見上げた青に永遠を誓う~王子様はその瞳に甘く残酷な秘密を宿す~

結城ひなた

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見上げた青に翻弄されて

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そして、俺は再びこの場所へと戻ってきた。繰り返されたこの日も、今日で最期だ。

辺りに救急車のサイレンが響き渡り、亜美と俺は近くの総合病院へと搬送された。亜美が今、ガラス越しに集中治療室の中を見つめながら涙している。

〝……最善は尽くしましたが、容体がいつ急変してもおかしくない状況です。残念ですが、今晩が山場だと思います〟

医師にそう宣告されたことで俺の母親が力なく床に崩れ落ち、父親が母親の背中を摩る。その横で兄が悲痛な表情を浮かべている。

それを第三者であるかのように見つめるのは、体外離脱した俺の魂に他ならない。手を伸ばせば届く距離にみんながいるのに、触れることも意思を伝えることもできない。

見ていられなくなり視線を下に落とした。

重苦しいその空間で、意識のない俺に酸素を送り続ける機械音だけが虚しく響いている。

俺の望んだ結末であったはずなのに、多大なる無念と自己嫌悪が胸を襲う。

俺がしたことは間違いだったのか。そんな自問自答とともに、過去の記憶の断片が頭に浮かんだ。

 冬哉の死の記憶だ。

その瞬間、ハッとした。

そうだ。俺はあの夏に知ったはずだった。

残された者の悲しみと、その先に待っている抜け出せない闇を。

それなのに亜美を助けたい、ただその一心で。

いや、違う。

それはただの俺のエゴだ。

自分が楽になりたかったのだ。起こった現実を受け入れる勇気がなくて、目を逸らし逃げただけなのかもしれない。

自分が苦しみたくなかっただけ。

その傲慢さが今、ここにいるみんなを悲しませてしまっている。そして誰より笑っていてほしい、愛する人に悲しい涙を流させてしまっている。

俺が残したのは未来という希望じゃない。 いつ解けるかも分からない負の呪縛だ。

その場に愕然と立ち尽くすなか、集中治療室から耳障りな機械音が鳴り響いた。すぐに医師や看護師が駆けつけてきて、緊迫感が増していく。

「バイタルは!?」

「心拍数が異常に上昇しています!」

……俺の容体が急変したのだ。

「今から処置を開始しますので、みなさんはあちらに下がって下さい!!」

「いやぁ―!!」

取り乱した亜美の声が痛いくらいに耳に響き、俺の心をえぐった次の瞬間。さっきとは違う音が耳に響いた。

空気が張り詰めていく。

「先生、心肺停止です!」

医師によって懸命に心臓マッサージが繰り広げられる。

なにもかもがスローモーションに見えるこの状況で俺の視線が捉えたのは、抜け殻のような放心状態の亜美の姿だった。

そんな俺の背後から聞こえてきたのは──。
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