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56.霧の導き
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森を進むと、開けた場所に出た
「あっっ!!!」
そこは、私がよく知っている泉のあった場所だった
「どうした?」
トキ殿下が不思議そうに聞いてくる
「えーっと……どこから話したらいいのか分からないんですが……」
ここでカイリ殿下と出会ったんだ
馬を止めて、下ろしてもらうと、泉のあった場所に向かう
「ここに泉があったんです。私はこの泉で満月の日に浄化してたんですけど、水が無くなってしまって……」
「もしかして、カイリと出会ったのってここの泉かい?」
トキ殿下はカイリ殿下から話を聞いている感じだった。
「そうです」
「そうか。ここが……」
トキ殿下は辺りを見渡し、泉があった堀の中へ足を進めた
ちょうど中心あたりに着くと、手を地に着けて何やら探ってる様子
一体何してるんだろう?
しばらくすると、立ち上がり、私を手招いた
手招きに呼ばれた私はテクテクと、トキ殿下の元へ歩いていく
またここに来ることができるとは思ってなかった
空を見上げると、満月になりきらないちょっといびつな月がこちらを見下ろしている
「魔法陣の類は見当たらないね。呪術的な魔法具が使われてる訳でもない」
トキ殿下は周辺の何かを探っているようだった
「ここは泉だったんですが、カイリ殿下と出会った時に水が無くなってしまって……」
「何らかの魔法が使われた気配もないね。でも……」
トキ殿下は言いかけて私の腰に手を回すと、自分の方にスッと寄せ、辺りを少し見渡している
んんっ!?あの。。なんでしょう……
いきなり引き寄せられると、ドキドキしてしまう
「声が……聞こえる気がするんだけど……」
「えっ?!」
「幽霊的な何かですか?!」
怖くなって、そのままトキ殿下にしがみついた
「いや。そういうのでは無いと思うんだけど……」
そういうのじゃなかったらどーゆー系ですか!?!いや。だめだ!わたしダメなの!そーゆーの!!!
恥ずかしいとか、ドキドキするとか、そんなこと言ってられない。私はトキ殿下から離れないようにギュッと抱きついた
「ん?どうした?」
「ダメなんです。私……」
「何が?」
「幽霊とか、おばけとか、なんか見えない何かみたいなやつ。怖いんです……ダメなんです……」
なんでこんなに怖いと思うのかわからないけど、恐怖心が全身を覆っている
なんならちょっと震えてきた
すると、トキ殿下は私を抱き上げた
私は勢い余って首元に抱きついて、肩に顔を埋めた
「大丈夫、大丈夫。僕が居るから」
殿下は優しく声をかけてくれる
「離さないでくださいっ!!!」
私は懇願した
すると、トキ殿下はクスリと笑い、
「普段からこんな感じだといいんだけどね?」
と、私をからかいながら、泉の跡地を後にして、そのま私を馬にのせる
トキ殿下と体が離れて、さっきの恐怖心が再度私を襲う。震えが止まらない
殿下が馬にまたがると、私はぎゅっとその体に抱きついた
「おっと……!」
少し驚いた様子で私を見つめる視線を感じるけど、それより何より私はこの謎にまとわりつく恐怖心から逃れるために、抱きつく手に力を込める
トキ殿下は、羽織っていたローブの中に私を抱き入れると、片手で背中を撫で、耳元で
「大丈夫大丈夫」
と、囁いた
「ん~。僕はカイリみたいに器用じゃないから、魔力で上書きするにしても、直接するしかないんだけど……」
「このままなのと、僕とキスして楽になるのと、どっちがいい?」
という選択を迫ってきた
「んん~~……」
そんなん選べません!!
私はトキ殿下にくっついたままグリグリと頭を振る
「フフっ……どっち?」
そう言いながら、私の顔を上向きになぞり、顎にそっと手を添える
そして、何やらボソボソつぶやく
「口、開けて?」
言われるがまま口を控えめに開けると
「いい子だね」
と言ってその唇を私の口に重ねた
口から流れてくるトキ殿下の魔力に体が反応する
甘くて刺激的な甘美な魔力
「ぅ…ん……んっ………」
背中がゾクゾクする気持ちよさに身をよじる
その魔力で脳が痺れる
そして、殿下はペロッと唇を舐めて口を離した
「んっ……はァ……っ……」
その余韻に頭がボーッとする
さっきまでの震えは止まり、背中に触れる手が心地よい
私が落ち着いたのを確認してトキ殿下は、ゆっくりと馬を進めて、森を出た
「あっっ!!!」
そこは、私がよく知っている泉のあった場所だった
「どうした?」
トキ殿下が不思議そうに聞いてくる
「えーっと……どこから話したらいいのか分からないんですが……」
ここでカイリ殿下と出会ったんだ
馬を止めて、下ろしてもらうと、泉のあった場所に向かう
「ここに泉があったんです。私はこの泉で満月の日に浄化してたんですけど、水が無くなってしまって……」
「もしかして、カイリと出会ったのってここの泉かい?」
トキ殿下はカイリ殿下から話を聞いている感じだった。
「そうです」
「そうか。ここが……」
トキ殿下は辺りを見渡し、泉があった堀の中へ足を進めた
ちょうど中心あたりに着くと、手を地に着けて何やら探ってる様子
一体何してるんだろう?
しばらくすると、立ち上がり、私を手招いた
手招きに呼ばれた私はテクテクと、トキ殿下の元へ歩いていく
またここに来ることができるとは思ってなかった
空を見上げると、満月になりきらないちょっといびつな月がこちらを見下ろしている
「魔法陣の類は見当たらないね。呪術的な魔法具が使われてる訳でもない」
トキ殿下は周辺の何かを探っているようだった
「ここは泉だったんですが、カイリ殿下と出会った時に水が無くなってしまって……」
「何らかの魔法が使われた気配もないね。でも……」
トキ殿下は言いかけて私の腰に手を回すと、自分の方にスッと寄せ、辺りを少し見渡している
んんっ!?あの。。なんでしょう……
いきなり引き寄せられると、ドキドキしてしまう
「声が……聞こえる気がするんだけど……」
「えっ?!」
「幽霊的な何かですか?!」
怖くなって、そのままトキ殿下にしがみついた
「いや。そういうのでは無いと思うんだけど……」
そういうのじゃなかったらどーゆー系ですか!?!いや。だめだ!わたしダメなの!そーゆーの!!!
恥ずかしいとか、ドキドキするとか、そんなこと言ってられない。私はトキ殿下から離れないようにギュッと抱きついた
「ん?どうした?」
「ダメなんです。私……」
「何が?」
「幽霊とか、おばけとか、なんか見えない何かみたいなやつ。怖いんです……ダメなんです……」
なんでこんなに怖いと思うのかわからないけど、恐怖心が全身を覆っている
なんならちょっと震えてきた
すると、トキ殿下は私を抱き上げた
私は勢い余って首元に抱きついて、肩に顔を埋めた
「大丈夫、大丈夫。僕が居るから」
殿下は優しく声をかけてくれる
「離さないでくださいっ!!!」
私は懇願した
すると、トキ殿下はクスリと笑い、
「普段からこんな感じだといいんだけどね?」
と、私をからかいながら、泉の跡地を後にして、そのま私を馬にのせる
トキ殿下と体が離れて、さっきの恐怖心が再度私を襲う。震えが止まらない
殿下が馬にまたがると、私はぎゅっとその体に抱きついた
「おっと……!」
少し驚いた様子で私を見つめる視線を感じるけど、それより何より私はこの謎にまとわりつく恐怖心から逃れるために、抱きつく手に力を込める
トキ殿下は、羽織っていたローブの中に私を抱き入れると、片手で背中を撫で、耳元で
「大丈夫大丈夫」
と、囁いた
「ん~。僕はカイリみたいに器用じゃないから、魔力で上書きするにしても、直接するしかないんだけど……」
「このままなのと、僕とキスして楽になるのと、どっちがいい?」
という選択を迫ってきた
「んん~~……」
そんなん選べません!!
私はトキ殿下にくっついたままグリグリと頭を振る
「フフっ……どっち?」
そう言いながら、私の顔を上向きになぞり、顎にそっと手を添える
そして、何やらボソボソつぶやく
「口、開けて?」
言われるがまま口を控えめに開けると
「いい子だね」
と言ってその唇を私の口に重ねた
口から流れてくるトキ殿下の魔力に体が反応する
甘くて刺激的な甘美な魔力
「ぅ…ん……んっ………」
背中がゾクゾクする気持ちよさに身をよじる
その魔力で脳が痺れる
そして、殿下はペロッと唇を舐めて口を離した
「んっ……はァ……っ……」
その余韻に頭がボーッとする
さっきまでの震えは止まり、背中に触れる手が心地よい
私が落ち着いたのを確認してトキ殿下は、ゆっくりと馬を進めて、森を出た
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