私の手を両手で包むように持ち、真剣な眼差しで私を見つめる

そんなに心配しなくてもって思ったけど、ラディアさんには第4都市でぶっ倒れてるところを運んでもらってるし、私がフラフラ徘徊しないように教会に配属されたって考えたら、そりゃまぁちょっと普通じゃない感じしますよね……

「ご迷惑を……おかけしてます」
私はラディアさんに申し訳なくて謝った

「そんなことおっしゃらないでください。」
そう言って、ラディアさんは跪いて、私の手をとった
「みさき様をお守りするために、私がおります。気になることは何でも仰ってください」

改まって言われると、なんかドキドキする
流石。騎士だ

「ご準備が出来たら参りましょう」

ラディアさんは、再度立ち上がり、二人の待つ別室へ向かった
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