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見上げた青に惹かれて
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【亜美side】
関係の解消を申し出てから倉長くんとは連絡を取っていない。別れたことを柏原くんに電話で報告すると、電話越しの声はすごく弾んでいた。
倉長くんにとって私との関係を解消することなんてなんの打撃にもならないだろうに。事情を知らない柏原くんにとっては、倉長くんのなにかを壊せればそれで満足だったのかもしれない。
でもこれでバイトのことがバレないのであれば、私の選択は決して間違ってなかったのだと思いたい。
千佳にもすぐに事情を報告したけれど、彼女は納得がいかないというばかりに柏原くんに対して憤慨した。
自分の気持ちに気づいてしまったから、片翼を失った天使のように心に穴が空いた状態。
夏休みが明ける頃までには、きちんと気持ちの整理をして倉長くんと会っても普通に接することができるようになっていたい。
***
時刻は十八時すぎ。
「お疲れ様でした」
バイト先を出て家の方面に向かって歩き出すと鞄の中のスマホが震えていることに気づき、足を止めて鞄のなかを漁った。
画面を確認したら千佳からのメッセージが入っていた。
夏休みに入ってから千佳とは毎日のように連絡を取り合っている。バイトのない日は頻繁に会っているし、彼女がそばにいてくれることは傷心気味の私にとってとても心強い。
ふと笑みが零れた次の瞬間。
「亜美!」
前方から聞き覚えのある声が耳に届いた。
この声は……。
とっさに声があった方に視線を向ける。
「どうして、ここにいるの?」
そこに倉長くんの姿があって尋ねる声が震えた。
「今日、バイトだってこと堀田さんに聞いて」
そのままどのくらい見つめ合ったままでいただろうか。
近くの道路を通り過ぎていく車の走行音がやけに耳につく。
「柏原のこと、聞いたんだ」
突如、沈黙が破られ倉長くんが思わぬことを口にしたことに目を大きく見開いた。
「聞いたって……まさか柏原くん、学校側に話したの?」
少し前のめりになりながら返答を待つ。
「いいや。堀田さんが唐沢に話してくれたみたいで。俺は唐沢から聞いた。いろいろ迷惑をかけて本当に悪かった」
「ち、ちょっとそういうのはやめて。大丈夫だから」
倉長くんが頭を下げてきたので、思わず彼の肩に手をかけた。少ししてゆっくりと顔を上げた彼と再び宙で視線が交わった。
「バイトを辞めて柏原とちゃんと話をつけてきた。もちろん喧嘩とかそういうのじゃなくて、きちんと話しあったうえで納得してもらった」
「……納得してもらえたならよかったけど、バイト辞めて平気なの?」
唐沢くんにあの日聞いた倉長くんの家の事情を思うと心配でならない。
「兄貴に事情を話して卒業までの間、援助してもらえることになったから大丈夫」
「そっか」
安堵の感情が芽生え、自然と頬を緩ませながら彼の自転車に目を向ける。
「亜美……」
それからすぐにやわらかな声色が耳に届き、自然とそちらを向いた。
「亜美に伝えたいことがある。だから今から話を聞いてもらえないか」
真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになりながら静かに頷くと、心地よい夜風が頬を撫でていった。
関係の解消を申し出てから倉長くんとは連絡を取っていない。別れたことを柏原くんに電話で報告すると、電話越しの声はすごく弾んでいた。
倉長くんにとって私との関係を解消することなんてなんの打撃にもならないだろうに。事情を知らない柏原くんにとっては、倉長くんのなにかを壊せればそれで満足だったのかもしれない。
でもこれでバイトのことがバレないのであれば、私の選択は決して間違ってなかったのだと思いたい。
千佳にもすぐに事情を報告したけれど、彼女は納得がいかないというばかりに柏原くんに対して憤慨した。
自分の気持ちに気づいてしまったから、片翼を失った天使のように心に穴が空いた状態。
夏休みが明ける頃までには、きちんと気持ちの整理をして倉長くんと会っても普通に接することができるようになっていたい。
***
時刻は十八時すぎ。
「お疲れ様でした」
バイト先を出て家の方面に向かって歩き出すと鞄の中のスマホが震えていることに気づき、足を止めて鞄のなかを漁った。
画面を確認したら千佳からのメッセージが入っていた。
夏休みに入ってから千佳とは毎日のように連絡を取り合っている。バイトのない日は頻繁に会っているし、彼女がそばにいてくれることは傷心気味の私にとってとても心強い。
ふと笑みが零れた次の瞬間。
「亜美!」
前方から聞き覚えのある声が耳に届いた。
この声は……。
とっさに声があった方に視線を向ける。
「どうして、ここにいるの?」
そこに倉長くんの姿があって尋ねる声が震えた。
「今日、バイトだってこと堀田さんに聞いて」
そのままどのくらい見つめ合ったままでいただろうか。
近くの道路を通り過ぎていく車の走行音がやけに耳につく。
「柏原のこと、聞いたんだ」
突如、沈黙が破られ倉長くんが思わぬことを口にしたことに目を大きく見開いた。
「聞いたって……まさか柏原くん、学校側に話したの?」
少し前のめりになりながら返答を待つ。
「いいや。堀田さんが唐沢に話してくれたみたいで。俺は唐沢から聞いた。いろいろ迷惑をかけて本当に悪かった」
「ち、ちょっとそういうのはやめて。大丈夫だから」
倉長くんが頭を下げてきたので、思わず彼の肩に手をかけた。少ししてゆっくりと顔を上げた彼と再び宙で視線が交わった。
「バイトを辞めて柏原とちゃんと話をつけてきた。もちろん喧嘩とかそういうのじゃなくて、きちんと話しあったうえで納得してもらった」
「……納得してもらえたならよかったけど、バイト辞めて平気なの?」
唐沢くんにあの日聞いた倉長くんの家の事情を思うと心配でならない。
「兄貴に事情を話して卒業までの間、援助してもらえることになったから大丈夫」
「そっか」
安堵の感情が芽生え、自然と頬を緩ませながら彼の自転車に目を向ける。
「亜美……」
それからすぐにやわらかな声色が耳に届き、自然とそちらを向いた。
「亜美に伝えたいことがある。だから今から話を聞いてもらえないか」
真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになりながら静かに頷くと、心地よい夜風が頬を撫でていった。
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