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102.蕾

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目が覚めると、体を起こそうにも、体が自由に動かなかった

左右を見ると、カイリ殿下とトキ殿下は私の手を握り、仲良く半分ずつ私を抱きしめる形で眠っている

かかか。顔が…近い……デス……

脳内に昨日の記憶が蘇る
恥ずかしすぎて逃げ出したい
が、2人のホールドから逃げ出すすべはなかった

私がモジモジしていると、2人は目を覚ました

「「おはよう」」
2人は耳元で挨拶を囁き、私の頬にキスをする

朝から糖度高めで、なすすべがなく固まった

2人は半身を起き上がらせると、手を握ったまま、私を見下ろす

「体どう?」
「起きれるか?」

2人は私の体を気遣い、体を起こしてくれた

体が軽い
心が軽い
満月の泉で浄化されたような体の気持ちよさに、私は両手をあげて伸びをした

カイリ殿下は私の頬に触れると、「大丈夫そうだな」と言って微笑んだ

「は…はぃ……っ」
昨日のことを思い起こすと恥ずかし過ぎて目が見れない
私は、隠れるようにシーツを手繰り寄せて、体を丸めて顔を伏せた

カイリ殿下はベッドを降り、自分のマントを手に取ると、肩からかけてくれる
そして、隣に座って私の頭をポンポンと撫でる
その手の優しさに、私はカイリ殿下に寄りかかった
殿下は少し驚いて手を止めたけど、片腕に私を抱き込んで、そのまま頭を撫で続けてくれる

今度はトキ殿下がベッドを降り、窓際に置いてある薔薇の植木に向かって歩みを進める

「これ、ライラから贈られた薔薇かい?」

ん?なんで分かるんだろう

「はい。そうです」

すると、トキ殿下は、そのバラの蕾を指でなぞり、私の方を向いた

「もうすぐ咲きそうだね?」

薔薇の蕾は、ほころび始め、先が花びらののようにヒラヒラとしはじめている

昨日までは先まできっちり閉じていて、咲く気配がなかったのに!!

つぼみの先から少し飛び出た花びらは、花びらの端が薄ピンクに色づいている

私が毎日話しかけた効果が、ここで現れたのか、はたまた別の理由なのか………

トキ殿下は、手にしているクリスタルを太陽と薔薇の間にかざす
クリスタルはプリズムの役割を果たし、光を反射して、虹色の光を薔薇に届けた

すると、薔薇の花びらが少し開いた気がした
花びらは光を反射してキラキラと輝いて見える

「不思議な薔薇……」

きっと、とても綺麗な花が咲くんだと思う
早く花開いた姿を見てみたい
そのためには、私はこれからも、毎日話しかけなければならない……のか……

「この薔薇はみさきの魔力に反応していそうだね」
トキ殿下は、クリスタルを私に渡しながらそう言った

私の手のひらにやっと収まるサイズのクリスタルは、ずっしりと重い

無機質で、冷たい……
そう思っていたんだけど

実際クリスタルに触れてみると、そうでもなかった

「このクリスタルはみさきの魔力の結晶石だ」

「私の……魔力??!」

「そう、君の魔力だよ」

私は再度クリスタルを見つめる
魔力というものが、そもそもどんなものか実感は無いけど、このクリスタルを使って魔法が使えたりするのだろうか?!

「今すぐに、そのクリスタルで魔法が使えるようになることもないと思うが、何かのきっかけにはなるかもしれない」
カイリ殿下は私の心を読んだかのように説明した

トキ殿下は私の隣に座って左手をとると、はめられている指輪に触れる
赤と紫の宝石が輝く指輪は、なんか安心感がある
「この指輪は、僕達の守護の魔法が込められた護符の役割をするものでもあるから、常に身につけておいて欲しい」
トキ殿下は私を見つめながらそう告げた

「は……い……」

2人はその返事を聞き届けると、支度を整えて、部屋の扉の前に立った

「それでは、また来る」

手を振りながら2人の背中を見送り、誰もいなくなった部屋を見渡す

どことなく広く感じる部屋の中で、太陽の光を反射して輝くクリスタルをぼーっと見つめていた
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