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見上げた青に惹かれて
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倉長くんに過去のトラウマをカミングアウトしてから一週間が過ぎた。
体調が戻り学校に登校した日、千佳と唐沢くんにあの日のことをかなり揶揄われ、ずっとたじたじだった。だけど、倉長くんはなにを言われても涼しげな顔をして動揺を見せることはなかった。
結局、あのあと唐沢くんと千佳はふたりで遊園地に行って楽しく過ごしたらしい。じきに迫った夏休みにまた四人でどこかに遊びに行こうという話が出ている。夏休み前半は倉長くんたちの試合があり部活が忙しいみたいなので、みんなで会うのはお盆過ぎくらいになるのかなと思っている。それが密かな楽しみだったりする。
自分がこんな感情を抱くとは思いもしなかった。倉長くんとの嘘の恋人関係が始まってから私の生活はずいぶんと変わった気がする。
最初は嘘の関係にすごく戸惑っていたのに、今は彼のいろんな一面を知ってもう少しだけこの居心地のいい世界に浸っていたいと思ってしまう自分がいたりもする。
日曜日の午後。
バイトを終え、とある場所に向かい歩きだした。
もうじき翔平の誕生日が迫っているので、今から誕生日プレゼントを選びに行くのだ。翔平は今、サッカーのアニメにハマっている。その中でも特にお気に入りのキャラクターがいるので、そのグッズをプレゼントしようと思っている。
翔平、喜んでくれるかな。
弟の笑った顔を思い浮かべていると、目の前の信号が赤になり足を止めた。ふと横断歩道の先を見たら見慣れた顔を見つけ自然と頬が緩んでいく。
倉長くんだ。
信号が青に変わり、彼の方に向かって足早に歩き出したそのときだった。
「ん?」
倉長くんに声をかけた人物が目に飛び込んできて、とっさに歩く速度を緩めた。
親しそうに見えるけれども、どんな関係なのだろうと遠目で様子を窺ってみる。
倉長くんに声をかけたのは、二十代半ばくらいの長身でスタイルがいい綺麗な女性。その人が彼の腕に手を絡める仕草をしてうれしそうに笑う。
なぜか胸がもやっとし、そんな変化に戸惑っていたらふたりが並んで歩きだしたのが見えた。
もともと私と倉長くんは本当の恋人同士というわけではないのだから、相手の交友関係に口を出せる立場ではない。
明日、学校で会っても今までみたいに普通に接すればいいだけ。そう自分自身に言い聞かせても、胸の疼きは大きくなるばかり。
やっぱり見なかったことにはできそうにない。
湧き上がってきた感情を抑えることができなくて、いつの間にか彼らのあとを追って走り出していた。
体調が戻り学校に登校した日、千佳と唐沢くんにあの日のことをかなり揶揄われ、ずっとたじたじだった。だけど、倉長くんはなにを言われても涼しげな顔をして動揺を見せることはなかった。
結局、あのあと唐沢くんと千佳はふたりで遊園地に行って楽しく過ごしたらしい。じきに迫った夏休みにまた四人でどこかに遊びに行こうという話が出ている。夏休み前半は倉長くんたちの試合があり部活が忙しいみたいなので、みんなで会うのはお盆過ぎくらいになるのかなと思っている。それが密かな楽しみだったりする。
自分がこんな感情を抱くとは思いもしなかった。倉長くんとの嘘の恋人関係が始まってから私の生活はずいぶんと変わった気がする。
最初は嘘の関係にすごく戸惑っていたのに、今は彼のいろんな一面を知ってもう少しだけこの居心地のいい世界に浸っていたいと思ってしまう自分がいたりもする。
日曜日の午後。
バイトを終え、とある場所に向かい歩きだした。
もうじき翔平の誕生日が迫っているので、今から誕生日プレゼントを選びに行くのだ。翔平は今、サッカーのアニメにハマっている。その中でも特にお気に入りのキャラクターがいるので、そのグッズをプレゼントしようと思っている。
翔平、喜んでくれるかな。
弟の笑った顔を思い浮かべていると、目の前の信号が赤になり足を止めた。ふと横断歩道の先を見たら見慣れた顔を見つけ自然と頬が緩んでいく。
倉長くんだ。
信号が青に変わり、彼の方に向かって足早に歩き出したそのときだった。
「ん?」
倉長くんに声をかけた人物が目に飛び込んできて、とっさに歩く速度を緩めた。
親しそうに見えるけれども、どんな関係なのだろうと遠目で様子を窺ってみる。
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なぜか胸がもやっとし、そんな変化に戸惑っていたらふたりが並んで歩きだしたのが見えた。
もともと私と倉長くんは本当の恋人同士というわけではないのだから、相手の交友関係に口を出せる立場ではない。
明日、学校で会っても今までみたいに普通に接すればいいだけ。そう自分自身に言い聞かせても、胸の疼きは大きくなるばかり。
やっぱり見なかったことにはできそうにない。
湧き上がってきた感情を抑えることができなくて、いつの間にか彼らのあとを追って走り出していた。
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