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54.トキ殿下とお出かけ
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朝日が眩しくて目が覚めた
咲く気配がないバラのつぼみが窓の外を眺めている
何か夢を見た気がした
ん~~でも、覚えてないや
夢ってそういうものだよね
体を起こして伸びをすると、エリちゃんが支度の手伝いに入ってきた
「おはようございます。みさき様」
「おはよう。エリちゃん」
「本日はトキ殿下とお出かけのご予定がございますので、聖堂にてご挨拶の後、お召替えのお手伝いを仰せつかってございます」
本日の予定を丁寧に述べると、テキパキと私の身支度を整えてくれる
そして、聖堂の挨拶に向かう
今日もクリスタルは陽光を浴びてキラキラ輝いていた
反射した光は辺りを明るく照らし、聖堂内はクリスタルの光で満ちている
今まではただ、綺麗だな~くらいに見ていたクリスタルが、最近はなんだかちょっと怖い
石なんだから冷たいのは当たり前なんだけど、どこか無機質な冷たさを感じてしまう
今日も聖堂には大勢の人々が足を運んでいる
祈ることで心が救われるのであれば好きなだけ祈って欲しい
さてと
仕事を終えると、支度をし直す
どこに行くか分からないと言われていたけど、エリちゃんに出された服は目立たない色のカジュアルなワンピースだった
一通りの準備ができると、トキ殿下が迎えに来た
殿下は飾り気のない上下にローブを羽織り、どこかお忍びで旅にでも出る装いだった
「さ。行こっか?」
そう言って手を差し出す
私は自然にその手を取った
トキ殿下は優しく微笑み、そのまま門の方へと進んでいく
門の前には馬がいて、その影から手網を握った人が姿をのぞかせると、スッと片足を折り、挨拶の姿勢をとって指示を待っていた
「ロイだ。私の側近として仕えることとなっていてね。これからも会うことがあるだろうから」
そう言ってロイさんを紹介してくれた
「お久しゅうございます。みさき様。トキ様のお側仕えをさせて頂いております。ロイと申します」
そう言って立ち上がり、馬の手網をトキ殿下に渡した
あ。もしかして、この馬に乗って出かけるんです?!
どこへ?!
トキ殿下は慣れた所作で馬に乗ると、私に手を差し出してくる
あーー。やっぱりそうですよね……
馬の乗り方なんて、分からないんです
「あ。そっか」
そう言ってトキ殿下は、私に向かって指でクルクル丸を描いた
満月の泉から帰る時にカイリ殿下にも馬に乗せられたのを思い出す
私の体はフワリと浮き、そのままトキ殿下の手中に収まった
私は自然と、トキ殿下に控えめに抱きついた
この後、馬が動けば、とっさに抱きつくことになるのは経験済みだ
「ん?怖い?」
トキ殿下は少し驚いた様子で、手中に収めた私の頭をポンポンとあやす様に軽く撫でる
「いいえ。大丈夫です」
すると、トキ殿下は片手で私を支えて、もう片方の手で手網を握った
「では行ってくる。何かあったら遣いを飛ばす」
ロイさんに短く告げると、馬がゆっくり歩き出した
「行ってらっしゃいませ」
ロイさんはお見送りの姿勢で、トキ殿下を送り出した
咲く気配がないバラのつぼみが窓の外を眺めている
何か夢を見た気がした
ん~~でも、覚えてないや
夢ってそういうものだよね
体を起こして伸びをすると、エリちゃんが支度の手伝いに入ってきた
「おはようございます。みさき様」
「おはよう。エリちゃん」
「本日はトキ殿下とお出かけのご予定がございますので、聖堂にてご挨拶の後、お召替えのお手伝いを仰せつかってございます」
本日の予定を丁寧に述べると、テキパキと私の身支度を整えてくれる
そして、聖堂の挨拶に向かう
今日もクリスタルは陽光を浴びてキラキラ輝いていた
反射した光は辺りを明るく照らし、聖堂内はクリスタルの光で満ちている
今まではただ、綺麗だな~くらいに見ていたクリスタルが、最近はなんだかちょっと怖い
石なんだから冷たいのは当たり前なんだけど、どこか無機質な冷たさを感じてしまう
今日も聖堂には大勢の人々が足を運んでいる
祈ることで心が救われるのであれば好きなだけ祈って欲しい
さてと
仕事を終えると、支度をし直す
どこに行くか分からないと言われていたけど、エリちゃんに出された服は目立たない色のカジュアルなワンピースだった
一通りの準備ができると、トキ殿下が迎えに来た
殿下は飾り気のない上下にローブを羽織り、どこかお忍びで旅にでも出る装いだった
「さ。行こっか?」
そう言って手を差し出す
私は自然にその手を取った
トキ殿下は優しく微笑み、そのまま門の方へと進んでいく
門の前には馬がいて、その影から手網を握った人が姿をのぞかせると、スッと片足を折り、挨拶の姿勢をとって指示を待っていた
「ロイだ。私の側近として仕えることとなっていてね。これからも会うことがあるだろうから」
そう言ってロイさんを紹介してくれた
「お久しゅうございます。みさき様。トキ様のお側仕えをさせて頂いております。ロイと申します」
そう言って立ち上がり、馬の手網をトキ殿下に渡した
あ。もしかして、この馬に乗って出かけるんです?!
どこへ?!
トキ殿下は慣れた所作で馬に乗ると、私に手を差し出してくる
あーー。やっぱりそうですよね……
馬の乗り方なんて、分からないんです
「あ。そっか」
そう言ってトキ殿下は、私に向かって指でクルクル丸を描いた
満月の泉から帰る時にカイリ殿下にも馬に乗せられたのを思い出す
私の体はフワリと浮き、そのままトキ殿下の手中に収まった
私は自然と、トキ殿下に控えめに抱きついた
この後、馬が動けば、とっさに抱きつくことになるのは経験済みだ
「ん?怖い?」
トキ殿下は少し驚いた様子で、手中に収めた私の頭をポンポンとあやす様に軽く撫でる
「いいえ。大丈夫です」
すると、トキ殿下は片手で私を支えて、もう片方の手で手網を握った
「では行ってくる。何かあったら遣いを飛ばす」
ロイさんに短く告げると、馬がゆっくり歩き出した
「行ってらっしゃいませ」
ロイさんはお見送りの姿勢で、トキ殿下を送り出した
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