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見上げた青に永遠を誓って

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「めいいっぱい楽しんで一番高いところで笑おう」

隊列の一番後方にいる唐沢が声を掛けてきた。

「ああ。みんなでてっぺん取ろうな」

心は高揚しているが、浮足立っているわけではなく冷静だ。

平坦なコースが続く序盤。しっかり陣形を取り、作戦どおりに走りながら周りのチームの様子を窺う。

先頭集団。ここには絶対王者の古谷第一高校、そしてインターハイ常連の京都清河原高校と錚々たる面々がいる。

「怜は後ろで休んでて。ここは俺が牽く」

オールラウンダーである早瀬が隊列の一番前に立ち、チームの風よけとなってくれた。

インターハイのロードレースはチーム戦だ。設定されたコースには平坦な道だけではなく、山登りや山下りなどの難関コースも含まれている。

その時々に応じて臨機応変にそのコースを得意とする選手がチームを引っ張る。最後の勝負場面で万全の状態でチームのエースを送り出すために、その他のメンバーがローテーションしながらこうやってアシストしてくれるのだ。

自分を犠牲にしてでもエースを勝たせる。これほど仲間のありがたみを感じる競技は、他にはないのではないかと思う。

走り続けて二時間あまり。

山登りに入ろうとしていたところで頭上から雨が降り始めた。できれば山を越えるところまでこのままもってほしいところだったが、こればかりは自然相手だからしょうがない。

ひとまず作戦どおり、ここからは登りに強い唐沢に牽いてもらおう。

唐沢に前に出るように合図を送ろうとしたそのときだった。

ブレーキ音が耳に届き、反射的に後方を振り向いた。

ドスッという鈍い音やうめき声。
そして叫び声。ぶつかり合う金属音。

そこには目を疑いたくなる光景があった。

嘘だろう?
な、んで……。

次々とバランスを崩し自転車から落車する選手たちの姿が目に飛び込んできてハッと息を呑む。

「唐沢!」

最後尾にいたはずの唐沢の姿がないことに気が付いた。

唐沢のやつ、落車に巻き込まれたのか。

最悪のシナリオが頭を過り、顔が強張っていくのが分かった。
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