14 / 137
14.街の夜店
しおりを挟む
教会からは空間転移の魔法で、街の入口まで飛んだ
王都の中には主要箇所に転移用の魔法陣が敷かれていて、魔法で自由に移動できるらしい。使えるのは、もちろん一部の要人だけだ
夜の街の中を歩くのは初めてだ
そもそも外に出ること自体がほぼないので、期待と不安が入り交じっている
昔、お姉様と歩いた気がしないでもない…その辺の記憶は曖昧だ
記憶が薄らいでいるだけなのか、私がこの国に来てから今まで、一部だけポッカリあいた空白の記憶……
「体調はどうだ?」
「平気です。ありがとうございます」
夜の街は、夜店で賑わっていた
中心に進むと人混みもすごい
美味しそうな食べ物の店や、可愛い雑貨屋さん、アクセサリーのお店や、お洋服のお店…あちこちキョロキョロしながら歩いていると、人にぶつかり
「あっっ……すみません!」
人の流れに引かれる……
歩き慣れないので、向かいから来る人を上手く避けられない
「離れるな」
そう言って、手をグッと引かれ、懐に抱き寄せられる
「は……はい……」
返事がぎこちなくなるのは許して欲しい
ドキドキしてしまう……
「何か見たいものはあるか?」
「うーんと………」
私には全てが真新しくて、そもそも連れ出された身なので、目的がある訳ではなく…
「みさきはアクセサリーを身につけないのか?」
「はい。宝飾品に使われている鉱石は魔力の影響を受けやすいので、私には扱いが難しくって…」
「そうか…。確かに魔力の置換にも鉱石が一番相性がいい。」
「へぇ~。」
会話が終わった……。
こんな時、どんな話をすれば良いのか……
しばらくすると、夜店で賑わっている大通りの脇道を入ったところのお店に入った
カラーン
扉を開けると、取り付けてあるベルが音を鳴らす
「いらっしゃい」
店主らしき女性が声をかける
カイリ殿下はスタスタと細工の細やかなアクセサリーが沢山並んだ店内を見て回る
「どちらが良い?」
飾られたネックレスと、ピアスを眺めながら聞いてくる
「いえ。あの、どちらも………」
とてもきらびやかで、見ていてうっとりするような美しい細工が施されているが、結局私には縁のない品物だ
「本来は肌に触れているものが望ましいが…」
そう言って指輪をちらりと見やる
「あの…私何も…」
「好みはあるか?」
話はどんどん進んでいく
「いえ………」
「そうか」
短く告げると、店を出た
そのまま大通りの店を見て歩き、夜店通りの端に来る頃には、疲れてクタクタだった
カイリ陛下は私の様子をチラリと見ると、私の頬に触れた。冷たい手が優しく頬をなぞる
「そろそろ帰るか」
「……はい」
私の初めてのお出かけは無事終了した
王都の中には主要箇所に転移用の魔法陣が敷かれていて、魔法で自由に移動できるらしい。使えるのは、もちろん一部の要人だけだ
夜の街の中を歩くのは初めてだ
そもそも外に出ること自体がほぼないので、期待と不安が入り交じっている
昔、お姉様と歩いた気がしないでもない…その辺の記憶は曖昧だ
記憶が薄らいでいるだけなのか、私がこの国に来てから今まで、一部だけポッカリあいた空白の記憶……
「体調はどうだ?」
「平気です。ありがとうございます」
夜の街は、夜店で賑わっていた
中心に進むと人混みもすごい
美味しそうな食べ物の店や、可愛い雑貨屋さん、アクセサリーのお店や、お洋服のお店…あちこちキョロキョロしながら歩いていると、人にぶつかり
「あっっ……すみません!」
人の流れに引かれる……
歩き慣れないので、向かいから来る人を上手く避けられない
「離れるな」
そう言って、手をグッと引かれ、懐に抱き寄せられる
「は……はい……」
返事がぎこちなくなるのは許して欲しい
ドキドキしてしまう……
「何か見たいものはあるか?」
「うーんと………」
私には全てが真新しくて、そもそも連れ出された身なので、目的がある訳ではなく…
「みさきはアクセサリーを身につけないのか?」
「はい。宝飾品に使われている鉱石は魔力の影響を受けやすいので、私には扱いが難しくって…」
「そうか…。確かに魔力の置換にも鉱石が一番相性がいい。」
「へぇ~。」
会話が終わった……。
こんな時、どんな話をすれば良いのか……
しばらくすると、夜店で賑わっている大通りの脇道を入ったところのお店に入った
カラーン
扉を開けると、取り付けてあるベルが音を鳴らす
「いらっしゃい」
店主らしき女性が声をかける
カイリ殿下はスタスタと細工の細やかなアクセサリーが沢山並んだ店内を見て回る
「どちらが良い?」
飾られたネックレスと、ピアスを眺めながら聞いてくる
「いえ。あの、どちらも………」
とてもきらびやかで、見ていてうっとりするような美しい細工が施されているが、結局私には縁のない品物だ
「本来は肌に触れているものが望ましいが…」
そう言って指輪をちらりと見やる
「あの…私何も…」
「好みはあるか?」
話はどんどん進んでいく
「いえ………」
「そうか」
短く告げると、店を出た
そのまま大通りの店を見て歩き、夜店通りの端に来る頃には、疲れてクタクタだった
カイリ陛下は私の様子をチラリと見ると、私の頬に触れた。冷たい手が優しく頬をなぞる
「そろそろ帰るか」
「……はい」
私の初めてのお出かけは無事終了した
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる