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見上げた青に涙して
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走馬灯のように頭の中に流れ込んできたある【映像】と【記憶】。
まぶたの裏に感じたまばゆい光に導かれるように目を開けた。
辺りをゆっくりと見回す。
そこはさっきまでいたはずの駅前の交差点ではなく、見覚えのある山道だった。
ああ。ここは。
すぐにその場所がどこか分かった。
二週間前、自身が事故に遭った現場だ。
そう認識した途端、今度は事故が起こった直後と思われる映像が流れ出した。じっとその映像を見つめる。
救急隊員が緊迫感に満ちたやり取りを行う横で、倉長くんが必死に私の名前を呼び続ける。他の乗客やバスの運転手もその様子を心配そうに見守っていた。
「……っ!?」
と、次に流れてきたその光景に心臓がドクンッと波打ち、鈍器で殴られたような衝撃に襲われ始めた。
バスから救出されたひとつの身体。明らかに意識がないように見え、心臓マッサージを繰り返されながら救急車へと乗せられた。
そのまま博晴病院に運ばれ、慌ただしい医師と看護師のやり取りを見ていたら目尻から大粒の涙が零れ落ちていった。
駆け付けた私の母に土下座をして謝る倉長くんの姿。
“最善は尽くしましたが……”と、申し訳なさそうに言う医師。
そして──。
手術台の上で動かなくなった……。
鼓動を刻むことのない私の体躯。
絶望と衝撃。
ふたつの感情が私の中を支配する。
あの事故のあと、日常を生きてきた。記憶が欠けていたり妙な夢にうなされたりもしたが、それでも私は確かに生きている。
今も心臓がこうやってちゃんと鼓動を刻んでいる。
頬を抓れば、痛みがある。
温かい体温だって、ちゃんと感じられる。
それなのにそれが、幻だというのだろうか。
これは夢なのだろうか。
もはやなにが現実なのか分からない。
まぶたの裏に感じたまばゆい光に導かれるように目を開けた。
辺りをゆっくりと見回す。
そこはさっきまでいたはずの駅前の交差点ではなく、見覚えのある山道だった。
ああ。ここは。
すぐにその場所がどこか分かった。
二週間前、自身が事故に遭った現場だ。
そう認識した途端、今度は事故が起こった直後と思われる映像が流れ出した。じっとその映像を見つめる。
救急隊員が緊迫感に満ちたやり取りを行う横で、倉長くんが必死に私の名前を呼び続ける。他の乗客やバスの運転手もその様子を心配そうに見守っていた。
「……っ!?」
と、次に流れてきたその光景に心臓がドクンッと波打ち、鈍器で殴られたような衝撃に襲われ始めた。
バスから救出されたひとつの身体。明らかに意識がないように見え、心臓マッサージを繰り返されながら救急車へと乗せられた。
そのまま博晴病院に運ばれ、慌ただしい医師と看護師のやり取りを見ていたら目尻から大粒の涙が零れ落ちていった。
駆け付けた私の母に土下座をして謝る倉長くんの姿。
“最善は尽くしましたが……”と、申し訳なさそうに言う医師。
そして──。
手術台の上で動かなくなった……。
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今も心臓がこうやってちゃんと鼓動を刻んでいる。
頬を抓れば、痛みがある。
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それなのにそれが、幻だというのだろうか。
これは夢なのだろうか。
もはやなにが現実なのか分からない。
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