56 / 174
56.霧の導き
しおりを挟む
森を進むと、開けた場所に出た
「あっっ!!!」
そこは、私がよく知っている泉のあった場所だった
「どうした?」
トキ殿下が不思議そうに聞いてくる
「えーっと……どこから話したらいいのか分からないんですが……」
ここでカイリ殿下と出会ったんだ
馬を止めて、下ろしてもらうと、泉のあった場所に向かう
「ここに泉があったんです。私はこの泉で満月の日に浄化してたんですけど、水が無くなってしまって……」
「もしかして、カイリと出会ったのってここの泉かい?」
トキ殿下はカイリ殿下から話を聞いている感じだった。
「そうです」
「そうか。ここが……」
トキ殿下は辺りを見渡し、泉があった堀の中へ足を進めた
ちょうど中心あたりに着くと、手を地に着けて何やら探ってる様子
一体何してるんだろう?
しばらくすると、立ち上がり、私を手招いた
手招きに呼ばれた私はテクテクと、トキ殿下の元へ歩いていく
またここに来ることができるとは思ってなかった
空を見上げると、満月になりきらないちょっといびつな月がこちらを見下ろしている
「魔法陣の類は見当たらないね。呪術的な魔法具が使われてる訳でもない」
トキ殿下は周辺の何かを探っているようだった
「ここは泉だったんですが、カイリ殿下と出会った時に水が無くなってしまって……」
「何らかの魔法が使われた気配もないね。でも……」
トキ殿下は言いかけて私の腰に手を回すと、自分の方にスッと寄せ、辺りを少し見渡している
んんっ!?あの。。なんでしょう……
いきなり引き寄せられると、ドキドキしてしまう
「声が……聞こえる気がするんだけど……」
「えっ?!」
「幽霊的な何かですか?!」
怖くなって、そのままトキ殿下にしがみついた
「いや。そういうのでは無いと思うんだけど……」
そういうのじゃなかったらどーゆー系ですか!?!いや。だめだ!わたしダメなの!そーゆーの!!!
恥ずかしいとか、ドキドキするとか、そんなこと言ってられない。私はトキ殿下から離れないようにギュッと抱きついた
「ん?どうした?」
「ダメなんです。私……」
「何が?」
「幽霊とか、おばけとか、なんか見えない何かみたいなやつ。怖いんです……ダメなんです……」
なんでこんなに怖いと思うのかわからないけど、恐怖心が全身を覆っている
なんならちょっと震えてきた
すると、トキ殿下は私を抱き上げた
私は勢い余って首元に抱きついて、肩に顔を埋めた
「大丈夫、大丈夫。僕が居るから」
殿下は優しく声をかけてくれる
「離さないでくださいっ!!!」
私は懇願した
すると、トキ殿下はクスリと笑い、
「普段からこんな感じだといいんだけどね?」
と、私をからかいながら、泉の跡地を後にして、そのま私を馬にのせる
トキ殿下と体が離れて、さっきの恐怖心が再度私を襲う。震えが止まらない
殿下が馬にまたがると、私はぎゅっとその体に抱きついた
「おっと……!」
少し驚いた様子で私を見つめる視線を感じるけど、それより何より私はこの謎にまとわりつく恐怖心から逃れるために、抱きつく手に力を込める
トキ殿下は、羽織っていたローブの中に私を抱き入れると、片手で背中を撫で、耳元で
「大丈夫大丈夫」
と、囁いた
「ん~。僕はカイリみたいに器用じゃないから、魔力で上書きするにしても、直接するしかないんだけど……」
「このままなのと、僕とキスして楽になるのと、どっちがいい?」
という選択を迫ってきた
「んん~~……」
そんなん選べません!!
私はトキ殿下にくっついたままグリグリと頭を振る
「フフっ……どっち?」
そう言いながら、私の顔を上向きになぞり、顎にそっと手を添える
そして、何やらボソボソつぶやく
「口、開けて?」
言われるがまま口を控えめに開けると
「いい子だね」
と言ってその唇を私の口に重ねた
口から流れてくるトキ殿下の魔力に体が反応する
甘くて刺激的な甘美な魔力
「ぅ…ん……んっ………」
背中がゾクゾクする気持ちよさに身をよじる
その魔力で脳が痺れる
そして、殿下はペロッと唇を舐めて口を離した
「んっ……はァ……っ……」
その余韻に頭がボーッとする
さっきまでの震えは止まり、背中に触れる手が心地よい
私が落ち着いたのを確認してトキ殿下は、ゆっくりと馬を進めて、森を出た
「あっっ!!!」
そこは、私がよく知っている泉のあった場所だった
「どうした?」
トキ殿下が不思議そうに聞いてくる
「えーっと……どこから話したらいいのか分からないんですが……」
ここでカイリ殿下と出会ったんだ
馬を止めて、下ろしてもらうと、泉のあった場所に向かう
「ここに泉があったんです。私はこの泉で満月の日に浄化してたんですけど、水が無くなってしまって……」
「もしかして、カイリと出会ったのってここの泉かい?」
トキ殿下はカイリ殿下から話を聞いている感じだった。
「そうです」
「そうか。ここが……」
トキ殿下は辺りを見渡し、泉があった堀の中へ足を進めた
ちょうど中心あたりに着くと、手を地に着けて何やら探ってる様子
一体何してるんだろう?
しばらくすると、立ち上がり、私を手招いた
手招きに呼ばれた私はテクテクと、トキ殿下の元へ歩いていく
またここに来ることができるとは思ってなかった
空を見上げると、満月になりきらないちょっといびつな月がこちらを見下ろしている
「魔法陣の類は見当たらないね。呪術的な魔法具が使われてる訳でもない」
トキ殿下は周辺の何かを探っているようだった
「ここは泉だったんですが、カイリ殿下と出会った時に水が無くなってしまって……」
「何らかの魔法が使われた気配もないね。でも……」
トキ殿下は言いかけて私の腰に手を回すと、自分の方にスッと寄せ、辺りを少し見渡している
んんっ!?あの。。なんでしょう……
いきなり引き寄せられると、ドキドキしてしまう
「声が……聞こえる気がするんだけど……」
「えっ?!」
「幽霊的な何かですか?!」
怖くなって、そのままトキ殿下にしがみついた
「いや。そういうのでは無いと思うんだけど……」
そういうのじゃなかったらどーゆー系ですか!?!いや。だめだ!わたしダメなの!そーゆーの!!!
恥ずかしいとか、ドキドキするとか、そんなこと言ってられない。私はトキ殿下から離れないようにギュッと抱きついた
「ん?どうした?」
「ダメなんです。私……」
「何が?」
「幽霊とか、おばけとか、なんか見えない何かみたいなやつ。怖いんです……ダメなんです……」
なんでこんなに怖いと思うのかわからないけど、恐怖心が全身を覆っている
なんならちょっと震えてきた
すると、トキ殿下は私を抱き上げた
私は勢い余って首元に抱きついて、肩に顔を埋めた
「大丈夫、大丈夫。僕が居るから」
殿下は優しく声をかけてくれる
「離さないでくださいっ!!!」
私は懇願した
すると、トキ殿下はクスリと笑い、
「普段からこんな感じだといいんだけどね?」
と、私をからかいながら、泉の跡地を後にして、そのま私を馬にのせる
トキ殿下と体が離れて、さっきの恐怖心が再度私を襲う。震えが止まらない
殿下が馬にまたがると、私はぎゅっとその体に抱きついた
「おっと……!」
少し驚いた様子で私を見つめる視線を感じるけど、それより何より私はこの謎にまとわりつく恐怖心から逃れるために、抱きつく手に力を込める
トキ殿下は、羽織っていたローブの中に私を抱き入れると、片手で背中を撫で、耳元で
「大丈夫大丈夫」
と、囁いた
「ん~。僕はカイリみたいに器用じゃないから、魔力で上書きするにしても、直接するしかないんだけど……」
「このままなのと、僕とキスして楽になるのと、どっちがいい?」
という選択を迫ってきた
「んん~~……」
そんなん選べません!!
私はトキ殿下にくっついたままグリグリと頭を振る
「フフっ……どっち?」
そう言いながら、私の顔を上向きになぞり、顎にそっと手を添える
そして、何やらボソボソつぶやく
「口、開けて?」
言われるがまま口を控えめに開けると
「いい子だね」
と言ってその唇を私の口に重ねた
口から流れてくるトキ殿下の魔力に体が反応する
甘くて刺激的な甘美な魔力
「ぅ…ん……んっ………」
背中がゾクゾクする気持ちよさに身をよじる
その魔力で脳が痺れる
そして、殿下はペロッと唇を舐めて口を離した
「んっ……はァ……っ……」
その余韻に頭がボーッとする
さっきまでの震えは止まり、背中に触れる手が心地よい
私が落ち着いたのを確認してトキ殿下は、ゆっくりと馬を進めて、森を出た
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。

溺れかけた筆頭魔術師様をお助けしましたが、堅実な人魚姫なんです、私は。
氷雨そら
恋愛
転生したら人魚姫だったので、海の泡になるのを全力で避けます。
それなのに、成人の日、海面に浮かんだ私は、明らかに高貴な王子様っぽい人を助けてしまいました。
「恋になんて落ちてない。関わらなければ大丈夫!」
それなのに、筆頭魔術師と名乗るその人が、海の中まで追いかけてきて溺愛してくるのですが?
人魚姫と筆頭魔術師の必然の出会いから始まるファンタジーラブストーリー。
小説家になろうにも投稿しています。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる