5 / 17
5.帰れる!
しおりを挟む
「来た時もそうだったが、恐らく帰りもそうだろう」
馬を走らせながらカイリさんは呟いた
この森の出方を知らない私は黙って身を預けた。
そもそもここがどこにあるのかも知らないから、なされるかままにするしかない
(私…教会に帰れるんだろうか……このまま連れ去られる? のだろうか……)
「多分あれが出口だな」
向かう方向は少し明るくて、まだ夜が明けてないのに陽の光が眩しい!みたいに明るい
光に導かれるように、私たちは森を脱出した
------
「ここは…」
森から出たと思ったら、辺りは夜明け前の少し明るくなった夜空に、無数の星たちと満月が輝いている。
「教会から来たと言っていたが、どこの教会だ?」
この国にはいくつかの教会があり、各地にクリスタルが配置され、浄化を担っている
「えっと…山の上の…なんて言えばいいか…大きな教会です…」
教会の敷地から全然出ない私は、そもそもの自分の住んでる場所をうまく説明できない
「……そうか」
わかって貰えたのか貰えてないのか分からない返事が帰ってきて、なんかすいませんって思いつつ、少しすると大きな関所が現れた
「カイリ殿下!!!!」
門の中から、ものすごい形相で男の人が数名駆け寄ってきた
近くまで駆け寄ると跪き、手を胸元に当てて礼をとる
「森には私達は入れませんでした。ですので、ご指示通り、こちらにてお待ち申し上げておりました。」
カイリさんは馬から降りると、
「心配をかけたな」
と、一言声をかけた
私はその様子を呆然と眺めていた
(ん?殿下?)
(で…殿下って、殿下?)
もしかして、私、とてつもなくやばい状況なのでは?このカイリさんというお方、この国のエライ方なのでは??!
「して、この娘は一体…」
周りの視線がいっせいに私に向く
どどどと…どうしよう……
「森で縁あって助けた娘だ。」
「あの森の中にいたのですか!??」
「私もそれには驚いた。送ろうと思うのだが…教会から来たそうだが、場所が定かでは無い」
そう言って私を見た
すいません…ここからどうやって帰るかなんてさっぱり分かりません
「フェン」
カイリ殿下が呼びかけると、フェンと呼ばれた人が立ち上がり、私の元へ歩いてきた
すごいジロジロ見られている
不審者を尋問するようなオーラが出ている
(あ…この人ダメかも…)
私の体は穢れた魔力をクリスタルを通じて浄化しているけど、直接向けられる負の魔力にはめっぽう弱い
「大丈夫か?顔色がまだ良くないな」
そう言って私の腰に手を回し、手を取り支えてくれた
カイリ殿下に触れられた手がじんわり暖かくなり、少し体が楽になった
「フェン。その魔力をしまえ。負の魔力を外に振り撒くな」
「申し訳…ございません…」
「よい。それより場所を知りたい」
「かしこまりました」
ピシャリとたしなめられたフェンさんは、再度私に向き直り、
「どちらの教会でしょう?この国には無数の教会があります。主要6箇所にはクリスタルが配置された大きな教会が。他の小さな教会ですと、それぞれの都市に確認しないと把握しきれてはおりませんが…まずどこの都市でしょうか?」
「えっと…王都の山の上の大きな教会…です…」
「大きな、と言うと、そちらにはクリスタルがありますか?」
「あ。はい。あります!」
まるで、迷子の聞き取りをしてるかのような話の流れ…
「すると、話が早いですね。王都のクリスタルがある教会は1つです。あちらは『マリア』が守護する教会なので、教会の敷地も広く、使用人も何人か住んでいたはずです」
(あ。マリアと名乗れば早かったのかな?いや、でも…)
モヤモヤ考えていると、
「王都の中なら話は早い。近々『マリア』にも挨拶をしなければならないと思っていたところだ。」
そう言って、私の手を引き、門の中まで歩いていった。門に入ると、そのまま街に向かって歩くものだと思っていたら、人気のない脇道の木陰にある、意味深な柱の前に来た
「みさき。空間転移で近くまで連れて行くが、経験は?」
「それって…どんな魔法なんですか…」
(無知で申し訳ない…。だって、私、魔法のことさっぱり不勉強なんです…使えないので…。)
「なるほど。」
カイリ殿下は何を納得したのか分からないけど、私の腕を肩にかけ、おもむろに私を抱き上げた
「う!!うわぁぁっ!!!」
待って。だから。恥ずかしいです!!!
っと言うか、エライ人なんでしょ?この御方
私こんなことしてもらってやばすぎない?フェンさんって人の負の魔力が…
「お…下ろしてください…」
「ん?何故だ?危ないからやめておけ。落ちたら死ぬぞ」
「え?」
「大人しくつかまっていろ」
何が起こるのか怖くて、とっさにギュッとカイリ殿下を掴んだ︎
殿下は柱に手をかざすと、柱から魔法陣が浮き上がり、指で何か文字を書くような動きをし、そのまま柱に向かって進んで行った
「え!!」
柱に飲み込まれるのが怖くてとっさに目を閉じ、殿下の胸元に顔を埋めた
馬を走らせながらカイリさんは呟いた
この森の出方を知らない私は黙って身を預けた。
そもそもここがどこにあるのかも知らないから、なされるかままにするしかない
(私…教会に帰れるんだろうか……このまま連れ去られる? のだろうか……)
「多分あれが出口だな」
向かう方向は少し明るくて、まだ夜が明けてないのに陽の光が眩しい!みたいに明るい
光に導かれるように、私たちは森を脱出した
------
「ここは…」
森から出たと思ったら、辺りは夜明け前の少し明るくなった夜空に、無数の星たちと満月が輝いている。
「教会から来たと言っていたが、どこの教会だ?」
この国にはいくつかの教会があり、各地にクリスタルが配置され、浄化を担っている
「えっと…山の上の…なんて言えばいいか…大きな教会です…」
教会の敷地から全然出ない私は、そもそもの自分の住んでる場所をうまく説明できない
「……そうか」
わかって貰えたのか貰えてないのか分からない返事が帰ってきて、なんかすいませんって思いつつ、少しすると大きな関所が現れた
「カイリ殿下!!!!」
門の中から、ものすごい形相で男の人が数名駆け寄ってきた
近くまで駆け寄ると跪き、手を胸元に当てて礼をとる
「森には私達は入れませんでした。ですので、ご指示通り、こちらにてお待ち申し上げておりました。」
カイリさんは馬から降りると、
「心配をかけたな」
と、一言声をかけた
私はその様子を呆然と眺めていた
(ん?殿下?)
(で…殿下って、殿下?)
もしかして、私、とてつもなくやばい状況なのでは?このカイリさんというお方、この国のエライ方なのでは??!
「して、この娘は一体…」
周りの視線がいっせいに私に向く
どどどと…どうしよう……
「森で縁あって助けた娘だ。」
「あの森の中にいたのですか!??」
「私もそれには驚いた。送ろうと思うのだが…教会から来たそうだが、場所が定かでは無い」
そう言って私を見た
すいません…ここからどうやって帰るかなんてさっぱり分かりません
「フェン」
カイリ殿下が呼びかけると、フェンと呼ばれた人が立ち上がり、私の元へ歩いてきた
すごいジロジロ見られている
不審者を尋問するようなオーラが出ている
(あ…この人ダメかも…)
私の体は穢れた魔力をクリスタルを通じて浄化しているけど、直接向けられる負の魔力にはめっぽう弱い
「大丈夫か?顔色がまだ良くないな」
そう言って私の腰に手を回し、手を取り支えてくれた
カイリ殿下に触れられた手がじんわり暖かくなり、少し体が楽になった
「フェン。その魔力をしまえ。負の魔力を外に振り撒くな」
「申し訳…ございません…」
「よい。それより場所を知りたい」
「かしこまりました」
ピシャリとたしなめられたフェンさんは、再度私に向き直り、
「どちらの教会でしょう?この国には無数の教会があります。主要6箇所にはクリスタルが配置された大きな教会が。他の小さな教会ですと、それぞれの都市に確認しないと把握しきれてはおりませんが…まずどこの都市でしょうか?」
「えっと…王都の山の上の大きな教会…です…」
「大きな、と言うと、そちらにはクリスタルがありますか?」
「あ。はい。あります!」
まるで、迷子の聞き取りをしてるかのような話の流れ…
「すると、話が早いですね。王都のクリスタルがある教会は1つです。あちらは『マリア』が守護する教会なので、教会の敷地も広く、使用人も何人か住んでいたはずです」
(あ。マリアと名乗れば早かったのかな?いや、でも…)
モヤモヤ考えていると、
「王都の中なら話は早い。近々『マリア』にも挨拶をしなければならないと思っていたところだ。」
そう言って、私の手を引き、門の中まで歩いていった。門に入ると、そのまま街に向かって歩くものだと思っていたら、人気のない脇道の木陰にある、意味深な柱の前に来た
「みさき。空間転移で近くまで連れて行くが、経験は?」
「それって…どんな魔法なんですか…」
(無知で申し訳ない…。だって、私、魔法のことさっぱり不勉強なんです…使えないので…。)
「なるほど。」
カイリ殿下は何を納得したのか分からないけど、私の腕を肩にかけ、おもむろに私を抱き上げた
「う!!うわぁぁっ!!!」
待って。だから。恥ずかしいです!!!
っと言うか、エライ人なんでしょ?この御方
私こんなことしてもらってやばすぎない?フェンさんって人の負の魔力が…
「お…下ろしてください…」
「ん?何故だ?危ないからやめておけ。落ちたら死ぬぞ」
「え?」
「大人しくつかまっていろ」
何が起こるのか怖くて、とっさにギュッとカイリ殿下を掴んだ︎
殿下は柱に手をかざすと、柱から魔法陣が浮き上がり、指で何か文字を書くような動きをし、そのまま柱に向かって進んで行った
「え!!」
柱に飲み込まれるのが怖くてとっさに目を閉じ、殿下の胸元に顔を埋めた
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる