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見上げた青に永遠を誓って

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【倉長怜side】

様子見の序盤戦は誰も前に出ようとせず、天候のせいもあってスローペースだった。そのせいで脱落するチームがいつもより少なく、先頭集団が膨れ上がっていた。

そして山に入る頃、道幅が狭くなる前に良いポジションにつこうと各チームのポジション争いが激化した。

雨で路面が滑る悪条件が重なり、一台がスリップし後続が巻き込まれ落車事故が起きてしまったのだ。

もう少し早く仕掛けるべきだった。そしたら落車に巻き込まれずに済んだのかもしれない。

起きてしまったことはしょうがないが、山登りに強い唐沢がいないことはチームにとって非常にまずい。

後方の状態が分からないが、唐沢が落車を免れている可能性もある。それならば、一旦ペースを抑えて唐沢の合流を待つべきか。いや、それでは後半戦が苦しくなる。

だとすれば、唐沢抜きでこのまま山を登り王者についていくべきか。

ポーカーフェイスを装いながら、周りの様子をちらちらと窺う。

王者である古谷第一はみんな落車を免れたようだ。一方で京都清河原はふたり脱落。それでも、山に強いクライマーの選手が残っている。

うちは山を登れる唐沢がいないとなれば、牽くのは俺か、オールラウンダーの早瀬か。

あれこれとこれからのオーダーを考えてきたそのときだった。

「あんたのところのクライマー、さっきの落車事故に巻き込まれはったんやな。彼とは山岳賞を懸けて戦ってみたかったから残念やわ」

京都清河原のクライマーの選手が話しかけてきたことで、意識がそちらに動いた。

実力派の選手がマークするくらいに、唐沢の登坂力はすごいものがある。あいつだって山岳賞争いをしたかったに違いない。

胸にこみ上げてきた思いにギュッと下唇を噛んだ。

「あいつは……来るよ。絶対にここまで来る」

気付けば、そんな言葉が漏れ出ていた。

それは決してつよがりではない。

唐沢はああ見えてしぶといだ。だから俺は信じてる。

「彼のことを信じてるんやね。まぁ、健闘を祈ってるわ。でも、優勝するのはうちのチームや。ほな、お先に失礼します」

京都の選手はそう言ってチームを牽き出し、じりじりと俺らのチームを引き離し始めた。

遠くなる背中を見て、焦りが募っていく。
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